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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第六章「収束」
80/96

閑話・魔物という存在2

なんとか本日中に2話投稿できました


勢いで書いたせいもあって、5000文字ちょいという長い文章です


誤字脱字多いかと思いますので、連絡いただけたら早めに修正させていただきますので、報告いただければと思います


それではどうぞお読みください

20XX年


某研究所



――――――――――



「GYAOOOOO!!」


「GURUAAAAA!!」


ドーム状の空間、実験室と言うには巨大な空間で、怪物と呼ぶに相応しい二体の存在が咆哮をあげていた


気の弱い人間であったなら、その咆哮だけでも吹き飛んでしまいそうな咆哮

いや、実際に吹き飛んでしまうのだろう、強力な咆哮と吐き出す空気によって、風となって二体の周囲に吹き荒れている

しかしその場に吹き飛ぶほど脆弱な存在は立っていなかった

いるのは巨大な肉体と圧倒的な質量を持つ二体の怪物だけだったのだから


青い肌の色をした巨人と、ドラゴンとしか呼べない姿をした蛇


ドラゴンに向かって、巨人は猛然と突進していった



――――――――――



「ふは、ふはははは!

すごいぞ!これはすごいぞキミぃ!」


質のいいスーツを着た小太りの男がそう言っている

すぐそばにいる研究員らしき男に向けて言ったようだが、その顔は怪物を映し出しているモニターに釘付けだ


子供のようにはしゃぐその姿を見て、研究員の男はにやにやとした顔をしている


「そうでしょうそうでしょう!

