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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第六章「収束」
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始まる物語

いつもお読みいただきありがとうございます


久しぶりに予約投稿してみました、1時間後にももう一話予約投稿してありますので、よければ両方お読みください


今回のお話は予告通り、部屋の中に入ったエドワードのお話です

次の話は同じ部屋で別の人物が・・・っ!


本編をどうぞ

「ぐっ・・・くぁっ!」


エドワードは自分の腹に刺さったナイフを勢いよく抜き取る

抜いた瞬間に血が溢れ出るが、刺さった部分の周りはすでに腐り始めていて血管を塞いでいるようだ

おかげで出血多量ですぐに気を失うことがなかったのが、彼にとって幸いだったといえよう


それさえも、運命という予定の一つに過ぎなかったのかもしれないが、少なくとも今の彼にとっては幸運と呼ぶのが相応しいのだろう

この状況になったからこそ、彼は未来に向けて行動することができたのだから


「・・・毒か・・・しかも特殊なヤツだなぁ、・・・はは、こりゃ死んだかも」


自分のことであるというのに、ひどく淡々と他人事のようにそう評価する

今の状況では助かる可能性が限りなく低い、ということに気づき、諦めにも似た覚悟を決めてしまったのだろう

決めざるを得なかった、というのが正解かもしれない


「はぁ~・・・参ったね、完全に油断してた」


ナイフが刺さっていた腹を手で押さえ、傷の具合も確認せずに立ち上がる

部屋は相変わらず、四角い画面から青白い光が漏れ、それを鉄製らしい周囲の壁と寝台が光を反射し、薄っすらと周囲を照らしている

四角い画面の中には何か文字が映し出されている様子だったが、彼にそれを読むことはできない

見たこともない装置が大量にあることも加わり、この部屋の異様さに呆気をとられて油断してしまった


失態だ


エドワードにとって、あの程度の距離からの投げナイフを避けることなど難しくはない

例え死角からの攻撃だったとはいえ、普段ならば絶対に食らったりしない

それでも食らってしまったのは、やはり油断していたから、という理由以外には存在しなかった


だからこそ彼は思う


この程度の理由で死んでしまうなど、なんと情けないのだろうと

この程度の理由で、二度と冒険が出来なくなってしまうのだと

この程度の理由で、アリサとの約束が果たせなくなってしまうのだと


アリサのことを思い出し、彼女の微笑を思い浮かべ、彼女に会いたいと願う


せめて、彼女に何か残せれば

せめて、将来誰かがこの遺跡に来たときに、彼女まで届けてくれる何かを残せれば

せめて、ほんの少しでもいい、彼女のために何か出来れば


そう思いながらも、全身に回り始めた毒により、視界が朦朧としはじめる

立っていることも辛くなり、あぐらをかくようにして地面に座り込んでしまった


「・・・何か・・・なんでもいい、何かを残したい

このまま死ぬなんて、死んでも死にきれない・・・」


自分の想いを口に出す、その言葉には想いが乗っている


想いの乗った言葉に反応する存在があったのは、幸運だったのか、それとも運命だったのか


『操作補助システム起動、音声操作モード開始、オハヨウゴザイマス』


「・・・は?」


どこからかわからない、正確に言えば部屋全体から響いてくるようなその声に、エドワードは疑問の声をあげる

だがエドワードの疑問に答えるものは誰もおらず、淡々と声は次の言葉をつないでいく


『ボディ製作開始、ナノマシン充填開始シマス・・・・・80%・・・90%・・・95・98・99・完了シマシタ』


言葉と同時に、灰色の砂嵐のようなものが発生する

それは風とは違い、明らかに一点を目指して収束していく

魔法のようなそれに、彼は攻撃を食らうのかと一瞬身構えるが、いつまでたっても攻撃してくる気配は無かった


やがて砂嵐はどんどんと小さくなっていき、その中心に影のようなものが見え始める

砂嵐とは逆にどんどん大きくなっていくそれは、まるで人間のような影へと形を変えていった


