撤退と進軍
えー・・・何も言い訳はしません・・・
かつてないほど駄文です、恥ずかしいぐらい駄文です
無理矢理感が強すぎる・・・あ、前からかw
とりあえず本編どうぞ
ボッ!という衝撃波のような音と共に、猛烈な勢いでファルケンが真横に飛んでいく
普通の人間が耐えられるとは思えないような速度で振るわれた剣は、正確にファルケンの首を捉え、ぶつかった
「・・・?」
しかしその光景に違和感を感じているのは、他でもないライアン自身だ
剣を振り、それが首にあたる
この場合目の前に広がる光景は、ファルケンの首が飛んでいる状況が正しいはずだ
しかしライアンの目に映っているのはファルケンが吹き飛んでいる状況
これはおかしい、ありえない、普通じゃない
ほんの一瞬、ファルケンがまだ着地もしていない状況でそこまで思い至り
飛んでいくファルケンを強化された超視力でじっと見つめる
「・・・っ!?」
見えたのは、ライアンが求める「解答」ではなかった
ニヤリとしているファルケンの口元と、ニヤけたままで再び詠唱を開始しているのがライアンの目に映る
「やば・・・」
たったそれだけの言葉を言いきることが、ライアンにはできなかった
最後の一文字を発音しようとした瞬間、轟音と共に視界が真っ白になってしまったから
ライアンの視界はまさに真っ白であり、何が起こっているか全くわからない
第三者の目から見れば、ライアンが蛇のように絡み合い、捩れ合う雷の中心に立っている光景が見えただろう
まるで3匹の巨大な龍が巻きつくようにして荒れ狂う雷の渦
それは例え巨大な魔物であったとしても、その中心に5秒と立っていることはできないことが容易に想像できる
周囲の地面は黒焦げになっているのだろうが、雷が放つ膨大な量の光によって一面は白一色に染まっている
その中心にポツンと存在する黒い点だけが、ライアンという生物がその中にいることを示していた
「ふぅ」
いつの間にか飛ぶことをやめ、ゆっくりと歩いてライアンのもとへと向かうファルケンの姿があった
一歩を踏むたびに少しずつ雷は光を弱めていく
二人の距離がわずか10メートルほどになったころ、雷はその姿を完全に消した
「これで無傷とはの・・・、さすがに心が折れそうじゃ」
そういうファルケンだったが、その姿は先ほどと何も変化していない
首に思い切り刃物が当たったというのに、その首には傷どころか痣さえも残っていなかった
「てめぇ」
ズシャリと地面を踏みにじり、雷光の中で身を屈めていたライアンが姿を現す
その表情は怒りに満ちていると同時に、困惑を感じさせていた
「どういうことだ、俺は確かに首を切った・・・は・・・」
言葉の途中から、ライアンは「正解」に気づいた
それはファルケンが高速で詠唱ができる理由、ありえない速度で魔力が収束させられる理由
彼の首が落ちなかった理由
ファルケンの体は、手足の先が半透明になっていた
「精霊化だと・・・」
見破られたファルケンはしかし、何事もなかったかのように穏やかな表情をしている
「その通り、お主に勝つためにはこのくらいせんとのぅ」
精霊化
使い手は遥か昔にいなくなり、今では伝説の中にそれらしきものがあるだけの魔法
文字通り自分を精霊と変化させ、こと魔力に関しては超常的な力を手に入れる究極と呼ばれた魔法
しかしそれはもちろんいいことばかりではない
精霊とはすなわち魔力の集合体であり、それが意思を持った存在と言われている
それに変化するということは、つまり肉体が魔力と化す、ということを意味している
最初からそうであった精霊と違い、人間が魔力の塊になることは多大な負担が体にかかる
肉体という魔力の集合を維持することが難しく、どんな使い手であってもやがて消滅してしまう
一時的な超常能力のために、命を捨てる魔法
それが精霊化という手段であった
「死ぬ気か?」
ライアンはその魔法を知っている
その結果どうなるかもわかっている
だから、その一言を聞くだけで十分だった
「命よりも大事なものというのがあるじゃろう?」
だから、ファルケンも多くは語らない
一度精霊化してしまえば、止める手段は無い
本人に止める術は無い、周りの人間が止めるには、膨大な量の魔力と専用の設備が必要になる
しかし今の時代、それを行うだけの設備も方法も遥か過去に忘れ去られてしまっている
もはやファルケンの消滅は確定事項だった
「・・・へっ、だったら無駄死にだな」
それがわかったから、ライアンは勝ちを悟った
「俺は逃げるぜ、お前が消えてからまた来ればいい」
無理に戦い、消耗する必要などない
時間を置けば勝手に消滅するような相手など、相手をする必要が無いとライアンは判断した
しかしその選択も、ファルケンは予想していた
「いいのかのぅ?
