対話3
皆様いつも読んでいただきありがとうございます
この対話という連話は、話の確信をついていきます
この対話3においては、いきなり突拍子も無い展開が・・・っ!内容はまぁ見てからのお楽しみということでお願いします
ただいきなりな展開でございますので、愛想を尽かされるやもと非常にどきどきしながら投稿しております
それでも読んでいただけたなら、幸いでございます
それでは本編をどうぞ
「初代学園長ライアン=ローレンス」
何もない空間で、姿の見えない男が話す
「・・・俺を刺した男もそう名乗った」
姿は見えないが、なんとなくその辺にいる、というあたりを見ながらグラハルトが答えた
ただ漠然と「いる気がする」という感覚なのだが、恐らく間違ってはいないのだろう
「・・・あいつは何なんだ?」
「あいつは・・・万物の才能を持った人間だよ」
「・・・万物の才能・・・アリサと同じ能力か」
「そう、何があったかはわからないけど、目的はわかってる」
「・・・目的?」
「そのためだけに、彼はあの瞬間を待っていた
あの瞬間のためだけに、全てを賭けてじっと待っていたんだ」
言葉の直後
周囲の景色が激しいノイズ音を出しながら、砂嵐のように乱れる
だがそれもすぐに終わり、数秒後には新たな景色を映し出した
その景色は先ほどまでグラハルトがいた戦場だった
魔物達が何かに向かっていく
それを凄まじい勢いで殲滅していく一人の人間がいる
まるで先ほどまでのグラハルトがそこにいるかのように、剣を振るたびに衝撃波が発生し、魔物達を圧倒的な力で倒していく
「・・・これは?」
「今のライアンさ、「僕たち」の力を奪ったあとの・・・ね」
「・・・俺・・・「たち」・・・?」
「・・・ほとんど持っていかれちゃったよ、もう前と同じというわけにはいかない
おかげさまで何もできなくなったから、こうやって君と会話できるだけの余裕ができたわけだけど」
「・・・それは後で聞こう、・・・先に目的の話だ」
「そうだったね、やつの目的だ」
再びノイズが走り、ライアンの姿をより近くで見るような位置に変わる
黒目黒髪で、西洋系と東洋系のいいとこ取りをしたような整った顔立ち
髪は肩まで伸ばしているが、さらさらの髪は不潔な印象を感じない
グラハルトの素顔とそっくりなその男が、グラハルトが絶対にしない、歓喜の表情で笑っていた
「学園にあった墓石は、選ぶための道具なんだ」
「・・・選ぶ?」
「力を奪う相手を選ぶための道具だったのさ」
「・・・ブローチもか?」
「役目は違う、でもあれも初代の作った道具の一つだね
実際には他にも色々ある、指輪・ピアスにネックレスなんてのもある
墓石にしたってあれ一個だけじゃない、同じような道具が世界中にあるよ」
「・・・役目というのは?」
「選ばれた相手の手に渡ったら、力を吸収し、仕組みを理解するんだ
ちょっとづつ、気づかないくらい少しづつ・・・吸収っていうより学習とか複写に近いかな?」
「・・・コピーか」
「こぴー?まぁ多分それだと思う
そしてある一定以上を吸収したら、本体が現れて一気に全てを奪い取るんだ」
「・・・確かにそうだったな」
姿の見えない男は、そこで一旦言葉を区切り、間を空ける
グラハルトは気になったことを、その間で聞いてみることにした
「・・・力を求めた理由はなんだ?」
男はすぐには答えない
たっぷり時間を空けてから、続きの言葉を言った
「魔王を復活させるためさ」
「・・・魔王?」
「そう、魔王
君が出会った光輝君だったっけ?彼が呼び出された最大の原因だね」
風景は再び入れ替わる
しかし今度はノイズが走らず、端の方から流れるように変化していく
そして映し出された光景は、限りなく透明な水晶が並ぶ洞窟の中だった
大小様々な水晶がところ狭しと並び、洞窟の中とは思えないほど大きな空間を埋め尽くしている
平坦な場所など一つもなく、剣山のようにとがった水晶の先端が、全て天に向かって伸びている
その壁際の一画
明らかに他のものより巨大な水晶の塊が存在した
そしてその中心
水晶の中
そこには一人の女性がいた
「・・・ここは?」
「さぁ?世界のどこかにはあると思うけど、どこにあるかは全くわからないよ」
「・・・あいつは?」
「あれが魔王だよ、と言っても300年前のだけどね
今表立って暴れてる魔王とは全くの別人、何の関係も無いよ」
「・・・封印されているのか?」
「その通り、封印っていうか仮死状態っていうか?