完全に砂嵐が収まるころには、人間のような大きさの、女性のような見た目の、しかし明らかに人間ではない存在がそこに出現していた


「っ!?て、転移魔法か!?」


彼が知る限り、この世界で転移魔法は実用可能なレベルには至っていない

少なくともそれは、人間どころか魔力が多いと言われているエルフでさえも、一人では絶対に不可能だとされている

しかし目の前の女性のような姿をした存在は、それをやってのけたように見える

それだけで目の前にいる存在が危険だと判断し、エドワードは自然と警戒態勢をとった


何よりその人間のようで、明らかに人間ではない容姿だけでも、十分に警戒する必要があると判断した


なぜならその存在は、人間のように目も、鼻も、口も耳も髪の毛のようなものまである

しかしその全てが鉄のような素材で作られており、瞳は青く輝いてこそいるが、それは周囲にある四角い画面と同じように、青白い光を放っていた

四肢もある、体も女性らしい、服も着ている

しかし、そのどれもが鉄のようであり、少なくとも生物ではないことだけは簡単に理解できた

現代人であれば、彼女のことをこう呼んだだろう


アンドロイドと


『オハヨウゴザイマス、現在音声認識システム起動中デス、ゴ用件ハ何デショウカ?』


「よ・・・用件・・・?」


『現在、前回ノ命令ヨリ26304時間48分経過シテイマス、計画ノ進捗ハ如何デショウカ』


「計画?計画って何のことだ!」


『前回提案サセテイタダキマシタ計画ハ、再構築リ・コンストラクションシステムノ起動デス』


再構築リ・コンストラクション・・・?」


『ハイ、再構築リ・コンストラクションシステムデス

コノシステムハ、地球上ニ散布サレテイル全テノナノマシンヲ直接操作スルコトニヨリ、地球上ノ全テヲ「リセット」スルシステムデス

現在地球上ニオケルナノマシン散布率ハ、大気中ガ96%、地表面100%、地中19%トナッテイマス

再構築リ・コンストラクションシステム起動ニ必要ナ条件ハ満タシテイマス』


「りせっと・・・ってなんだ?」


『ハイ、リセットトハ、「初期状態」ニ戻スコトヲ意味シマス

コノシステムニオケル「初期状態」トハ、植物ヲ含メタ生命体全テガ存在シナイ状態ヲ意味シマス

マタ、ナノマシンニヨリ地形ノ一部モ操作シ、可能ナ限リ平地ヘト地形変更モ行イマス』


「なっ!?」


微動だにしない鉄の女性から放たれる言葉は、エドワードにとって驚愕だった

彼女の言う「地球」という言葉が、この世界そのものを指す言葉だったとしたら、彼女はこの世界を滅ぼそうとしているということだ


「そんな計画は今すぐやめろ!」


思わず叫ぶ、しかし彼女から放たれた言葉は、ある意味で彼を裏切る結果となった


『計画ノ実行ヲワタクシガ操作スルコトハ許可サレテイマセン

実行ニハ人間ノ手ニヨル直接操作ガ必要デス』


「な・・・なんだ、よかった・・・」


彼女自身が狙って行動することが無いと知り、思わず安堵する

しかしここで、エドワードは彼女が言っていた台詞に気づいた、気づいてしまった


「・・・・・ちょっと待て、さっき進捗は如何かって聞いたよな?」


『ハイ、現在計画ノ進行ニハ十分ナ条件ガ揃ッテイマス

直接操作ニヨル計画開始ガ可能デス』


「誰かが今、その計画を実行しようとしているのか?」


『現在進行状況ノ更新報告ガアリマセン、可能デアレバ状況報告ヲ願イマス

許可イタダケルナラ、ナノマシンネットワークヨリ情報収集ヲ開始シマス

許可ヲイタダケマスカ?』


「よくわからんが許可する」


『了解シマシタ、ネットワーク接続シマス、少々オ待チクダサイ』


・・・


鉄の少女が沈黙し、元から微動だにしなかったが、石のように全く動かなくなる

いづらい空気を感じながら、エドワードは口を開こうとして、自分の状況に気づいた


毒が回り、視界がぼやけてきている

もう少ししたら口もまともにきけなくなるかもしれない

傷口はもう、ぼやけた視界ではどんな状況なのかも確認できない


『確認完了シマシタ、現在初期段階ガ起動シ、コントロールユニットノ実体化ガ完了シテイマス

デスガ・・・』


「・・・」


霞む視界と言葉を出せない口

しかし耳だけはやけにはっきりと聞き取れる状況で、エドワードは一字一句聞き逃すまいと、静かに彼女の言葉を聞いていた


再構築制御リ・コンストラクション・カウンターシステムガ起動シタヨウデス

