願い
4643文字・・・
ちょっと長くなってしまいましたが、よければご覧ください
集団VS集団の戦闘シーンは難しいですね・・・
「あ、あんたは・・・」
「アリ・・・サ・・・さん?」
二人が振り返った先にいたのは、アリサパーティーの名の通り、パーティーリーダーであるアリサであった
「行ったぞ!」
バスカーがそんな注意をしてくる
しかしアリサは顔に浮かべた微笑を崩すことなく、悠然とただ立っていた
「ヒッ!」
「うわっ!?」
二人の生徒は恐怖からとっさに声を出してしまう
本来であれば目をつけられた時点で死を覚悟しなければならない相手、その相手がこちらに向かって突進をしてくる
その速度は相当な速さが出ており、例え相手がレッサーデーモンでなくとも恐怖したかもしれない
影が、三人を飛び越えた
三人とレッサーデーモンの前に立ちふさがった影
軽鎧と同じ部分しか覆っていない鎧、しかし相当な量の追加装甲が設置されており、重鎧のように錯覚するほどの重装備
巨大な盾は、少し屈めば全身を覆い隠すほどに大きく、後ろから見てもその異様さが目に入る
それだけの重装備に不釣合いな、指先から肘までの長さ程度しかないショートソード
まるで攻撃するつもりが無いようなその武器だが、彼を知る人にとってそれは当たり前の姿だった
「盾よ!汝を支えるは魔神の腕なり!パワーシールド!!」
盾を前に突き出し、左手で持ち手をしっかりと握り締め、ショートソードを持った右手を拳で押し付けるようにして左手の下を支える
右足を軽く引き、左足を軸に重心を前屈みにして、真正面から堂々とレッサーデーモンに衝突する
ズガンッ!
彼我の体格差から、普通なら吹っ飛ばされてもおかしくない衝撃が襲う
しかしスキルの効果か、それとも彼の意思の強さなのか
彼は吹き飛ぶどころか一歩さえも下がることなく、レッサーデーモンの突進を全て耐え切った
「シールドチャージ!!」
そのまま次のスキルを発動させる
手を縮めて手前に引き寄せ、体も一瞬だけ後ろに下げる
さらにその一瞬後、それらを全て前方へと向け勢いよく突き出し、跳ね飛ばすようにして盾を思い切りたたきつける
「GA!?」
強い衝撃に襲われ、突進したままの姿勢で止まっていたレッサーデーモンがよろけながら大きく後退した
「ありがとうアレックス」
いまだ悠然と佇むアリサが言った通り、彼女達の前に立っているのはアリサパーティーの守護者アレックスだった
「どういたしまして」
やわらかな笑顔の横顔を見せ、しかしすぐに油断なくレッサーデーモンへと向き直る
相手は油断すればすぐに殺されてしまうような相手、しかもそれが3体もいる
例え全員が揃った状況だとしても、それは変わることがない・・・少なくともアリサはそう考えている
ではアリサ以外は、と言うならば
「おっせーよ、いちゃつくのは後にしろぃ!」
にやにやとしながら親父くさいことをバスカーが言う
彼はもう勝利を確信しているようだ
「全くですね、許せません
こんな非常時にあんなことやこんなことをするなんて・・・」
本当にやっているなんて微塵も思っていないが、茶化さずにはいられないと言いたげなやはりにやついた顔で話すグレイ
こちらもどこか安心したような表情をしている
「当てつけか!彼女いない俺たちに対する当てつけなのか!?当てつけなんだな!?!?」
何がショックだったのか、異常に反応するマキア
グレイの言葉を信じたのかもしれないが、そんな言葉は余裕があるからこそ言える台詞だろう
「ちょっと、ふざけてる場合ではありませんのよ」
そう言いながらも、やはりにやついた顔をするレディ
勝利を確信し、リラックスさえしているように見える
「え、ちょ、みんな何いって・・・」
目に見えてうろたえるアレックス
そこまでうろたえてしまうと、逆に何かあったと勘違いさせてしまいそうなほどうろたえていた
「・・・」
スッとアリサが前へ出る
緩んでいた空気が一気に緊張へと変わる
新たな乱入者の力を把握したのか、それとも悪魔が「絶対に勝てない」と言われる虹色の魔眼を恐れたのか
レッサーデーモン達はじっと動かず、アリサ達のやり取りをずっと見ていた
「・・・行くよ」
たった一言
