ドアの向こうの執事を気にせずに・・・。
「どうした、お前達。」
部屋の外で待機をするメイド達に龍鬼が声をかける。
「柚子様のご命令で、自分達だけにさせて欲しいとの事でしたので、退室しております。」
その言葉を聞いた途端、龍鬼は嫌な予感を感じる・・・。
それは、龍鬼だけでなく、緑虎も・・・
「龍鬼さん。これはどういうことですか?」
ドアに何重もの結界が張られているのに気づいた朱鴬は、少し怒った口調で龍鬼を問い詰める。
「おそらく・・・我が主の仕業かと・・・誠に申し訳ございません!」
そういいながら、龍鬼は朱鴬だけでなく、そこにいた海耀と蓮にも頭を下げた。
「朱鴬さんも、龍鬼さんも、今ここでこうしているのは得策ではないですよ。」
彼らの間に割って入る蓮。海耀も「そうですよ。今は、不知火様達の状況が把握できればいいのですが・・・」
とドアを見つめながら静かにつぶやいた。
「龍鬼は、服とか全部決めてさ・・・好きな服買ったんだよ、人間界で。でも、露出が多いとか言って没収されたし・・・」
「俺も~!海耀が全部決めるからさ・・・桃花姉さんと柚子姉さんが家出したって聞いた時、俺も出て行ってやろうかと思った。ま、すぐ海耀にばれたけど・・・」
子ども達は、ドアの向こうに執事たちが集結していると知らずに、紅茶片手に愚痴りたい放題。
口々に出るわ出るわ、不満の数々・・・
その時、揚羽が朱鴬について話し始める。
「私は・・・朱鴬のいない世界に行きたい・・・何がしたいのか、何を考えてるのか・・・全部わかってるみたいで・・・怖いよ、正直。」
その言葉から、話の話題は朱鴬に・・・
「うん・・・朱鴬・・・怖い。」
「冷たい感じするよね、あの執事。」
「そうね、海耀さんはまだ話せそうな雰囲気あるけど、朱鴬さんは・・・私でも無理かな。」
「俺でも無理、あいつさ~いつも無表情だし、冷たいし・・・感情が無いって感じがしてさ・・・俺、海耀が心配になったし・・・。」
「いっそさ、このまま家出しようぜ!」
不知火の提案に、桃花も柚子も揚羽も乗った。しかし・・・
「それは駄目よ。お父様達が心配するわ。」
芙蓉が優しく止める。だが・・・
「親父達も頭冷やせばいいんだよ、これで。何言っても聞いてくれないし、自分達は仕事だからって、全部あいつら(=朱鴬、海耀)まかせにして・・・何にもしないから。」
不知火はそういいながら自分でポットの紅茶を注ぐ。
「パパは・・・仕事終わったらお話聞いてくれる。でも、お外に出ることは・・・許してくれない。」
「出かけるときは、必ずおっさん達(=龍鬼、緑虎)が一緒でないと出してくれねぇし。街を見たら、同じ年ぐらいの奴が好きに遊んで、好きなもの買ってんだぜ・・・羨ましいよ。」
みんなの声を聞いた後、芙蓉が重い口を開いた。
「お父様・・・お母様や私に手をあげるの。ほぼ毎日・・・この前、私とお母様に“別居しよう”って・・・いきなり・・・」
今までとは違う、暗くつづれてしまいそうな芙蓉の姿を目の当たりにして、そこに居た誰もが口を閉ざしてしまった・・・。
「でもね、お父様と一緒にいたかったから・・・出て行かなかったんだ、私。そしたら、お父様、私を避け始めたの・・・どうしたらいいかわかんない、もう・・・。」
堰を切ったように泣き始める芙蓉・。その姿を見て桃花がこういった
「少し・・・離れてみようよ。何か・・・変われるかも・・・。」
その言葉で、子ども達の答えはまとまった。
“集団家出計画”がここに始動。