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Scene15 人気>着順

 この章では、主語が一人称になっており、インビジブルマンの目線で物語が進行します。

 屈腱炎から立ち直ったボク(インビジブルマンのことです)は、相生調教師と割出厩務員の調教を経て、無事にレースに復帰することができた。

 復帰初戦は11月のトパーズステークス(OP、京都、ダート1800m)だった。


 アナウンサーの実況

『最後の直線!先頭はダンシングヒロイン!マシーンヴォイスが追う!ドゥアズローマンズも来た!』

『ダンシングヒロイン粘り切れるか!マシーンヴォイス差し切るか!?』

『2頭並んだ!並んだところでゴールイン!3着はドゥアズローマンズ!』


 結果、ダンシングヒロインがハナ差粘り切って優勝、2着には1600万クラスの条件馬ながら格上で挑戦した3歳馬のマシーンヴォイスだった。

(3番人気と10番人気での決着だったため、馬連はそれなりに荒れた。)

 一方のボクは終始後方を走ったまま全く見せ場なく、ダンシングヒロインから約2秒遅れの11着と惨敗してしまった。

 レースが終わった直後、ボクはみんなから何て言われるのだろうかとハラハラしていた。

 しかし、意外にもみんなの反応は優しかった。

「まあ仕方がない。故障明けだからな。」(相生調教師)

「そうですね。完走してくれただけで十分です。」(割出厩務員)

「とにかく故障が再発しなくてよかったです。」(逗子騎手)

「今回は順位は気にしていない。また今度だ。」(木野求次さん)

「そうそう。透明人間、来月頑張ってね。」(可憐)

(※可憐は今ではボクのことを常時「透明人間」と呼ぶようになっていた。)

 彼らのその態度はある意味うれしかった。しかしボクとしては勝ちたかっただけに、心の底ではその優しさがかえって悔しかった。


 次走は有馬記念の前の週に行われたディセンバーS(OP、中山、芝1800m)だった。

 このレースは関東で行われたにも関わらず、11頭中8頭が関西馬だった。

 そんなホームなのかアウェイなのかよく分からない雰囲気の中、ボクは単勝7.7倍の4番人気に支持された。

 しかしスタートして1コーナーまでの距離が短いコース形態のせいもあってか、外枠のボクはせっかく先行したにも関わらず、コーナーワークで後方に回ってしまった。

 レースはチェリーブロッサムが先頭に立ち、ブレーヴストーリーとリヴィンラビダロカ(3頭とも関西馬)が好位につけた。

 58kgを背負いながらも1番人気に支持されたイントゥザバトル(関西馬)と2番人気のダンシングヒロイン(関東馬)は並んで中段につけ、その後ろをトランクエリーゼ(関西馬)が走っていた。

 ボクはそのトランクエリーゼを見るようにして、スキンヘッドラン(関東馬)と並走した。

 最後方はこのレースを最後に引退するグレープピッキング(関西馬)だった。

 最後の直線、それまで前を走っていたチェリーブロッサムとブレーヴストーリー、リヴィンラビダロカを尻目に、ダンシングヒロインが先頭に立って坂を駆け上っていった。

 このままダンシングヒロインが関東馬の意地を見せて押し切るかと思われた矢先、大外に持ち出したイントゥザバトルが斤量に苦しみながらもゴール寸前で並び、クビ差だけ前に出てゴールした。

 結局勝ったのはイントゥザバトル、2着がダンシングヒロインで、ボクは3馬身遅れの6着だった。

(トランクエリーゼは3着、ブレーヴストーリーは5着、チェリーブロッサムは7着、スキンヘッドランは9着、リヴィンラビダロカは10着。グレープピッキングはずっと最後方のままシンガリ負けをしてしまった。)


 ディセンバーSの後は木野牧場に放牧に出され、ボクは翌年の1月終わりに相生厩舎に戻ってきた。

 すでに6歳。勝利は去年1月の寿S以来、1年以上見放されているだけに、何とか勝ちたかった。

 休み明け初戦は阪急杯(GⅢ、阪神、芝1200m)だった。

 このレースはGⅠ高松宮記念のステップレースでもあるだけに、実力馬も出走するだろうと見られていた。

 しかし出れば1番人気と見られていたイントゥザバトルは、勝たなければいけないプレッシャーのせいか、それとも距離が短いせいか、結局回避してしまった。

 ダンシングヒロインは中山牝馬S(GⅢ、中山、芝1800m)に出走することになったため、回避。

 去年のエプソムC(GⅢ、東京、芝1800m)とスワンS(GⅡ、京都、芝1400m)を勝っているティアズインヘヴンは脚元に不安が出たため、こちらも回避した。

 そのため、レースとしては見所が減ってしまったが、重賞制覇を真剣に考えている木野さん一家は、チャンスとばかりに大きな期待を寄せていた。

 一方の相生調教師もこのレースを真剣に取りたいと考えているのか、厩舎の寮馬であるナルリョボリョも出走させてきた。


 レースのゴール前、アナウンサーは次のように実況をしていた。

『先頭はチェリーブロッサム!重賞初制覇なるか!?』

『2番手は混戦だ!チェリーブロッサム抜け出した!リードは2馬身!今先頭でゴールイン!』

『2着はマシーンヴォイスかトランクゼンリョクか!?』


 結局勝ったのはチェリーブロッサム、2着にはトランクゼンリョク、3着にはマシーンヴォイスが突っ込んできた。

 トランクゼンリョクはここ最近凡走続き、マシーンヴォイスは前走を勝ってオープン入りを果たしたばかりでどちらも人気薄だっただけに、連勝式の馬券は高配当になった。

 一方のボクは13頭立ての6着に敗れてしまった。

 人気は4番人気だっただけに、また着順が人気を下回ってしまった。

(ナルリョボリョは実力不足を露呈し、12着に終わった。)

 考えてみたら、ボクは去年の中京記念で2着(4番人気)になった後、ずっと着順が人気より下のままだ。

(福島民放杯は3番人気の4着。プロキオンSは5番人気の10着。トパーズSは6番人気の11着。ディセンバーSは4番人気の6着。)

 さらに過去2回対戦していずれもボクの方が先着していたティアズインヘヴンは、今や重賞2勝馬となり、完全に立場が逆転してしまった。

 それに加えてマシーンヴォイスなど新たな実力馬も出てきているだけに、このままでは立場が危うくなる一方だ。

 屈腱炎を克服して復帰は果たしたものの、一体何のために復帰をしたのだろう…。

 ボクは目標を見失いそうになりながらも、とにかく走り続けるしかなかった。


 6歳3月の時点におけるボク(インビジブルマン)の成績

 22戦6勝

 本賞金:4950万円

 総賞金:1億1890万円

 クラス:オープン


 名前の由来コーナー その14


・マシーンヴォイス(Machine Voice)(オス)… PCエンジンのゲームソフト「スーパースターソルジャー」のSTAGE3、5のボス戦で流れるBGM「Machine Voice」から取りました。

 スーパースターソルジャーのBGMには気に入っているものが多いので、これまで馬名にいくつか使用しました。


・ナルリョボリョ(Nallyeo Beoryeo)(オス)… 「ナルリョ」は韓国語の「ナルリダ(飛ばす)」の活用形、「ボリョ」は韓国語の「ボリダ (しまう)」の活用形です。

 意味の通じるように日本語に直訳すると「飛ばしてしまえ」になり、これを意訳して「かっとばせ」という意味になります。


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