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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第五章「アリサ編」
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炎鬼族の掟4

この話で炎鬼族の掟編は終了です


少し駆け足でしたが、終わりなのです


あまりギャグがでませんでした


物足りないかもしれませんが、本編をどうぞ

昔の話


マキアがまだ15歳、冒険者だったころの話


彼はその日、ある依頼を受けていた

冒険者ギルドを通して受注した依頼で、そのころにはすでに知る人ぞ知る冒険者だったマキアに、名指しで指名された依頼だった

もちろんマキアだけではなく、マキア以外にも同レベルかそれ以上の人物達も名指しされていた

ベテランクラスが数名必要になるような、難しい依頼だとは思っていたが、結果は散々なものだった


内容は討伐

それも暴走した炎の精霊を討伐するというもの

特別討伐対象に指定されている存在で、階級が指定されていない最低限の存在だった

もちろん特別討伐対象に指定されている時点で、その強さは通常の魔物とは比べ物にならない

しかしこれだけベテランが揃っていれば、簡単ではないがなんとかなるだろうと思っていた


結果は全滅


炎鬼族という特性があったから、マキアだけは生き残ることができた

だがこの精霊は特殊な個体であったようで、本体は火そのものであるが、召喚術を使うことができた

呼び出される存在は、リビングアーマーなどと呼ばれる動く鎧だった

しかも様々な戦闘スタイルを持つ者たちで、騎士風のものや剣士風のもの、槍や弓、魔法を使うタイプまで存在した

その数も多く、まるで小隊並みの数を相手にすることになったのだ

精霊の膨大な魔力量もあって、倒しても倒しても一向に減らない鎧の軍団

さらには魔法タイプは火以外の属性も使ってくるため、マキアだけでは死ぬ可能性のほうが高い

このままではすぐにマキアも死んでしまうだろう、という状況だった


状況が変わったのは、それからすぐだった


死を覚悟し、せめてどうにかして本体に一矢報いようと、突撃を決めた瞬間だった

自分と鎧の軍団、その奥にいる炎の精霊、さらにその向こう側に光が見えた

その光は紅く輝いたかと思うと、唐突に爆発した

爆発は炎の雪崩となり、炎の精霊も、鎧の軍団も、マキア自身さえも飲み込んで全てを焼き尽くしていく


熱い


マキアはそう感じた

炎鬼族である自分が、熱いと感じる


これはヤバい


本能がそう告げた

これに巻き込まれたら自分は死ぬ

理由など何もない、ただそう感じた

今日まで自分を生かし続けてくれた、本能とでも言うべき直感がそう告げている


死にたくない


死を覚悟した後であったというのに、自分の本能はそう感じている

ここで死ぬなんて嫌だ

まだ自分は何も成していない、一人前と認められてさえいない、ここで死ぬ自分を、自分自身が一番許せない


なんでもいい、生きられるなら、他の事はどうでもいい

目の前の死という存在に抵抗できるなら、なんでもいいから助けてほしい




燃やせ




前のほうから、そんな声が聞こえた気がした




死を、燃やせ




炎の精霊がそう言っているような気がした




目を向けたときには、炎の雪崩は眼前に広がっていた



――――――――――



「そうだ、あの時はこうやったんだ」


父親の奥技を纏った拳を片手で受け止め、マキアは呟く


「そうか、これが奥技だったんだ」


マキアはすでに、自身の体を炎と化している状態ではなかった

目の前の父親と同じく、人間の肉体が炎を纏っている状態になっていた


「燃やす、ただそれだけしか存在しない力、だからこそ強い」


父親は拳を放った体勢のまま、自分の息子を見る

表情こそ変化していないが、その目には驚きの感情が現れている


「・・・理解できたか?」


マキアは父親の目を見て、返事をする


「理解はしていたみたいだ、忘れていただけさ」


「ならば、続きだ」


そう言って、父親は手を引き、一旦後ろに下がる


「その力で、俺を倒せ、それで終わりだ」


真剣な表情の父親が言った

その表情は、自信に満ちている

その自信は、自分が勝つことを信じているのでは無いのだろう

目の前にいる息子が、自分に勝つことを信じている、という表情だった


「親父、俺は行くよ」


マキアは拳を握り締め、攻撃の準備をする


