噛み合う歯車
いつもお世話になっております
お気に入り登録人数が3桁いきそうで最近ドキドキしてます
こんな私のお話でも読んでいただけるとは感謝の日々でございます
今回のお話はかなり長いです
久しぶりのあの人と、もう記憶の彼方に忘れられてそうな特徴的な笑い方のあの人が再登場!
え~っと何文字だこれ、8000文字?
・・・・・あれ?
本編をどうぞ!!!
贅を尽くした豪華な建物がある
職人の技術が惜しげもなく投入され、金にものを言わせて最高級の材料を使っていると分かる建物だった
その建物は中身も当然最高級であり、普段であればたくさんの使用人が綺麗に掃除をし、隅々まで手入れをされていたのだろう
しかしその中身はいま、まるで強盗団が丸ごと入ってきたかのように荒らされていた
しかしその原因は、少なくとも肩書きは強盗団とは縁遠い者達だった
その原因は、屋敷の地下にいた
不気味なほどに広く作られた地下の空間
その奥に作られた大広間、一番奥には国王が座るような豪華な椅子
そこに鎮座する屋敷の主と、原因である存在は睨み合っていた
勇者「東 光輝」
そして彼と最初からずっと一緒にいるレディに似た雰囲気を持つ女性、アイシャ
「ブヒャヒャヒャ!やっと来たか小僧!」
屋敷の主は二人にそう言葉をかける
なぜこの二人が自分の目の前にいるのかを、正しく理解している様子だ
理解してなお、ゴミを見るような視線を二人へと向ける
「お前の悪事もここまでだ!
証拠は全て揃っている!観念しろ!」
二人がここに来た理由は至って単純だった
国内の悪事・不正の元栓を閉めに来たのだ
二人が所属する国家において、この人物こそが諸悪の根源とも言える存在であったから
だが今までは、この人物であるとわかっていても証拠が掴めず、また金に釣られて様々な根回しがされてしまっていたため、思い切った対処ができていなかった
しかしそれも勇者が内政に協力するまで、色々ありすぎて語るには長くなってしまうが、色々あって光輝はこの男を追い詰めるまで至った
「観念?ブヒャヒャヒャ!
何をしろと言うのだ?今更罪を償えとでも言うつもりか!?
ブヒャ!ブヒャヒャ!」
勇者の言葉に男は心底面白そうに返事をする
目は相変わらずゴミを見るような視線のままだ
勇者の隣に立つアイシャは、その視線に嫌な予感を感じ、その予感を払拭するように言葉を続ける
「何がおかしい!貴様がこれまで働いてきた非道の数々!我らが許すとでも思うか!」
続けざまに放った言葉に、男は急に感情を無くしたかのような表情を浮かべる
何かがまずい、この男は何かを「する」と、アイシャの直感が感じ取ったようだ
「黙れ!鎖の小娘が偉そうにほざくな!」
ゴミを見るような視線を、感情の無い表情に貼り付けて男はそう言う
しかしその言葉は、アイシャにとって一番言われてほしくない事実だった
「鎖・・・?何のことだ?」
勇者にその言葉は、はっきりと聞こえたようだった
「ブヒャヒャ!知りたいか小僧!」
ニヤァッと嫌らしい笑顔を浮かべ、男はさらに言葉を続ける
「や、やめろっ!」
アイシャにとってそれは言ってほしくない言葉
自分が直接伝えなければならない言葉
誰かから聞いてしまえば、その意味が真逆になってしまいそうな言葉
「その小娘はなぁ!貴様が退屈せんように与えられた玩具なんだよ!
絶対に戻れないことを知っても絶望せんように!王族どもの計画が終わるまで都合よく動くように!
この国に生涯尽くしてくれるように!貴様を縛り付ける鎖なんじゃ!
ブヒャヒャヒャヒャヒャ!」
「く・・・鎖・・・?
縛り付けるって一体・・・どういうことだよ」
「光輝!耳を貸しちゃダメ!」
勇者召喚
それは召喚することは可能であっても、戻すことは絶対に不可能な魔法
過去に召喚された全ての勇者は、元の世界に戻ったという話は一つとして伝わっていない
それは全て、アイシャの一族が同じように、鎖という役目を果たしてきたからだった
アイシャの一族は代々、勇者召喚が行われた際には常にその傍らに寄り添う掟が課せられている
決して勇者が退屈しないように、勇者が逃げ出さないように、勇者が国の役に立ち続けるように・・・
アイシャは、最初から光輝を利用するために、彼の隣にいた存在だった
「ブヒャヒャヒャ!
