妖怪の山 閑話
月明かりの下、神社へと続く石段に腰を下ろしていた神奈子と諏訪子は、月光を反射する刀哉の愛刀を前にして重々しい顔を浮かべていた。
困惑と驚愕の顔色だ。
神奈子は左手で頬杖をついて右手に刀を持ち、諏訪子はぶらぶらと足を上下に動かして何か言おうと機会を伺っている。
長い沈黙を先に破ったのは、諏訪子だった。
「ねえ、こんなことあり得る?」
「此処は幻想郷だ。何が起きてもおかしくはない。しかし、今度ばかりは私も驚いてしまったなぁ。ただの刀ではないと思っていたが、これは、霊刀どころではないぞ。私や諏訪子と同じ、神代の代物だ」
「でも、あれは元々両刃の剣でしょ? どうしてこんな太刀の形に?」
「私にも分からない。問題は、ただの人間が、どうしてこれを持って流れてきたのかということだ。いや、あるいはただの人間ではないのかもしれない」
「まさか、私や神奈子と同じ……?」
「それも分からん。刀哉からそれらしい気配はしなかった。仮にそうだったとしても私や諏訪子が気づかないはずがない」
「……彼には何て?」
「何も教えんわけにもいくまい。これを預かった手前、それこそ神の名が廃る。無論、ハッキリとしている事だけだが。しかし、いずれにせよ、こいつが証明してくれるだろう。そう……この、高天原の神刀が…………布都御魂剣が、な」
神奈子が布都御魂を空に向けて一閃すると、夜空に煌めく無数の星々が流星となって天を滑り落ちた。