炎鬼族の掟1
新たな連話スタートです
まずはマキア編!
あまり長くはなりませんが、馬鹿なのを全開で展開していく予定ですので、楽しんで読んでいただけたらと思います
それでは本編をどうぞ
「あぢぃ・・・」
バスカーが項垂れながら山道を歩いていた
バスカーだけではない、アリサも、レディも、グレイにアレックスも一緒に歩いている
先頭を馬鹿みたいに・・・間違いがあった、馬鹿が走り回っている
先頭にいるのはマキアだった
「獣人にこの暑さはつらそうですわね」
そう、暑いのだ
彼らが歩いているのは、山は山でも普通の山ではない
活火山の山道、しかも世界でも有数の巨大な火山の麓を歩いていたのだった
アリサ一行は多少なりとも暑さにより疲労しているが(馬鹿一人除く)、バスカーは一際だった
犬のように下を出して少しでも体温を下げようとしているし、汗も尋常ではないほど出ている
「ぜー・・・はー・・・あの野郎・・・覚えてやがれ・・・」
「気持ちはわかる・・・、わかるが、あいつが炎鬼族の時点で気づいてもよかったな」
バスカーがあんまりな発言をするが、グレイに窘められる
確かに炎鬼族は炎と熱を吸収できるという特性がある
で、ある以上は、その住処は自然とこういった場所に近くなるのは容易に想像できたはずだった
もちろん考えていなかったわけではないのだが、周囲の熱気は想像していた以上だった
「おぉーい!集落が見えたぞー!」
一人だけ元気な馬・・・いやマキアがそう声をあげ、だいぶ先のほうでぶんぶんと手を振っていた
「・・・あの野郎・・・死なす・・・」
「やめておけ・・・、ここでは勝ち目がない・・・気がする」
バスカーほどではないが、グレイも結構辛そうだった
暑すぎる熱気は、肉体よりも先に精神に影響を出していたようだ
――――――――――
「里帰りですか」
「そう里帰り、他のみんなはいいって言ってくれたんだけど、どうよ?」
「どうよも何も、みんな行くなら行くに決まっているでしょう」
時は少し遡り、魔法学園
その教室の一つで、これから講義が始まろうとしている少し前、所謂休憩時間というやつだった
その時間に、マキアがグレイに話しかける
「おっけー、そんじゃあとはアレックスだけか」
「あぁ、アレックスは聞く必要が無いでしょう」
「ん?なんで?」
「アリサがいるなら来ますよ」
「え、そうなの」
「そうなんです」
事実、その後一応話をしてみたが、1も2もなく即答で行くとの答えだった
恐るべきはグレイの洞察力なのか、アレックスの純愛なのか・・・
それから1週間後、遠征の申請を学園に提出し、馬車も使わず徒歩でマキアの里を目指して出発することになった
だが重大なことを今まで誰も確認していなかったことにグレイが気づき、あわてて確認する
「マキア、どこを目指して行けばいいんだ?」
「ん?言ってなかったっけ?」
「聞いてない、誰か聞いたか?」
この会話に、首を縦に振ったものはいなかった
「あれ?悪い悪い、まぁ目立つから別に言う必要も無いよ、あれだし」
そういってマキアはある方向を指差した
指の方向にあるのは山、そして山、その次に山、つまり山しか見えない方向だった
「・・・どれだよ」
誰が呟いたのか、全員が思っていることが言葉になった
「どれってあれだよ、あの火噴いてる山」
火を噴いている山、と聞いて全員が一瞬固まった
その山は霊峰とまで呼ばれる巨大な山で、今まさに活動をしている活火山だ
といっても何十年も噴火しておらず、学者の研究結果によると向こう100年は噴火しないであろうと言われている山だ
しかしその巨大さゆえ、魔法学園と、その学園の周囲に広がる都市からは、どこにいても見える、というほどに巨大な山である
一番最初に項垂れたのは、バスカーだった
「・・・最初に言ってくれ・・・マジで・・・」
――――――――――
ということがあって、彼らはマキアの里帰りという名前の、活火山ハイキングという危険行為を行っていた
道中魔物に遭遇こそしたものの、彼らにとって敵になるような魔物は出なかった