勇者の小僧よ!一度だけチャンスをやろう!
ワシと共に初代学園長ライアン=ローレンスに仕えるのならば、貴様の願いを叶えてやれるぞ!」
真実を聞いて放心状態になっている光輝に、男はそう語りかける
「俺の・・・願い・・・?」
虚ろな視線、眺める虚空
絶望という感情を顔に貼り付けた今の光輝には、男の言葉はまるで神の啓示のように聞こえたかもしれない
「そうじゃ!貴様は元の世界に戻りたいのじゃろう!?
ライアン殿ならば!いやライアン殿だけが!貴様の願いを叶えてくれるぞ?」
虚ろだった視線に、やがて希望の光がともる
虚空を見つめていた両目は、すぐに男の顔を正面から見据える
「・・・元の世界に・・・?」
それが光輝の願い、魔王を倒したならば、自分はそうするものだと漠然と思っていた願い
「ブヒャヒャ!
元の世界に戻るだけが望みでも無いだろう!?」
その言葉に光輝はピクッと体を反応させた
力!金!女!何もかもライアン殿は叶えてくれるぞ!
例えばこんな風になぁぁぁああああああ!!!」
男は言葉が終わると同時に、その姿を変貌させていく
誰かに切り取られたかのように、両の腕がある部分からすっぱりと切れている
しかしその先には、何もなくなった空気があるのではなく、魔物のような禍々しい赤黒い色をした腕が存在した
その禍々しい腕から触手のようなものが飛び出し、男の体に纏わりついていく
「なっ!?なんだあれは!?」
やがて触手は顔を、体を、足を、全てを覆い尽くす
何重にも触手が重なり合い、巨人の上半身のみのような姿を作り上げていく
逆に下半身は多数の触手が埋め尽くしており、グロテスクな状況を作り上げていた
「ブヒャヒャ!
これがライアン殿がワシに与えてくださった力じゃ!
金などもはやどうでも良い!権力など今更何の意味もない!
力じゃ!この力があれば人間などもはやただのゴミに過ぎん!」
その言葉の通り、圧倒的な魔力の流れが周囲を乱していた
それだけでこの男がどれだけ強力な存在であるか、少なくとも一個人で戦える相手ではないことが容易く理解できる
「俺は・・・」
しかし、光輝はそれを知ってか知らずか
あるいは知っていてなお、近づこうとしているのか
ゆっくりとした歩みで男の方へと歩き出す
「光輝?
待って!そっちに行かないで!」
それが寝返る行為かとアイシャが疑ってしまったのは、仕方が無いことだったのかもしれない
自分の立場を他人から教えられ、元の世界に戻れないという事実
そして、相手の上にいる存在だけが、それを可能にするという話
これだけ聞いたならば、相手に願えるという判断はありえない話ではない
少なくともアイシャは、そういう人間をたくさん見てきた
「ブヒャヒャヒャヒャヒャ!
そうじゃ!お前も欲しいじゃろう!
この力でさえも!ライアン殿の計画が進めば意味など無い!
願うまま!何もかもが思い通りになるんじゃ!」
ふらふらと言葉に誘われるように、光輝はさらに男に近づいていく
「俺が・・・俺が欲しいのはっ・・・!」
歩みを続ける光輝
アイシャは必死に、それを引きとめようとする
「光輝・・・頼む・・・そっちに行かないでくれ・・・
私は、役目なんかじゃない、私自身が、お前のことがっ」
アイシャは本気で願う
涙を浮かべ、自分の本心を語る
自分の立場を光輝が知ったうえで
例え言葉が届かないとしても、引き止めないでいるわけにはいかない
何故なら彼女は
「好き・・・なんだっ!」
心から、彼を愛していたから
「俺が欲しいのは!
そんなもんじゃないっ!!!」
白い光が剣の軌跡をなぞったのは、その言葉と同時だった
「ブヒャッ!?」
呆気にとられた男の目の前に、巨人サイズのそれになった腕が飛んでいった
「あ・・・」
何が起こったのか、アイシャにはとっさに理解できなかった
正確にそれを理解できたのは、おそらく光輝だけだったのであろう
「ブヒャァァアアッ!?
馬鹿なっ!?馬鹿なぁぁあああ!