ドラゴンはもちろんですが、巨人もあれだけで戦車と戦えるような怪物ですからね」


モニターに映し出された光景を見て、二人はそう会話していた


映し出されていたのは、巨人がドラゴンに突進してくシーンだったのだが、その光景は異様の一言だろう

その巨体からは想像しがたいほどに早い速度で突っ込んでいく姿は、まるでトラックが時速100キロで突っ込んでいくかのようだった

普通であれば、頑強に作ったコンクリートの壁でさえも壊していきそうな力強さが見ただけでわかる


しかし、その突進をドラゴンは真っ向から受け止めたのだった

頭突きをするかのように頭を低く構え、体長に比べるといささか短い四肢を地面に固定し、蛇のような体を複雑にくねらせる

その姿をよく観察すれば、衝撃を体全体に分散させつつ、後方の尻尾周辺をバネのように撓らせ、衝撃を吸収させるようにしているのがわかる

ただの力任せではなく、一定レベル以上の知能を保有していることを示すような行動だった


ズンっとまさにトラックが衝突したような音を出し、二体の怪物はぶつかりあう


しかし、全力で攻撃したはずの巨人はドラゴンを吹き飛ばせなかったことに違和感を感じたらしい

すぐにその場を離れようとするが、すでにドラゴンは動き始めていた


体全体をしならせ、バネのようにした体後半部分を一気に伸ばし、巨人をその場から大きく吹き飛ばす

巨人はそれだけでダメージになるようなことはないが、踏ん張り続けることはできずに若干浮きながら後方に離れることになった

巨人はその体躯に見合うだけの重量を持っているはずなのだが、浮きながら吹き飛ぶという感じたことのない体験にうろたえてしまう

なんとか転ぶこともなく着地こそしたが、その後どうすればいいかわからず、一瞬硬直してしまっていた


その瞬間をドラゴンは逃すことはなかった


ドラゴンの口内が一瞬白く光ったかと思えば、次の瞬間には爆発したかのように火炎が吐き出される

火炎放射器のようなそれは、爆発という勢いもあって一瞬で巨人に迫っていく

人間であれば、その光景に恐怖を覚えたのかもしれないが、巨人は巨人で怪物であった


巨人は避けられないと判断したのか、避けようとする素振りさえ見せない

むしろ自分から食らいに行くかのように、炎の波に向かって走り始める

両腕を前に出し、顔だけを庇うようにして突っ込んでいくその姿は、傍から見ればただの自殺行為だ


「おい!?死んでしまうぞ!?」


「ご安心ください」


モニターを見ていた小太りが叫ぶが、研究員は何も感じていないように言葉を返す


研究員が言ったとおり、モニターに映し出された巨人は無事だった


しかし「無事」ということは「無傷」という意味ではなく

単純に「死んではいない」という状態を指している


全身が焼け焦げ、特に顔を庇っていた両腕は真っ黒になっており、もはや使い物にはならないだろう

体も所々が黒く炭化しており、もはや巨人は戦いが終わっても生き残ることは不可能と思えた

普通であるならばそこで逃げるか大人しくなりそうなものだが、巨人は「怪物」だった


炎を抜けた巨人は、一直線にドラゴンに向かっていく

トラックの突進のような速度を保ったまま、むしろ一度目よりも早くなっているかのような速度で突進していく

ドラゴンは再び頭を低く構え、一度目と同じように迎撃しようとするが


「GARUAAA!!」


ドラゴンの目の前で止まった巨人は、一瞬しゃがみ込むように膝を曲げ、豪快に下方向からドラゴンの顔にアッパーを打ち込む

突進に構えていたドラゴンはその動きに対応できず、もろに下顎からもらってしまい、頭から上方向に仰け反った

その一撃で終わることはなく、巨人は仰け反ったドラゴンの体を抱きしめるように掴み、体全体を使ってジャイアントスイングをかける


投げ飛ばされた方向には檻があり、いまだ開きっぱなしになっていた檻にドラゴンが勢いよくぶつかった


「おおぉ!巨人もすごいじゃないか!

これなら上の連中も納得するだろう!」


小太りは状況がわかっていないようで、その光景だけを見てそう言った


「そうでしょう!

これこそが怪物同士の戦い!相手が人間になれば、まさに伝説のように蹂躙するだけです!」


研究員もどうやら状況がわかっていないらしい、小太りにそう合の手を打つ


状況を正確に理解している周囲の研究員だけが、顔を引きつらせている


「まずい!ケージが破壊されたぞ!

拘束員!被害状況を連絡しろ!」


『こ、こちら拘束員A2番!

損傷は甚大!通用路の封鎖不可能です!至急緊急防壁を!

繰り返す!損傷は甚大!至急ぼうへ・・・ぎゃぁあああああ!!』


「・・・っ!!!」


二人の男が気づいたときには、事態は深刻なレベルへと急転していた

怪物を拘束していた檻は出入り口と一体化に近い状態で設置されており、それ自体が出口を封鎖するような形状になっていた

しかしその檻は、二体の怪物の戦闘に巻き込まれ、半壊してしまった

通路内への道ができてしまったのである


二体の怪物はどちらも巨体であり、少し道ができた程度では通れもしないはずの空間のはずだった

しかしドラゴンは、蛇のように細長い体をしている

その隙間から抜け出すには、十分すぎるほど広い穴ができてしまっていた


ある程度の知能を保持しているドラゴンは、形勢不利と見るや否やその穴から逃げ出してしまう

巨人同様、その巨体からは想像しがたいほどに素早い動きでドラゴンは動く

するりと抜けるように抜け出したドラゴンは、通路から研究所内へと移動を開始する




人間という今まで自分を苦しめてきた「害虫」を駆除しながら




「なっ、なななにをしている!

はやく!はやくなんとかしろ!」


小太りの男はやっと事態を理解したようで、顔中から汗をだらだら流し始める


「チッ!何をやっているんだ!

早く防壁を起動しろ!」


研究員の男は周囲の人間に指示をするが、いち早く状況を理解していた研究員達は対策を起動させていた


「緊急防壁起動しました!

・・・え!?」


「どうした!?」


「実験体J-11が・・・巨人が檻を破壊しました!」


「馬鹿な!」


周囲の研究員が叫び、全員が一斉にモニターを見る

そこには、檻を無理やり引き抜いたのだろう、檻が出入り口から少し離れた位置に放り捨てられ、巨人が十分に通れるほどの空間になっていた

そして巨人は、できた空間をゆっくりと歩き出す

本来なら拘束員と呼ばれる現場作業員達が、様々な機械を使ってその行動を停止させるはずだった

しかしその作業員達は、ドラゴンに食われ、あるいは焼き殺され、本来の仕事を行うことは無かった


「巨人の力が予想していたより強い・・・

防壁は起動しているか?」


「問題ありません、区画隔離は完璧です

このまま二体が潰しあってくれれば・・・えっ!?」


「どうした?」


「二体の実験体が合流したんですが・・・これは・・・」


「モニターを出せ!」


ブンッという音とともに、モニターに怪物のいる場所が映し出される


「・・・馬鹿な・・・っ!」


そこで見た光景は、彼らとってありえない事だった

研究段階の怪物達は、幅はあるが多少の知能を保持している

しかしそれは、本能によって動くことが前提となっており、基本それらは野蛮で動物に近い存在なのだ


しかしその二体は、今明らかに人間並みの、少なくとも動物以上の知能を持って行動をしていた


その行動とは「協力」だ


研究員達は二体が出会った瞬間、再び潰し合いを再開すると予想していた

それが怪物である彼らの本能であるはずだから


しかし怪物は、潰し合うことなどせず、お互いの力を合わせて一つの行動をしようとしていた


その行動は、二体の力を合わせて防壁を無理矢理持ち上げる、という行為だった


「まずいっ!防壁が浮き始めてる!」


「拘束員はどうした!?」


「ダメです!防壁起動と同時に非難命令が出てます!