現在コントロールユニットハ、制御カウンターシステム管理下ノナノマシンニヨリ拘束サレテイマス

解除スルタメニハ、SSSランク相当ノ「ダウンロード」済ミ固体ニヨル直接的ナ破壊ガ必要デス

・・・現在、実行者ハ「ダウンロード」ヲ実行中デス

実行者ハSランク相当マデシカ対応デキマセン、現在データ統合ニヨルランクアップ実行中デス』


「・・・ダウン・・・ロード・・・?」


朦朧とする意識の中で、その言葉だけをやっとの思いでエドワードは呟いた

それが彼を運命へと導く、キーワードとなるとも知らずに


『ピー、閲覧者ノ生命活動ニ致命的ナ支障ヲ発見シマシタ

医療機関ニ連絡シマス・・・・・応答アリマセン、緊急連絡機関ニ連絡シマス・・・・・応答アリマセン

人命優先ノ法則ニ従イ、緊急対応ヲ行イマス』


「ま・・・待て・・・」


エドワードの言葉に、彼女は反応したのかしなかったのか、どちらにせよ彼女の行動が一時停止したのは確かだった


「・・・ランクアップ・・・するには・・・どうすればいいんだ・・・?」


『ランクアップスルタメニハ、上位ランクノ固体カラナノマシン情報ヲ取得、アルイハ肉体ゴトナノマシンヲ直接吸収スル必要ガアリマス

SSSランク達成ノタメニハ、最上位ランク「虹色ノ魔眼」カラノ情報取得ガ最モ効率的デス』


虹色の魔眼、それは即ち万物の才能

それはつまり、彼が彼として今ここにいる理由

アリサのことを指していた


「アリサが・・・現代の虹色の魔眼が・・・ランクアップに巻き込まれる可能性は・・・あるか・・・?」


『検索中デス・・・・・対象ヲ発見シマシタ

計算ヲ開始シマス・・・・・計算完了シマシタ

現在ノ虹色ノ魔眼ガ実行者ノランクアップ対象ニナル可能性ハ、99%デス』


「99%・・・って」


どのくらいなんだ、と続けようとして、彼は言い切ることはできなかった

地面に倒れ、もはや意識があるかどうかも怪しいほどに衰弱している

それでも彼には意識がある、とわかるのは、彼の目だけが未だに輝きを失うことなく、鉄の女性を見つめているからだった


『緊急対応措置ヲ行イマス

閲覧者ニ対シテ「ダウンロード」ヲ実行シマス

固体情報認識開始・・・・・ランクSSS相当ノ素質ヲ確認シマシタ

緊急措置ノタメ、過去ノダウンロード履歴ヨリ近似データを参照シマス

対象検索開始・・・・・検索完了、該当データ「グラハルト」ヲダウンロードシマス』


再び灰色の砂嵐が現れる


ただし今回は、エドワードを包み込むようにしてそれは現れた


『ダウンロード展開中デス・・・他ノ操作ヲシナイデクダサイ

・・・・・ピーッピーッ、エラーガ発生シマシタ、供給ナノマシン量ガ不足シテイマス

コノママデハダウンロードガ完了デキマセン、ナノマシンヲ充填シテクダサイ』


その言葉と同時に、彼女の周囲にも灰色の砂嵐が発生する

それと同時に彼女はどんどんその姿を小さくしていき、最初と同じように音声だけが響く空間へと戻っていった


『ボディ用ナノマシンヲ充填シマシタ・・・・・供給ナノマシン量ガ不足シテイマス

ダウンロードガ完了デキマセン、ナノマシンヲ充填シテクダサイ』


しかし彼女の言葉も空しく空間に響くだけとなり、その言葉に答えてくれる存在はこの場にはいなかった


『ナノマシンノ充填ガ確認デキマセン

緊急対応マニュアルニシタガイ、ダウンロードヲ実行シタママ外部ヘト転送シマス

行動可能ニナリ次第、正規ノ手順デマニュアルニヨリ、ダウンロードヲ完了シテクダサイ

転送開始カウントダウン・・・

5・4・3・2・1・・・転送シマス』


エドワードは、その言葉を最後に意識を失った



――――――――――



『SHAAA!!!』


蛇に翼が生えたような体に、目玉が左右4対、合計8個もある気味の悪い顔をしたドラゴンがそこにいた

赤黒い体の大きさは、人間など簡単に飲み込めそうなほど太く、20メートルはありそうな長さをしている


人間が相手を出来るとはとても思えない相手に向かって、殴りかかろうとしている存在が、その日その場所に現れていた


蒼犬と呼ばれる彼は、こうしてこの世に誕生し

エドワードと呼ばれた彼は、こうしてこの世から姿を消した




この事実を知っている人間は、彼ら以外に存在しない

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