ラッ、ライアン殿にいただいた体が!?人間なんぞに傷つけられるはずがっ!?」
同じように理解が遅れた男は、急激に事態を理解し、うろたえる
「例え、計画通りだったとしてもっ!」
さらに白い光が宙を舞う
それが剣撃だと気づくことは、少なくともその男にはできなかった
「ブヒャッ!
なぜだ!なぜワシの体がっ!?」
男の体は今や、ただのモンスターでさえも貫くのは難しいほどの強度を誇っている
それを理解していたからこそ、何が起こっているのか男には理解できない
「例え、二度と元の世界に戻れないとしてもっ!」
さらに一閃
まるで豆腐に包丁を入れるが如く、抵抗を一切していないかのように男の体が分断されていく
切り刻まれていく自分の肉体を見て、男はやっと最善の行動をとった
「ブヒャァァア!
だっ、誰かぁ!ワシを助けろ!誰かぁぁっ!!!」
だがそれももう遅い、今からでは逃げる暇も、誰かが助けることもできはしない
自らの肉体を過信した結果、彼は自分がとるべき行動を間違えた
「俺はっ!この世界で生きる!
俺が愛した人たちを!仲間を!アイシャを!
殺させたりしない!」
手に持つ剣を肩に担ぎ、地面と水平に構える
さらに体を思い切り捻り、左足を前に上半身は背を向けるようにして力を溜め始める
「ヒッ、ヒィィ!」
構えに応じるようにして、溜めていく力に呼応するようにして
光輝の周囲にはどこからともなく光が集まり、それが光輝へと吸い込まれていく
「光輝・・・」
アイシャはその姿に見ほれてしまった
溢れる光が光輝に吸い込まれ、光輝自身が若干輝き始める
その輝きはやがて水のように体の表面を流れ、剣へと集まっていく
一本、二本、三本・・・
光が束となり、剣を覆いつくし、眩い光を放ち始めると同時に、光輝は言葉と共にそれを放った
「ソニックブーム改め、我流!セント・ソニックブーム!!」
それはかつて一度だけ見た「彼」の動きをなぞるかのごとく
たった一度、ほんの一瞬、光輝以外の誰も気づかなかった圧倒的な速度で流れる魔力の流れ
彼はそれを真似し続けた、模倣し続けた、自分なりのやり方を見つけた
かつて蒼犬が彼に対して放った一撃「ソニックブーム」
今、光輝によって模倣されたそれは一筋の斬撃となり、衝撃波となり、魔を断つ聖剣となって放たれる
「い、イヤじゃ!死にたくないいいぃぃぃ・・・っ!!!」
両腕を失い、下半身のない男にとって、それは断頭台のギロチンのごとき存在だった
逃げる、間に合わない
防ぐ、腕が無い
耐える、ただの斬撃も耐えられないのに、耐えられるわけがない
誰かに助けを、誰もいない
どうやれば自分は助かるのか、そう考えたところで、男の思考は途絶えた
彼は自分が真っ二つになったことさえ気づくことは無かっただろう・・・
肉体を左右に分断された怪物が、ズシンと音を立てて床に転がる様を見届け、光輝は口を開いた
「アイシャ」
感情のよくわからない声で、顔を怪物のほうに向けたまま、光輝はそう言った
「は、はいっ」
アイシャは体ヲビクッと震わせ、萎縮してしまった
自分は彼に何と思われているのだろうか、自分の気持ちなど言い訳にしか聞こえなかったのではないだろうか
例え自分の気持ちがどうであれ、彼に対してやったことは変わらない
自分のその思いが、彼を苦しめているのかもしれない
鎖としての自分を、疎ましく・・・今となっては憎まれてしまったとしても、何も言うことはできない
この場で殺されてしまうかもしれない
そんな未来を想像して、震えてしまった
光輝が続きを話すまでは
「責任、とってくれよな」
横顔だけが見えるように光輝は振り返り、アイシャを見る
その顔は照れくさいような、思春期の青年が思い切って告白をしたような
自分が考えていたことが、どうしようもないほど馬鹿らしく思えてくるような
そんな、優しい顔だった
「・・・はは、普通逆じゃないか?」
思わず彼女は笑ってしまう
光輝を好きだと言った気持ちに偽りは無い
彼の問いかけには、言葉では無く、行動で返す、そう決めた彼女は立ち上がり、光輝へと近づく
彼の唇にそっと口づけをして、彼女は彼への返事をした・・・
真っ赤に頬を染めた光輝と、涙を滲ませたアイシャは、しばらく見詰め合って・・・