それも山に入るとピタッと出なくなったので、今では安心してハイキングを行っている
体調管理という別の危険要素は出てきたわけではあるが・・・
さすがにこの状況で野宿でもすれば、バスカーが脱水症状で死んでしまうと判断し、一行は早々に集落に到着するように移動していた
そして集落が見えたというマキアの言葉通り、集落が見える位置に全員が移動する
「あれが・・・」
「そ、あれが炎鬼族の集落、俺の故郷さ」
「すごいですわね・・・」
その場所は、異様とも言える光景だった
基本的にこの辺は、溶岩が固まったのであろう、周囲は黒い岩が転がり、斜面も基本的に灰色か黒色だ
だがその周辺だけが、まるで宝石をばら撒いたかのように色とりどりの空間だった
いや、実際に宝石なのだ
ばら撒いてはいないが、大小様々な宝石が各所に散りばめられている
色のついた水晶のようなものがあちこちから突き出し、それが山肌をくりぬいたような空間にびっしりと生えている
くりぬいた、と言ってもその奥行きは相当にあるのがよくわかる
貫通してどこかにつながっているのではないかと思えるほどに巨大な空間が広がっている
水晶が光を反射しているのか、一番奥にある祭壇のような場所まで、遠目でもはっきりとわかるほどに明るいのが印象的だった
「入り口なんてあってないようなもんだけど・・・
えーっとあった、外の人間はあそこを通ってもらうことになってる」
そう言って一行がその方向を見ると、確かに関所のような場所が存在した
存在したのだが、グレイが違和感を覚えてしまう
「マキア・・・あの道はなんだ?」
道があった
それは関所を通り、村の中へとつながっている
それは当然というか、普通はそうなっているのだから不思議ではない
不思議なのは、その反対側
道の反対側を目で追っていけば、真っ直ぐ向かった先にあるのは彼らがよく知るものが見えた
「なんだって、道に道以外の何かあるか?」
「うむ、聞き方が悪かった
あの道はどこに繋がっているんだ?」
グレイの発言に、全員がその道を見て、道の先を見て、その先にあるものを見た
「どこって・・・どこだろ、俺この道歩いたことないからわからん」
その先にあったものは
魔法学園だった
正確には魔法学園を抱える都市が薄っすらと見える
そして視力のいい者なら、その道が紆余曲折あったすえに、魔法学園へと繋がっているところまで見えたはずだろう
「てめぇ・・・まじで死なす・・・」
「うわぁ・・・遠回りしたっぽいですね」
「うん、一回死んでみるかねマキア君」
男性陣の物凄い殺気がマキアを襲う
「いやぁ・・・ははは・・・どうしたのカナー三人トモ、カオガコワイヨー?」
マキアがお約束という制裁を受けようとした・・・が
「待て!!!」
乱入者によって、お約束という何者にも破られてはいけない鉄の掟は破られてしまった
乱入者は上からマキアの前に着地する
着地する、と言うと少し語弊がある
炎の塊のようなものが二つ、目の前に降り立ったのだ
それはすぐに人のような形を作り上げ、男と女の一人づつが現れる
もちろん火のような姿ではなく、確かな肉体という物質となって
「ここは我々炎鬼族の聖域だ!下賤な人間どもよ!即刻立ち去るがいい!!」
男のほうが見た目どおり暑苦しい声でそう言ってくる
女のほうもアリサ達を睨み、今にも襲い掛かろうと構えている
アリサ達もとっさに構え、戦いが始まろうかとしたときだった
「お、二人とも久しぶりだな
元気してたか?」
「は?」
「え?」
目の前の二人に、マキアが軽く声をかけた
「若!若ではございませんか!!!」
「お帰りになったのですね若!お帰りなさいませ!!!」
二人の態度が急変したのだった
あまりの突然な態度の変化に、呆気に取られたアリサ達は、戦闘態勢のまま硬直してしまう
そして一言
「「「若!?」」」
「・・・バカ?」
最後の発言がアリサであったのは言うまでもない
若干ギャグパートっぽく進めていく予定です
私の感性と読者様の感性が合えばいいかなと思いますが、それを表現できるだけの才能が欲しい・・・
今後ともソウケンをよろしくお願いします