表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第七章「意思」
90/96

大将戦

おひさ~しぶり~です


約束通り・・・かどうかはわかりませんが、何とかアップできました

短くて申し訳ない


しかも主人公でなくて申し訳ない

本編どうぞ

アリサとアレックスが合流し、校舎の中で下級悪魔レッサーデーモンとの戦闘を再開したその頃

下級悪魔が最初に出現したその場所、学園に広がる校庭において、二つの存在が対峙していた


片や真っ黒なフード付きのローブを纏い、下級悪魔の群れを後ろに控えさせる男

両腕を組んで踏ん反りがえっているようなその姿勢は、どこか堂々としているせいなのか、男に非常に似合っていた


対するは偉そうな衣装を身にまとい、髪の毛を全て白くするほどに年齢を重ねた高齢の人物

それほどの年齢を容易に感じさせ、腰が曲がっているというのに、その場に立つ姿は威厳という言葉がぴったりくるような見た目だった


しばらくの間、睨むようにしてお互いを見詰め合っていた二人

先に話し始めたのは黒いローブの男からだった


語り始めると同時に、強めに吹いた風が彼のフードをふわりと持ち上げ、隠れていた素顔を晒す


「・・・お前が今の学園長だな?」


フードから現れた顔は、それを知るものにとっては驚きの顔だった

しかし学園長ことファルケン=ナウレアは、そのことを知っていたかのように微動だにすることなく、淡々と返事を返す


「いかにも、ワシが現魔法学園学園長ファルケン=ナウレアじゃ」


余計なことを話すつもりが無いのか、学園長はそれだけを言って再び沈黙する

それを恐怖していると感じ取ったのか、フードの男はニヤリと嫌らしい表情を浮かべて学園長に言葉を続けた


「ふっ、だったらこの学園の本当の意味くらいわかってんだろうな?

今こそがその時だ、役目を果たしてもらいにきたぜ」


本当の目的


学園には学園たる意味以外の「何か」が存在する、という言葉と共に、彼は一層笑みを深くした


「本当の意味?全くわからんな

寝言は寝てから言ってはどうじゃ?」


それに対し、一切の表情を変化させることなく、学園長はただそう言い放った

それは相手が誰かをわかっていて、相手がどれほどの強さを持っているかを理解したうえで、彼はそう言った

普通の人間であれば、恐怖に負けてただ相手の言うことを聞くしかないような状況で、それでも学園長は揺らがなかった

なぜなら・・・


「学園は学園じゃ、次代を担う若者たちに教育を施す場所じゃ

例え最初の目的が何であろうとも、それを阻むことは現学園長であるワシが許さん!」


殺気にも近い威圧感を放ちながら、学園長は揺るがない

目の前の男は言葉の途中から、本当に殺気をぶつけてきているが、それでも揺るがない

たとえベテランの冒険者であっても、脅えて震えてしまいそうな恐怖を感じても、学園長が学園長である限り、彼は揺るがない


それを理解したのか、フードの男は憎たらしそうな表情を顔に貼り付け、忌々しげに言葉を語り始めた


「チッ、そうかよクソジジイが

だったらもうめんどくせぇ、死ねよ」


そう言って彼は掌を学園長へと向け、その掌を発光させた


次の瞬間


学園長の周囲が「爆発」した



――――――――――



「・・・チッ、なかなかやるじゃねぇかジジイ」


砂塵が舞う中、風によって砂煙が晴れていく

その中に黒い人影がゆらりと見える


やがて完全に砂煙が晴れた中、そこに立っているのは学園長ファルケンその人だった


「ふん!これでも世界屈指の名は伊達ではないわ!」


よく見れば、ファルケンの周囲数メートルだけが何事もなかったかのようにキレイな状態のままだった

逆にある一線を越えた瞬間から、まさに爆発の中心地とでも言うようなえぐられ方をしている学園長の周囲は、異常の一言だった


だが良く見れば、学園長自身には少なくないダメージが与えられている

それは気丈に振舞ってこそいるが、よく見れば小刻みに震えている彼の足元を見ればすぐにわかることだった


当然、それを見逃すほど、フードの男は生ぬるい存在ではない


それをわかったうえで、彼は再び口を開く


「・・・もう一回だけ言ってやる

大人しく本来の目的・・・『万物の才能』をよこせ!