「あ~ぁ、先を越されちゃったかぁ」
「まぁまぁ、別に多妻でもいいんじゃないかしら?」
「ボクはみんな一緒がいいな!」
恥ずかしい思いをしていることに気づいた
「「っ!?」」
ちなみに彼女達は怪物と化した男の手下を食い止めていたのだが、勇者一行に敵うハズも無い
手間取ったとはいえ、一部始終をずっと見ているくらいには二人の下へと駆けつけていた
「ど・・・どのへんから?」
「「「責任とってくれよなあたりから」」」
二人が顔を真っ赤にしてOTZの姿勢になったのは、当然の行動だったかもしれない
――――――――――
一行はそのまま屋敷の中、具体的には怪物化した男の書斎や執務室などを家捜ししていた
もはや所有者は死んでしまっているので、強盗に近い漁り方をしている
違うのは探しているのが金目のものではなく、男が行っていた様々な悪事と、それに関連している人物達へ繋がる証拠だということくらいだろうか
光輝は引き出しの奥、引き出しを全て引ききらないとわからないような場所に、紙束を見つける
このへんはさすが勇者といったところであろう、ご都合主義万歳である
「これは?」
題名の無い、ただ日付と内容が羅列されているだけの紙束だった
しかし光輝は、何か言いようの無い不安をこの紙束から感じ取る
「ん?日記?」
茶髪でショートの獣人リノンが紙束を後ろから覗き込み、そう推測する
「日記っていうより・・・日記に見せかけた報告書ってとこかしら」
巨乳エルフのシェリルが内容から正確に紙束の意味を推測する
言われてみれば確かにその通り、誰かを追い続け、行動を監視していたかのような内容だった
ちょっといいかしら?と声をかけ、シェリルは静かに内容を読み進めていく
「簡単に言うなら・・・どっかの貴族の坊ちゃんを暗殺するまでの話みたいだけど・・・」
含みがあるような言葉を使うシェリルに、全員が違和感を覚える
「だけど、ってことは続きがあるんだね?」
緑の髪の毛をポニーテールにした女性、ノアが確認の意味を込めて言葉にする
コクンと頷いたシェリルが、あるページを開いて全員に見えるように机に紙束を置いた
それを全員が覗き込むようにして、内容を確認する
そこには、つい最近書き足されたような新しい書き込みがあった
「ライアン=ローレンス・・・」
そしてその文章は最後にサインが入れられていた、ライアン=ローレンスと
「・・・行こう」
ぐっと力を込めるように、睨むように、「彼」から聞いた、会ったことも無い「彼」の娘を思い出して言う
そして彼女がどこにいるかを、彼から聞いた話を思い出す
「光輝?」
アイシャは疑問の声をあげる
この内容が真実であったなら、これはもはや彼らだけでなんとかなるレベルではない
自分たちだけで動くべきではない
光輝もそれはわかっているはずだ
わかっているはずだからこそ、彼の発言にアイシャは疑問を感じてしまった
勝手に行けば、待っているのは恐らく「死」
それでもなお、光輝は言葉を続けた
「行こう
ヤツは、ライアン=ローレンスはきっとそこに来る」
目指すは学園都市・魔法学園
光輝は死ぬかもしれないと思っていて、それでもなぜか、自分が行かなければならないと思ってしまった
それが勇者としての彼の思いなのか、それとも勇者召喚という魔法により強制されているものなのか
それを知っているものは、この場にはいなかった
――――――――――
ある暗殺者の報告書より
~一部抜粋~
某月某日
我々はエドワードを追ってある遺跡に入り込んだ
中は不思議な金属でできており、扉一つとっても見たことも無い構造をしている
残念ながらそれらはほとんどが壊されており、かつてどうやって扉としての機能を担っていたのかは謎だ
エドワードは遺跡の最奥部らしき場所にて立ち止まっていた
幸いにして、まるで監視するために作られたような横穴が多かったため、近づくことこそ出来なかったが監視するには十分すぎた
最奥部にあった巨大な鉄製らしき扉を見上げ、エドワードも珍しく驚いていた様子
今までは警戒心が強く、僅かな違和感を感じられただけで察知され、悉く任務に失敗してきた
今こそ千載一遇のチャンスかもしれない
だがしかし、私はすぐには動かなかった