戦略も作戦も、何かを指示したわけではない
それでも、彼らにはわかる
お互いがどう動くのか、どう動きたいのか、何をしたいのか
信頼と、信用と、実力を把握しているという事実
余計な作戦はいらない
自分たちができることを、仲間がやれることを、敵を倒すという目的を果たすだけだった
――――――――――
「ふぅ」
学園の遥か上空
空に浮かぶ人影
現学園長ファルケン=ナウレアはそこにいた
空中に浮かび上がり、遥か先に見える魔物の大群を見据える
このまま何も無ければ、一時間ほどで到着するであろう大群
何も無ければ、潰されてしまうことは容易に想像できるほどの量が見える
精霊化によって強化された魔力と、魔力を感知する能力
群れの中にいる魔物の中には、明らかに悪魔並みの魔力を持つものがかなりの数がいることを察知している
下手をすればそいつらが協力して、集団魔法を使って学園を直接攻撃することさえ考えられる
その可能性もわかっているからこそ、ファルケンはこの場にいるのだが
「・・・あーあー、ゴホン」
声帯を整えるように何度か声を出す
精霊化したことによって、そんなことをしなくても常に最適の状態に保たれてはいるが、やはり人間だったときの習慣というものでついやってしまう
まだ自分が人間であることに苦笑いを浮かべながらも、ファルケンは魔法を使った
『みな、聞こえているじゃろうか?
ワシは学園長のファルケンじゃ』
声は周囲一帯に、正確には学園内にだけ響いた
どこからともなく、まるで学園そのものから聞こえてくるかのようにどこからでも
『いま、学園とそれを囲む都市が緊急事態であることは、諸君らが身をもって理解していることと思う』
言葉は、あらゆる場所に響いた
学園中にいる全てが、その言葉を聴いていた
――――――――――
『―――理解していることと思う』
「ハアアアアア!」
オーラブレイドを纏った剣が振るわれ、振り下ろされたレッサーデーモンの腕を斬り飛ばす
『みな生きているじゃろうか?
怪我をしているものもおるじゃろう
仲間を失ったものもおるじゃろう
今この瞬間も戦っているものもおるじゃろう』
「GAAAAAAA!」
横から別のレッサーデーモンがアリサ目掛けて殴りかかってくる
「パワーシールド!!」
しかしやはり、彼女への攻撃は全て守護者であるアレックスに防がれた
「トールハンマー!!」
防がれると同時に、レッサーデーモンの側面から電撃を纏った鎚による攻撃が入った
「GUGA!?」
大きくよろけながら、強烈な電撃により麻痺したように痺れて動きが鈍くなる
「そのまま止まっていなさいっ!」
『だが心して聞いてほしい
そして、絶望だけはしないでほしい』
「氷の棺!!」
痺れたレッサーデーモンの体の中心を正確に突き刺し、その部分から周囲が一気に凍結していく
長方形の形になった氷は、レッサーデーモンを全て覆い尽くし、完全にその動きを封じる
が、そこに3体目のレッサーデーモンがダークアローを放とうとしているのをレディは見つけた
「雷よ!炎よ!渦巻く嵐の姿となりて焼き尽くせ!ライトニングフレア!!」
しかし、見つけていたのはレディだけではなかった
咄嗟に攻撃魔法で援護をしたのはグレイだ
複合魔法という高等技術を用い、炎と雷が竜巻のようにうねりながらレッサーデーモンへとぶつかり、魔法を中断させる
しかし
「GUUAAAAA!」
マグマのような赤い亀裂が、彼らの火属性に対する強い耐性があることを示している
炎をものともしない勢いで吼え、狙いをグレイへと変更し
ボッという音と共に、炎と雷の竜巻から飛び出したマキアを見つけた
『現在、学園へと向けて魔物の軍勢が押し寄せてきておる
しかもその数は膨大じゃ、恐らく国の騎士団だけでは守りきれんじゃろう』
「おらあああああああ!」
グレイの魔法を吸収し、真っ赤に燃え上がった右腕で顔面を殴りつける
小規模な爆発を起こしながらぶつかり、炎ではなく衝撃波という効果を持ってダメージを与える
「・・・行くぞ」
一行の戦いを見ていた男生徒が呟く
「え・・・で、でも」
自らこの場に来た手前、すぐに頷くことができない女生徒
「行くんだ!俺たちがいても足手まといだ!
