表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第七章「意思」
96/96

集結1

お久しぶりです


つまりばっかり執筆していたのでこちらも執筆


ナンバリングしてあるのでわかると思いますが、連話です

この章自体が連話みたいなもんですが・・・


本編をどうぞ

「魔法隊!構え!!」


軍で正式採用されている紺色のローブを纏った集団が、彼らの指揮官である色違いの同じローブを纏った人物の指示に従って詠唱の準備に入る


「1から3番までは共同魔方陣の構築に入れ!

4から8番まではそれぞれ各隊の属性魔法を、9・10番は各隊への支援魔法を発動させろ!」


彼の指示は迷いなく、滞りなく伝達され、各員が同じように滞りなく準備を進めていく

彼らは曲りなりにも騎士団を名乗る集団であり、今回ほど大規模ではなくとも同じように作戦行動を何度も行ってきた

それが彼ら自身の錬度の高さへと繋がり、例え目の前に迫る大群に効果があるかどうか疑うような状況であっても、決してそれを間違えるようなことはしない


「9番・10番、支援魔法発動させろ!」


二つの魔法使いらしき集団が詠唱を完了し、一斉に魔法を解き放っていく

ただしそれは敵に向かってではなく、味方に向かって


五十名以上からなる魔法使いから放たれた魔法によって、他の部隊は一斉に淡い光に包まれていく

あるものは赤い光を、別のものは青い光を、またあるものは黄色の光をそれぞれ纏い始める

効果は多少違えど、それらは全て何かしらを強化するタイプの魔法であり、この状況においては重要な効果を発揮する


「隊長!全体共同魔方陣構築完了しました!いつでもいけます!」


色違いのローブを纏った指揮官に対し、こちらも通常とは色の違うローブを纏った男がそう声をかける

彼の言葉に1つ頷いた指揮官は、続けて次の指示を飛ばした


「全体・・・」


一度言葉を区切り、敵集団をじっと見据える

抗うことが本当にできるのかと疑ってしまうような、こちらに迫ってくる真っ黒な波を


「撃てええええええええ!!!!!」


片手を前に突き出し、攻撃の指示を飛ばす

それと同時に魔法使い達は次々と自らの詠唱していた魔法を解き放ち始め、大砲のように打ち出していく


抗えるかどうか、など考えている暇は無い

抗うしかないのだ、ということを彼は知っている

自分たちが負ければ、待っているのはこの世の終わりかもしれないのだと、彼は知っている


共同魔方陣と呼ばれる、複数の・・・百人規模の人数で作り上げる魔法によって生み出された光の塊

それが彼の頭上を通り過ぎ、真っ黒な波を真正面から飲み込むまで

少なくともそれまでは、彼はそう考えていた



――――――――――



「・・・バカな」


呟いたのは指揮官ではなく、彼に声をかけたもう一人の男だった


「っ!?全体!攻撃の手を休めるな!

学園長が敵側の大規模魔法を食い止めてくれている今が最大の攻撃チャンスだぞ!」


放心していたもう一人の男もハッとなり、ついですぐに指示を飛ばし始める

指揮官の言葉に激励され、やっと動き始めた他の魔法使い達もすぐに行動を再開しはじめる


しかし、その行動は、どこか不安を感じさせていた


理由


難しいことではない


共同魔方陣によって発動する騎士団の切り札的存在「セイント・ブレス」

聖竜と呼ばれる災害級特別討伐対象が放つブレスに着想を得て開発されたそれは、大量の人員を必要とする欠点こそあるが、その威力たるや通常の魔法とは桁違いの破壊力を生み出す

グラハルトの知るゲームの時代においても、それは人間側の切り札として名前と設定のみが公開されていた強力な攻撃手段だ


それがあたった以上、間違いなく敵軍には痛手を与えていたはずだった

少なくともセイント・ブレスのぶつかった範囲の敵は、消滅していてもおかしくないほどの効果があるはずだった


現実はどうか


確かに何の効果も及ぼしていないわけではない

確実に倒したどころか、塵も残さず消滅した魔物もいる


だがしかし、どれほどの効果があったかといえば


3割


ぶつかった範囲の、多めに見積もって3割が消えたにすぎない

全体から見ればそれは30分の1にも該当しないような、微々たると言ってもいいほどの効果しか発揮していない


騎士団がせっかく取り戻した勇気は、再び絶望に食いつぶされようとしていた


「くそっ!」


大量の魔法が飛び交い、再びセイント・ブレスが準備されていく中

指揮官の男は苦々しげに悪態をついた



――――――――――



(間に合った)


「・・・?」


女生徒が一人、戦場でそんな声を聞いた

聞いた気がしたのではない、確実に聞こえた

しかし彼女の周囲には、正面の魔物の大群に向かって魔法を放つものや、これから来る地獄に備えて待ち構えるものこそいれど、悠長に話をしているような人物はいない

戦術について話し合いをしているようなものはいるが、少なくとも彼女の周りにそんな人物たちはいなかった


(君のおかげだ)