エドワードまではまだ距離がありすぎる
この距離ではバトルマスターの職業にあるヤツには気づかれてしまう
悔しい話だがヤツと正面から戦っては勝ち目が無い
なにやら扉を開けようとしている様子だし、もう少し様子を見るべきだと判断した
もし扉を開けられれば、扉の影まで近寄ろう
奥が続いていれば同じことを繰り返すだけ
奥が無く、宝物庫のような場所であったなら、宝を抱えて両腕が塞がっているヤツが出てきた瞬間を狙えばいい
もし扉が開かなくとも、引き返してきたところを狙えばいい
そう考えを巡らせていると、扉が開いた
巨大な鉄扉は不可思議なことに、真ん中から分かれて左右、それも真横にずれていく
奥にでも、手前にでもなく、真横に、だ
引き戸というものは珍しいが、無いわけではない
あんな巨大な鉄製の扉が横に進むなど、正直言って信じられなかった
しかしそんなことを考えている暇はない、私は全員に指示をし、扉まで詰めさせる
私が中を確認しようと、顔だけを覗かせた
中は扉の大きさからは信じられないほどに、狭い空間だった
中央には鉄製の寝台のようなものが一つあるだけで、人間4人も入れば狭く感じるような場所だ
しかしその光景は異様の一言
そこかしこから四角い光が溢れ、見たことも無い装置の数々がところ狭しと並んでいる
狭い意外のことに関して、私にはあの部屋の異様さを説明することができない
よく見れば、鉄製の扉は2~3人が並んで入れる程度しか開いていないことに気づく
当然それだけ狭い部屋ならば、ヤツとの距離はかなり近い
いける
そう思った私は、強力な毒が塗られ、刀身自体が毒素を持つという特殊なナイフを投げた
狙い違わず、室内の光景に呆気にとられているエドワードの脇腹に突き刺さり、ヤツに致命傷を与えた
この毒は即効性こそ無いがm解毒するのに特殊で時間のかかる治療法をしなければならない
殺った
私はそう思った
放っておいても死ぬだろうが、念には念を
実際に死ぬところを見るために、部下にトドメをさすように命じ、部下が室内に入ろうとした瞬間だった
突然意味のわからない言葉らしき音が響き渡り、赤い光が点滅を繰り返す
何かがまずいと気づいたときには、もう手遅れだった
光が走り、部下の体を通過した、その先にいた私の右腕も通過していった
ゴトリ、と音がしたときにやっと、自分の腕が無くなっていることに気づいた
当然、私の前にいた部下は全員、真っ二つに体を引き裂かれて絶命していた
それと同時に、鉄の扉が一瞬で閉ざされる
私には、もうどうすることもできなかった
しかし私の投げた毒ナイフは、確実にやつの命を蝕む
碌に治療もできないこの場所では、ヤツはただ死を待つことしかできないだろう
しかし依頼主との契約は、死体を持ち帰ること
死んだだろうという報告はできても、これでは契約違反だ
片腕も失ってしまったことだし、私はこれで引退だろう
暗殺者の引退など、碌な生活ができなさそうではあるが、精々殺されないように気をつけよう・・・
~走り書き~
その部屋は再生と進化の部屋だ
その部屋に入るためには万物の才能が必要になる
その部屋に入りさえすれば、万物の才能を手に入れられる
あんたの望みは万物の才能だろう?
俺に協力するならその部屋で万物の才能をくれてやる
魔法学園を攻め落とす、それに協力するならあんたに万物の才能を約束してやるぜ?
協力するなら一緒に置いてあった薬を飲み込みな
ライアン=ローレンス
――――――――――
かつて屋敷の主だった男は、迷うことなく薬を飲み込んだという
そしてライアン=ローレンスは再び彼の前に現れ、彼の配下に同じ薬を飲ませ、どこへともなく消えたという
時がくれば、呼び寄せると言い残して
しかし彼は、その呼び掛けを聞くこと無く、死んでいった・・・
はい、というわけでした
長々とお付き合いいただきありがとうございます
エド君、こんな殺され方してたわけです
だから豚さんは自分が殺したと(直接じゃないけど)勘違いしていたわけです
次回はこの後、残り少ない時間の中でこの部屋で何をしていたかのお話になる予定です
今後ともソウケンをよろしくお願いいたします
※注
隻腕になってしまった暗殺者の方は二度と出てきません