それに学園長の声が聞こえてるだろう!俺たちは行く必要があるんだ!」
「で、でも!魔物の大群って・・・」
「だからこそだ!
きっと学園長はこう続けるはずだ!」
「『頼む、諸君の力を貸してくれ』」
学園長の魔法による音声と、男生徒の声はぴったりと重なった
――――――――――
『逃げるな、とは言わん
逃げることも正しい選択の一つじゃ』
校庭には教師達と、避難した生徒で溢れかえっていた
『生きることが、未来につながることもある
未来があるのならば、未来のためにならば、逃げることも正しい選択じゃ
ワシはそれを咎めようとは思わん、できる限り手助けもしよう』
全員が、空中に浮かぶ学園長を見ていた
無事なものも、怪我をして倒れているものも、その怪我人を治療しているもの達も
『だが、それでも・・・
それでも力を貸してくれるというのなら、共に戦ってくれるというのなら・・・』
その言葉と同時に、超がつくほど巨大な魔方陣が空中に出現する
4種類のそれぞれ色の違う魔方陣
赤い鳥のような紋章を描くものが、青い龍のようなものが、白い虎の、緑の亀のようなものが
『ワシは誓おう、必ずこの戦いに勝利してみせると!』
魔方陣は一際輝きを増し、眼が眩むほどの光を放つ
光が収まると、魔方陣から4つの存在が召喚されてた
赤と金のグラデーションをした巨大な鳥がいた
青い鱗と白い体毛を持った巨大な龍がいた
真っ白な体毛と黒い模様が入った巨大な虎がいた
蛇のような尻尾と龍の顔を持った巨大な亀がいた
神、という言葉を信じたくなるような、圧倒的な力を持った存在が4体もそこに出現していた
――――――――――
「・・・あ」
ふと、一人の女生徒が中庭のある場所に視線を向けた
「あーそっか、そんな季節になってたんだ」
「あんた何やってんの!急ぐわよ!」
見つけたものに向かって、母親のような優しい笑顔をしていた女生徒に向かって、別の生徒が急がせる声をかける
「あー、ごめーん、すぐ行くー!」
「緊急事態なのよ!自覚あんのあんたは!」
きつい言葉を言いながら、さっさと校庭へと向かっていく彼女の後姿を追う
走り始めた瞬間に、もう一度だけと視線を再び見つけたものに向ける
「わたし、がんばるからね」
語りかけるようにして、「それ」に向かって話しかける
返事がないことはわかっている、だから返事を待たずにすぐに走っていってしまったが
(頼む)
「・・・?」
彼女には、何かが聞こえたような気がした
『ワシは誓おう、必ずこの戦いに勝利してみせると!』
直後、校庭からとんでもない眩しさの光が降り注ぎ、空中に4体の巨大な召喚獣が出現していた
彼女はその光景に目を奪われ、今の体験はすぐに忘れてしまう
彼女が見ていた「それ」は、何の変哲もないただの花
リリーナ・ウィッシュ
リリーナの願いとこの世界で呼ばれる、世界中のどんな環境でも手入れさえすればしっかりと咲く強い花
手入れを怠れば、すぐに枯れてしまう特徴を持つとても弱い花
人がいることでしか咲くことのできない特徴的なこの花は、女生徒が中庭で3年間ずっと手入れをしてきた花だ
今この瞬間
戦争という非常事態にあって
リリーナ・ウィッシュはその全ての花を咲かせていた
生徒達を応援するように
その中の一輪だけ
湿気もないのに、水に濡れた花があったことは、誰も知らない
四神召喚ひゃっほーい(゜∀゜)!!!
フェニックスといい四神といい、学園長は厨二病なんでしょうかね?
あ、そうさせたの私かw
補足事項ですが、アリサ達のとこに行った彼女の話
彼女は最初のレッサーデーモン出現時に仲間を殺されています
彼女が前回発言して後先考えずに突っ込んだ理由はそのへんです
詳しく描写なんてしてたら話数がアホほど伸びるだけなので、今後はそういう背景があっても基本すっ飛ばすか超簡略化していく予定です
※読者様へお願い
活動報告にも書きましたが、自分の作品と展開や内容が酷似している作品がありましたらこっそり教えてください
理由などは活動報告を見ていただけると助かります