グラハルトの話じゃと、勇者が現代に現れているらしいじゃないか」
身を翻し、今まさに撤退しようとしていたライアンは動きを止めた
「・・・勇者・・・だと?」
「そう、勇者じゃ
勇者がお主がいないなどという都合の良いタイミングを逃すかのう?
お主がおらん間に魔王の元へ辿り着き、倒してしまうかもしれんぞ?
ちなみにワシは何もしなければ、このまま一週間はなんとかなるはずじゃ」
「・・・」
勇者という単語に、ライアンは明らかな反応を示す
まるで仇の名を聞いたかのような怒りと憎悪の表情を浮かべ、歯軋りが聞こえてきそうなほど強く歯をかみ締めている
「・・・ふん」
しかし、ライアンはすぐに襲い掛かってきたりはしなかった
「どっちにしろ一時撤退だ、てめぇみてぇなの相手にしてたらキリがねぇからな
・・・安心しな、すぐに戻ってくるからよ」
直後、黒い竜巻のようにライアンの影が動く
一瞬したあとには、文字通り影も形も残っていなかった
「ふぅ・・・最後は若いのに任せるしかないとはのぅ、年はとりたくないもんじゃ
・・・のう?」
最後は誰かに尋ねるように、ファルケンを一人話した
それに答えるようにして、ふわりと優しい風が吹く
「精霊よ・・・この手を使うのが、せめてワシだけで済むことを祈らせてくだされ」
ファルケンの願いは、広い校庭の外に聞こえることは無かった
――――――――――
「くそジジイが!」
学園を見渡せる森の奥、切り立った崖の上にライアンは出現していた
「攻めたつもりが攻められてたってわけか!
ハハッ!上等だジジイ!ぶっつぶしてやる!」
遠く離れたファルケンに向かい、罵声を浴びせる
しかしそれはどちらかと言うと、本人に向かって言っているというよりも、周りにいる者達に怒りをアピールするために行っているようだった
「おい!全軍を出せ!
一気に決着をつけてやる!」
崖の後ろ、境界線のようにしていきなり大きな木々が立ち並ぶ森の中に向かってライアンは指示をする
その声に反応するようにして、暗闇の中から赤い光が浮かび上がった
1つではない、2つでもない、数十、数百の赤い光が浮かび上がり、連鎖反応のようにあたり一体にどんどん浮かび上がっていく
それは赤い光などではなく、全てが魔物の瞳であった
「召喚陣も起動させろ!全軍だ!全部呼び寄せろ!」
その指示に従ったのか、赤い光のいくつかがその場を離れるように消える
「全軍の召喚が完了次第、進軍を開始する!
目標は魔法学園!全部ぶっ殺せ!!!」
やがて赤い光は次々と出現し、森一帯を埋め尽くさんばかりに広がっていく
森の全てに赤い光があるのではないかというほどに、広範囲にそれは広がっていった
「見てろよくそジジイ、それに勇者!
俺が全部ぶっ壊してやる!」
崖の先端に立ち、睨むようにして魔法学園を見つめるライアン
その姿を美しく見せるかのようにして、背後の空中に巨大な魔方陣が展開される
光り輝き、幾何学的な模様に大量の文字がびっしりと埋め込まれ、直径にして20メートルはありそうな巨大な魔方陣
あるものは黄色の光を放ち、あるものは青い光を、赤い光、緑の光、白い光
様々な色の光が空中で輝き、ライアンの背中を美しく飾った
「終わりだ」
ニヤリと浮かべた笑みは、獲物を見つけた動物のようだった
次回からは急展開・・・していく予定?
がんばれ自分!仕事に負けるな自分!忙しいからって別の小説作って現実逃避するんじゃない自分!
もうしばらくお付き合いいただければ幸いですOTZ←土下座