「・・・ああ、行ってこい、お前はもう自由だ」


父親は何も構えず、全てを受け入れるように立っていた


「・・・ありがとよ、馬鹿親父・・・」


マキアは思い切り飛び出し、全力で拳を振るう

何の構えもしていない父親に、思い切りその拳をぶつける

父親は、何の抵抗もなく、そのまま吹き飛んだ


「・・・行け、・・・自慢の馬鹿息子・・・」


火は自由だ

そう言えば誰もが首を傾げるだろう

確かに火は、燃える場所が無ければ存在することができない

だが火を掴むことは、誰にもできない

ゆらゆらと揺れるように存在し、何者にも屈することなく、誰もその揺らぎを止めることはできない

遮ることはできる、消すこともできる

だがそれは、支配することが絶対にできない

ただそこに、自由気ままに、自らが出す上昇気流の力によって、ゆらゆらと揺れているだけ

火そのものである炎鬼族、その行動を止めることは、例え親であってもできない


奥技伝承の儀式はこうして終わった



――――――――――



「と、言うわけで!お前にこれをやる!」


場所は変わり、復活した族長とマキアは一家のテントに戻っていた

二人以外は誰もいない

今夜は一人前になれた祝いの宴を開くということになり、全員準備に忙しくしている


二人しかいないテントの中、木製のテーブルの上には酒瓶と二つのガラス製コップ

そして本が一冊置いてあった


「何が「と、言うわけで!」だこのクソ親父、全身火傷してんぞこの野郎」


「お前が未熟なのが悪い!」


「ほぉーう、言うじゃないか、もっかいぶっ飛ばすぞ」


「ふはは!・・・まぁ今日くらいはやめよう、たまには静かに飲むのもいいだろ?」


「・・・ふん、今日だけだぞ」


族長は酒瓶を傾け、二つのコップに酒を注いでいく

片方をマキアに渡し、自分も手に持つ

どちらからともなく、コップをぶつけ合い、チンッという小気味良い音をたてる


「「乾杯」」


酒を飲みあい、親子の静かな会話が始まった


「なぁ、親父・・・これって」


本のことを聞こうとしたマキアだったが、族長は人差し指をたて、黙るように伝えてきた


「いい酒だろう?俺のとっておきだぞ」


さりげなく話題を切り替え、あらかじめ書いておいたのだろう、文字が書いてある紙を渡した

その姿に違和感を感じながら、マキアは文字を読む


「・・・っ!?」


「騒ぐなよ?今日は静かにやりたい気分なんだ」


「親父・・・、そうだな、今日は付き合うぜ」


「・・・すぐに出たほうがいい、あまり長くはいられないんだろう?」


「ああ、そうだな・・・親父も気をつけろよ」


「ふん、これでも族長やってるんだ、そう簡単にはくたばらんさ」


二人の会話は、何かに緊張しているような雰囲気のまま、静かに宴の時まで続いた

マキアが笑いながら泣いていた、族長以外は誰も、その事実を知らない



――――――――――



マキアは手紙の内容を思い出す


『マキアへ

この本は今回のものとは別の奥技が記されている、必ず習得し、誰にもバレないようにすること

必要なときは必ず来る、アリサさんと一緒に行動していれば、その時はわかるはずだ


初代学園長のライアンが復活したようだ、我々は古き盟約に従い、彼の従者達に協力してきた

時期的なことを考えれば、そう遠くないうちに約束が果たされるはずだ

奥技を会得した者ならば大丈夫だが、そうでない者たちは恐らく何の抵抗もできんだろう

今日が最後かもしれんし、10年たっても大丈夫かもしれん

だが、お前は二度とここに来るな、罪は全て俺が受け持つ

それが族長としての、俺の最後の仕事だ


最後に

立派に成長してくれて良かった

お前は、俺の最高の息子だ

誇り高く、最後まで生きてくれ


父より』


「おーい、マキアー!」


宴の会場から、マキアを呼ぶ声が聞こえる

主役がいないなんてしまらないな、と思いながら、マキアは会場へと歩き出した


受け取った手紙は燃えていた


灰になった手紙は、空へと消えていく


火山から降る灰が、灰となった手紙と混ざって空で踊る




どれが手紙だったのか


それはもう、誰にもわからなくなっていた

ということで、マキア編は終了です


マキアがただ奥技を獲得した、というだけで終わりなのですが、伏線が出現してしまいました


なんとなく予想がつく方もいらっしゃると思いますが、予想通りの展開だと思います(笑)


今後ともソウケンをよろしくお願いいたします

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