そうすれば・・・」


「命だけは助けてやる、とでも?」


「・・・ああ、その通りだ」


再びニヤリと笑みを浮かべる男

誰だって自分の命と何かを天秤にかければ、迷わず自分の命をとる

それを確信しているかのように、学園長が必ずその選択をすることをわかっているかのように

彼は笑みを浮かべた


「・・・そうじゃな・・・残念じゃが」


学園長がふっと肩の力を抜き、地面を見るようにして顔を俯かせる

それが人間だと、自分の命以上のものはないと

男がそう考え、油断した瞬間だった




「交渉決裂じゃの」




ゴッという何かが燃え上がるような轟音

瞬間的に膨張する空気

肌をジリジリと焼くような熱気

異常なまでに収束する魔の力


「な・・・にっ!?」


ファルケンの周囲には、異常と言えるまでの膨大な魔力が収束し、一つの形を作り上げていく

燃え上がり、噴出し、空間そのものを焼き尽くすような強力な「炎」

それもただ燃え上がるだけのそれではなく、魔力によって形を与えられ、意思さえも与えられたかのように特定の形状へと変化していく


「燃えよ、滾れよ、漲れよ。汝の名は不死鳥、不死たるその名の如く、自身を焼き尽くす炎であろうと、汝にとっては鎧に過ぎぬ。

汝不死たるその名を持つからこそ、汝その鎧を纏えることを知れ!汝以外のものに!その鎧触れることすらできぬことを知らせ!」


(まずい!?大魔法!?なんだこの詠唱速度は!もう間に合わねぇ!?)


咄嗟に動き出そうとした男は、その超人的な身体能力故に正確に状況を理解した

ありえないほど高速で紡がれる言葉と、異常なまでに早く収束していく魔力の流れ

何の準備もしていない今の状況から、放たれる直前になっている学園長の魔法を止める術はもはや無かった


「焼き尽くせ!フェニックス!!」


一瞬


本当に一瞬だけ、フェニックスと呼ばれた鳥のような見た目の炎の塊が、羽ばたいたように見えた

見えた次の瞬間には、周囲を焼き尽くしながら一瞬で目の前に迫ってきていた


「ぬぁああああっあっぁぁぁ!?!?!?!?」


それを遠くから見れば、その光景の異常さがはっきりと理解できたであろう


学園長のやや後ろに、巨大な火の鳥が現れ、一瞬羽ばたいた次の瞬間にはもうその鳥が消え去り

まるで光線のように収束した炎の奔流が横一直線に解き放たれていたのだから

フードの男は当然だが、その後方に控えていた下級悪魔の群も全て飲み込み、浄化するかの如くあらゆる物を焼き尽くしていく

焼き尽くされた下級悪魔達は、そこに存在していたことさえ証明するものを一欠けらさえ残さずに消えていった



――――――――――



先ほどとは逆の状況になった


砂煙の中心にいるのは、学園長ファルケンではなく、フードの男だった

ただし今はそのフードが全て焼け焦げ、もはやただのボロ布と化している

驚くべきなのは、フード以外に関してはほぼ無傷であるという彼の姿だったのかもしれない


「さすがにこの程度では死んでくれんか、さすがは初代学園長ライアン=ローレンスといったところかのぉ」


「はっ、てめぇがここまでやるたぁ思わなかったぜ、さすがは現学園長ファルケン=ナウレアってか」


ライアンは両腕を顔の前で交差させたまま、ファルケンを睨むようにしていた

交差された腕をゆっくりと下ろし、体をゆらりとさせて背筋をまっすぐに伸ばす

そして顔をやや上へと向け、視線だけを再びファルケンへと向けた


「・・・本気でやるか」


ボソッと呟いた


その言葉が学園長の耳に届くころには、ライアンは学園長の後ろへと移動したあとだった・・・


「っ!?」


学園長がその事実に気付き、後ろを振り向こうとする


「死ね」


感情の無い呟きと共に、彼がいつの間にか手に持っていた剣がファルケンの首にぶつかる




学園長は、剣がぶつかるその瞬間まで後ろを振り向くことはできなかった・・・

学園長おおおおおおおおおおお!!!


※次回は3月中にアップ予定

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