拘束員は一人も残っていません!」


「くそっ!所長に連絡しろ!急げ!」


最後の台詞が出た瞬間、弾かれたように研究員の男が立ち上がった


「貴様!それがどういうことかわかってるのか!?

この計画が!ここまで成長したこの計画が全て台無しになるんだぞ!?」


研究員は男の襟を掴み、脅すようにして言葉を放つ


「もうそんな場合じゃないだろう!

下手をすれば研究所どころか世界中の危機なんだぞ!?

軍隊でさえ倒すのに犠牲が必要な生物兵器が、世界中に解き放たれるかもしれないんだぞ!?」


「馬鹿を言うな!あいつらにそんな知能など無い!

大体二体程度が世に出たところで、始末することなど難しいことではないだろう!」


「だったらモニターを見てみろ!

あいつらがどこに向かってるのか!その目で確認してみろ!」


瞬間、防壁が完全に持ち上げられた光景がモニターに映し出される

巨人が降りてこようとする防壁を支え続け、ドラゴンがその体を完全に室内へと進ませる


その先に見える光景は、この先の地獄を容易に想像させる場所だった


「あ・・・」


「ひ・・・私は知らん!知らんぞ!?」


小太りの男はその瞬間、尻尾を巻いて逃げ出した

自分は何も見ていない、何も知らない、研究所になど来ていない、そう言い通すと心に決めて逃げ出した


「馬鹿な・・・あいつらにそんな知能があるわけが・・・」


「・・・所長に連絡します

おい、電話をつないでくれ」


胸倉を掴まれていた男は静かにそう言って、作業を続けた

周囲は静寂に包まれ、今起こっている緊急事態が嘘のように静まり返っていた


やがて連絡が取れたらしい男は、おそらくは所長なのだろう連絡先の男と会話をしはじめる


「ふひ・・・あはは・・・終わりだ・・・」


研究員の男は顔を天井に向け、足から力が抜けたように膝を地面についた


「ははは・・・何もかも・・・終わった・・・」


「はい、そうです・・・ええ、お願いします

・・・ええ、ですが今はとても会話できる状態では・・・」


突然パンッという乾いた音が周囲に響く


「ぐっ・・・がっ・・・」


それが銃を撃った音だと気づいているのは、撃った人物と撃たれた人物だけであった


「な・・・なにを・・・」


全てを言い終えることなく、撃たれた男性は力尽きていった


「あははははは・・・終わりなんだよ

そうさ、俺がどれだけ偉大で素晴らしい研究者だったか、世界が終わることで知るんだ」


ふらふらと立ち上がる研究員の男の手には、拳銃が握られていた


「あはははははは、とりあえずお前らは全員死んでおけよ

もう必要ないからな」


パンパンパンッ


乾いた音が連続で鳴り響く

男が発砲し、音が鳴るたびに一人、また一人と倒れていった

やがて誰もいなくなった研究室で、男はパネルの操作を始める


「アハハハハハ、子供はいつか旅立つもんだ

悪かったなぁ、今まで縛っちまって

でもそれも今日で終わりだ・・・

自由に生きな、俺の自慢の息子ども・・・ヒヒヒ」


パネルの操作が完了するたび、モニターに見える画面で変化が起こっていった



――――――――――



巨人とドラゴンがいる部屋には無数の檻が設置されていた


小型のものから大型のものまで、様々なサイズの檻が存在する

その中にはやはり、それぞれのサイズにあった様々な姿の怪物達が存在している


それらはまさに怪物、伝説やゲームにしかいないような、進化の道筋からはありえない生命体ばかりが檻の中に生きていた


ドラゴンと巨人が檻を破壊しようと、近くの檻に体を向けたときにそれは起こった


何をするでもなく、突然檻が開き始め、中で拘束具を身に纏っていた怪物達が開放されはじめる


すぐに拘束具もその機能を停止したらしく、様々な形の拘束具が怪物達から外れていく


全ての怪物が開放され、全ての怪物が歓喜の咆哮を挙げる


いつの間にか緊急防壁は解除され、全ての通路が通れるようになっている


怪物達はこの日、開放された



――――――――――



「ヒヒヒ、アヒャーッハッハッハッハ!」



狂った研究員の男は、研究所が爆発して死ぬまで、笑い続けていた

魔物という存在がどうしているのか?というお話です


この説明だけで聡い読者の皆様ならば、世界観というか背景が見て取れるかと思いますが、こういう設定なんです


話中に出てくる実験体J-11のJはジャイアントのJです、ジャイアントの11体目というだけで深い意味は特にありません


今後もこういった話に焦点を合わせていく予定です

つまらん!お前の話はつまらん!!

という意見が飛んでくることを覚悟しつつ、感想や評価など遠慮せずに言っていただければと思います

直せる部分は直させていただきますのでよろしくお願いいたします


今後ともソウケンをよろしくお願いいたします


みなさま良いお年を!

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