誰が、それを確認するために振り返って、彼女は本能的にそれが誰かを悟った

彼女が三年かけて、毎日面倒を見てきた場所、学校内のその場所であろう部分から、天上へと光が昇っていたから


「リリーナ・ウィッシュ」


彼女はそう呟いた



――――――――――



「なんだよありゃぁ・・・」


丘の上で、ライアン=ローレンスはそう呟く

彼はこんな現象が起こることは知らない

少なくとも、彼が知る知識の中にこんな現象は存在しない


「この魔力の感じ・・・エルフか、くそがっ!」


思わず、といった雰囲気で彼は悪態をつく


それを背にする騎士団にはただ天上へと昇る光が見えているだけかもしれない

しかし彼の位置からは、何が起こっているのかを具体的に見ることができた

それが信じられるかどうか、ということはまた別問題ではあるが



樹が生えた



言葉にすればそれだけだ

魔法や魔物が存在するこの世界では、それ自体は珍しい光景ではない


しかしそれが、エルフの里にしか存在しえないはずの大樹が生えたとなれば話は別だ


「ユグドラシル・・・」


ライアンはその名を呼ぶ

世界樹と呼ばれるその樹の名を



――――――――――



光の矢が飛んでいく


急激な勢いで成長し、天を貫かんばかりの勢いで出現した世界樹「ユグドラシル」

グングンと伸び上がり、枝を生み出し、葉を纏い、花を咲かせる


百合のような薄く桃色がかった花が開くと、その内側から1本の光が飛び出した

見るものが見れば、それが矢だということに気づくことができただろう


その矢は真っ直ぐにではなく、曲線を描いて飛んでいく

向かう先にあるのは、魔物の大群


着弾と同時にズドン、という轟音が響く

およそ矢が発生させるような音ではない響きが、魔物の一体を正確に貫いた


再び別の花が開き、再び矢は放たれる


ズドンズドン


すでに開いていた花からも矢が飛び出し、合わせて2本の矢が魔物をねらい違わず打ち抜いた


2つでは終わらない、3つ目が開き、4つ目が開き、5つ目、6つ目

数えるのが面倒になるくらいの花が次々開いていき、同時に同じ数だけの矢が世界樹から飛び出していく


1本の光は1体の魔物しか倒せない

しかしそれも大量にあれば、やはり大量に魔物を葬り去っていく


やがて満開とも言えるほどに花が咲き乱れ、大量の光が魔物たちを殲滅させんと次々と飛び出していた


「ほほぅ~」


その光景を間近で見ていた学園長ファルケン

彼はその光景の意味を知っている、それを実行できる人物が誰なのかも


「なるほどのぅ、生きているうちにこの光景が見れるとはのぅ

長生きはするもんじゃ・・・死にそうだけど」


「安心していいわ、一人で逝かせたりしないから」


独り言のつもりで言った言葉に、言葉が返された


ふわっという擬音が聞こえそうな感じで、緑色の髪をした女性が何も無い空中に舞い降りる


「ふむ・・・、死ぬのはワシだけで十分だと思っておったんじゃがのぅ」


その人物を確認して、残念そうな表情でファルケンは語る

その人物もそれをわかったうえで、それでも言葉を続けた


「私とあなた、二人で済むなら上々・・・そう思えない?」


緑の髪の女性は、「木のような腕」を持ち上げて言った

腕だけでなく、片足も木で作った人形のような見た目になっている


「精霊の試練・植物、お互い難儀するのう」


「そうね、この状態でないと『植物間移動要塞ユグドラシル』の能力を起動できないんだもの

誰かがやらなきゃいけないなら、私がやるしか無いわ」


植物間移動要塞ユグドラシル

リリーナ・ウィッシュを通じ、あらゆる場所へと移動可能なエルフの最終兵器

その花一つ一つにエルフが搭乗することで、彼らの能力を限界まで引き上げる力を持った正に要塞

リリーナ・ウィッシュは世界中のあらゆる場所に咲くことができるため、事実上世話をする存在さえ入れば世界中のどこへでも出現が可能な機動要塞

世界樹と呼ばれる由縁は、まさに世界中へと出現可能なその能力から言われる言葉であった


二人は正面へと向き直る

光の矢が注がれ、絶命していく魔物の大群へと


「・・・倒せるか?」


「厳しいわ、ユグドラシルだけじゃ・・・」




GYAAAAAAAAS!!!


リリーの言葉は最後まで紡がれることはなかった

新たな敵の出現と、その叫び声によってかき消されてしまったためだ


「・・・大型か」


その数が1体ならよかったかもしれない

例え山のように巨大な相手であっても、ユグドラシルの力を持ってすれば対抗できない相手ではなかったから


しかし目の前に広がる光景は、そうではなかった


遥か彼方に見える巨大な魔方陣から出現する大型モンスター


その数は、天を埋め尽くし、地を埋め尽くしている

100を軽く超えるような大型モンスターの群れが、今まさに彼らの前に広がっていた

エルフ合流


わかると思いますが、続々とフラグ回収されていきます

大型モンスター投入となれば次回出てくるのは・・・?(ニヤリ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