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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第五章「アリサ編」
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事実と協力

いつもお読みいただきありがとうございます

今回のお話は説明回というか補足みたいな内容になっています


内容が薄いのであまり面白い内容ではありませんが、読んでいただければ幸いでございます


本編をどうぞ

魔法学園の一室


いつもの校長室には、いつも通りの偉い人が座りそうな椅子

その椅子にいつも通り座り、いつも通り偉そうな服を着ている人物がいた


ファルケンこと、現学園長その人である


いつもと違うのは、その場にファルケン以外の人物がいたことであろうか


もちろん教師ではないし、以前お茶を入れてくれたライラという名の女性教師でもない


炎鬼族を束ねる族長、いや族長であったというのが正しい人物であった


「なるほどな、そんなことになっておったとは」


「済まない、我々から話すことはできなかった事情を理解してもらえると助かる」


「わかっておるとも、そんな呪いであるならば一族を人質に取られているも同然じゃったろうしのぅ」


「助かる」


二人は炎鬼族の集落で起こったことを話し合っていたようだった


アリサ達はあの後すぐに学園に戻った

もちろん族長達も一緒にだ

学園に戻ってすぐに学園長に今回の出来事を報告し、休むために解散している

今頃は自分たちの部屋で寝ていることだろう

今更だがこの学園は全寮制なので、全員が学園内にいるはずだ


族長だけが詳しく話しをしたいということで、こうやって学園長と話をしている


「辛かったとは思う、そしてそこまでの覚悟を持って人間に尽くしてくれたこと

ワシ一人では足らんだろうが、礼を言わせていただこうかの

ありがとう」


「・・・十分さ、いつかはこうなっていたんだ

それだけでも十分、我々は救われるよ」


しんみりとした空気が包む

しかしそれだけで会話を終わらせるために、わざわざ二人になったわけではなかった


「確認させていただくが、今生き残っている者達は平気なんじゃな?」


「あぁ、奥技を習得している者達は呪いに縛られていないから大丈夫だ

とはいえ炎鬼族も我々の集落にいたものが全てでは無い、どこか別の場所に炎鬼族の集落があったかもしれんから、そこまで大丈夫かどうかはわからん」


「いや、それだけわかれば十分じゃろう

少なくともお主らに関しては学園が責任を持とう、安心してもらって大丈夫じゃ」


「すまない、助かる」


現在学園に来ている炎鬼族はマキアと族長を含めて五人

全員奥技を習得し、呪いの束縛を焼き尽くした者達ばかりだ

奥技を習得している人間は合計で六人いたのだが、一人が運悪く命を落としている


「それで確認したいことが他にもあるんじゃが、いいかのぅ?」


「ああ、聞きたいことはわかっているつもりだ」


そうか、と返して学園長はお茶を一口飲む

少し間をおいてから、学園町はゆっくりと話し始めた


「去年の入学試験の時、この国が魔族に包囲されるという事件があったんじゃが・・・知っておるじゃろう?」


「・・・ああ、我々が手引きをしたからな」


少し考えれば、あの事件はおかしかった

学園を抱える国があるこの都市は、世界中で比較すれば大きい方ではない

とは言ってもただでさえ広大な面積の学園を内包する都市である以上、その面積は決して狭くは無い


固体能力が高く、人間よりも明らかに少ない人数で包囲を可能とする魔族であったとしても、その数は十人や二十人で済むほど簡単ではないのだ

しかしそれなりの人数が動員されたにしては、あまりにも突然出現したようにしか感じられないほどに魔族は現れた

魔族であっても腹は減るし、睡眠をとる必要だってある、なんなら性欲だってある

そういった準備は多少はしてあったであろうが、それだけの人数を動かすためにはどうにかして調達する必要がある

しかし魔族という種族は忌み嫌われるものがほとんどであり、人間達が彼らに食料や休憩場所を提供するとは考えにくい


目立って何かをしたわけでも、長時間いたわけでも無いが、どこかから最低でも食料は調達していないと不可能だと思える内容だったのだ

それを支援していたのが、炎鬼族だった


「魔族も呪いを受けている、ということか?」


「間違いないだろうな、炎鬼族に服従の命令を出せるくらいの権限は与えられていたようだ」


「・・・ふむ、厄介じゃのぉ、お主は大丈夫だったのか?」


「呪いを消せていることがバレるのはまずかったからな、目的もわかっていたから従順なフリはしたが、実際には何の影響もない」


「そうか、なら他の者も大丈夫そうじゃな」


うむ、と族長が答える

それに大して学園長はさらに質問を続けた


「もう一つ、魔族はどうやって移動したんじゃ?

我々から見ると突然現れて、突然消えたようにしか見えんのじゃが」


「移動用の魔法陣があった、事が起こったときに最初に潰しておいたから今は使えんがな」


「なるほどのぅ・・・実用に耐えうるものが存在しておることのほうが驚きじゃな」


この世界において、移動魔法というのは学園長が言った言葉の通り、ほとんど実用化されていない

というのも、この世界の魔法、厳密に言うなら魔力というものは、ある種の物質であるとされている

魔力自体が何かに変化することはできても、魔力を使って別の場所に瞬間移動ということは不可能だとされている

瞬間移動に見えるほどの高速移動や、一時的に自分の分身のようなものを作り出すことはできるが、完全な瞬間移動というのは実用化されていない

一応あることにはある、それが空間魔法「倉庫アーカイブ」に代表されるような空間魔法だ

しかしこれは命あるものは入ることができないし、厳密に瞬間移動という原理を使っているわけではない、使い手も少ないので研究も進んでいない


例外中の例外として、以前にグラハルトが一度だけ使った魔法が、まさにその瞬間移動の魔法だった

しかし現代において、その魔法はすでに失伝魔法ロスト・ミスティックとなっており、グラハルト以外で使える人間は存在しない

ちなみにグラハルトはその事実を知らないが、使い方がめんどくさいと思っているので滅多に使わない


「最後に一つだけ聞かせてほしい、目的はなんじゃったんじゃ?」


魔族はあの時、まるで森に行けと言うように、その方向にだけ誰もいない配置をしていた

その方向に罠を張っている、というのなら納得もできるが、結果として何も無かったことが(あるにはあったが魔族との関係が薄い)学園長には腑に落ちなかった


「アリサさんだ、彼女を対象にするのが目的だったらしい」


「対象というのは?」


「ライアンが復活するためには、強力な力を持った存在に初代の遺産を持たせる必要があった

彼女がそれだけの力を持っている、ということがわかれば、遺産は自然とアリサさんの下へ来る

結果的には蒼犬というアリサさんより強力な存在が現れて、しかも墓石を通して蒼犬が選定されたのですぐに退いたようだがな

もし蒼犬が行っていなかったら、もし墓石にアリサさんが触れていなかったら、魔族が遺産を持って侵攻していただろう」


つまり結果だけを見れば、グラハルトがあの時魔族への牽制という意味であった門の警備という役割を無視して、森の中へ向かっていったのは正解だったということだ

もちろん学園と都市にとって、という意味であって、長期的な意味では失敗だったのかもしれないが


彼が「正義が鎧を着ている」と呼ばれる理由がつくづくわかるような事の推移だったようだ


「・・・なぜあのタイミングだったんじゃ?」


「悪魔ほどではないが、魔族も万物の才能には干渉できない、できないというほどではないが、邪魔が入るんだ

もっと以前、それこそアリサさんと蒼犬が共に旅をしていたときは、完全にと言っていいほど干渉できなかっただろうな」


「ふむ?あのタイミングならそれが可能であったと?」


「万物の才能に干渉できるのは、人間と、万物の才能に認められた存在だけだ

さらに言えばあの時なら多くの人間が集まる、悪魔ならともかく、そういう状況なら魔族としては干渉しやすくなるんだ

ついでに言えば、万物の才能など関係なく、単純に人間を殺したいというようなヤツらも多くいただろうな

万物の才能を直接の目的にしていなければ、その効果も限りなく低下する」


「なるほどのぅ・・・最初からアリサを狙っておったということか」


「アリサさんに限らず、歴代の万物の才能がそうだったさ

今回がたまたま好都合だっただけだ」


ふむ、と一息つくようにして、学園長は再びお茶を飲む

お茶はもう冷めているようで、飲んだあとで少し残念そうな顔をしていた


「なるほどのぅ・・・

ということはこの学園もそろそろなのかのぅ・・・」


「我々がこうなった以上、遠からずライアンは本格的に動き出すはずだ

この学園がどういう事態に陥るかは、あなたのほうがわかっているでしょう?」


「うむ・・・」


学園長は椅子を回し、背後の壁にある窓から外を眺める

外はすでに赤く染まり、夕暮れ時のようだった

黄金色に輝く太陽と雲が流れる空は、どこか哀愁を感じさせた


「協力してもらえると助かるのぅ」


「恩もある、謝罪の意味もある、どんなことでもやらせてもらうさ」


「そうか、よろしく頼む」


「こちらこそ、よろしく頼む」


二人は窓の外に流れる雲を見つめ、黄昏の時を見つづけた

というわけで、入学試験時の不自然な部分の説明でした

地理的な描写がほとんど無いので、あまりイメージがわかないかと思いますがこんな理由があったんですよ~という補足です


学園の伏線が少し出ましたが、ライアンが創立したものである以上無関係であるはずが無いのは読者の皆様ならわかっていたかと思います

なので補足と確認程度の意味のお話でした


今後ともソウケンをよろしくお願いします

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