少なくともあの中にいる限りは何もできない
何も無ければ、このまま未来永劫、ずっとここにただ存在するだけだよ」
「・・・何かがライアンということか」
「そうだね、彼と彼女の間に何があったかはわからない
でもライアンは彼女を復活させようとしているし、そのための力も手に入れた」
「・・・一つ聞いてもいいか?」
「どうぞ?僕に答えられることならなんでも」
「・・・万物の才能を持ってして・・・解除できなかったのか?」
「・・・・・・難しい質問だ
時間さえかければ可能だったんじゃないかとは思う、でもそれは、少なくとも一人の人間が生きる時間ではとてもじゃないが足りなかったと思う
万物の才能がいくら優秀でも、不老不死に至ることは不可能だからね、優秀だったがゆえに、自分が生きる時間では解除できないと理解できたんじゃないかな?」
「・・・それでこの方法を思いついたのか?」
「そういうことだろうね・・・とは言っても、これもかなりの博打だったけど」
「・・・聞いても?」
「そうだなぁ、長いよ?
まぁまず彼は魔法の天才だったってことが前提だね
どうやって知ったかは知らないけども、彼は僕と同じ魔法を見つけたみたいなんだ」
「・・・その魔法とは?」
「うん・・・言いにくいんだけど・・・ダウンロード、という魔法だ」
「・・・ダウン・・・ロード・・・?」
「そう、この世界の根本を揺るがしかねない魔法だよ
条件は色々と厳しいけれども、過去を現在に反映できる魔法なんだ
僕の場合は君という過去の英雄を・・・
彼の場合は過去という名の自分を召喚した」
「・・・ちょっと待て」
「・・・」
「・・・その話で行くと・・・俺は過去の人間ということか?」
「ダウンロードで召喚できた以上、それは間違いない」
「・・・俺はこんな世界は知らないぞ」
「それはそうさ、少なくとも君は遥か過去、この世界がこの世界として存在する前の存在なんだから」
「・・・お前は、・・・この世界がどういう世界だか理解しているのか?」
「全てを知っているわけじゃない、でも少しは知っている、ダウンロードを手に入れた時に、僕は色んなことを知ったから」
「・・・続けてくれ」
「わかった
僕は確かに色んなことを知ったけど、正直言ってそれはどうでもいいんだ、君には悪いと思ってるけどね?
僕が一番気にしたことは、ダウンロードの発動方法と、そして同じ魔法を手に入れたライアンのことだよ
ライアンはこの魔法を知って、未来に全てを託したんだ
つまり、魔王を復活させられるだけの何かが、未来にきっと現れるということを信じた
そしてそのために色んな手段を用意したんだ、それが墓石であり、ブローチである
墓石が復活させられる存在を見つけたら、その存在に惹かれるようにブローチを作った
そしてそのブローチが持ち主の力を吸収して、ダウンロードの魔法が発動するように条件をつけたんだ
そして何より、その存在が現れるとしたら、間違いなくそれは自分と同じ「万物の才能」を持った存在だろうと予測していた」
「・・・発動方法は?」
「・・・術者の死・・・だよ」
瞬間
周囲に広がっていた幻想的とも言える水晶の洞窟は消えた
残ったのは暗闇
何も無い空間が、ただ広がっているだけだった
「そして、この魔法を知ることができる場所には、ある存在がいるんだ」
「・・・ある・・・存在・・・?」
「未来を知る存在さ」
「・・・未来・・・?」
「原理はわからない、どういう存在なのかもよくわからない、でも確かに存在したよ
・・・もちろん未来を知る、といっても全てを知っているわけじゃない、あくまでも可能性を教えてくれるだけだよ
しかもそれも、自分の知りたいことがどのくらいの可能性があるか、ということしか教えてくれない」
「・・・どういうことだ?」
「彼が望んだ可能性は、この仕組みを作ったあと、何年後にそれが叶うかというものだったらしい」
「・・・それが300年後だったというわけか?」
「そう・・・なんだろうね、さすがに当時の結果までは教えてもらえなかったよ」
「・・・お前は・・・何を聞いた」
「・・・」
再び風景が切り替わる
そこは見覚えのある風景だった
たくさんの人間が同じデザインの腕章をつけている
その腕章も人によって色が違うようだ
年代も性別も種族もバラバラ、だというのに、どこか和やかな雰囲気を感じさせる不思議な空間
風景は上空から見下ろす形だったが、やがて移動を始める
廊下を抜け、中庭を抜け、闘技場のような場所に行き、さらにその中心にたっている人物に近寄っていく
青い髪、二つの剣を持ち、微笑を浮かべた整った顔
「・・・アリサ?」
「そう、彼女についてだよ」
「・・・もう一度聞こう、・・・お前は何を聞いたんだ?」
男はすぐには答えなかった
じっと彼女を見つめているような雰囲気を感じる
やがて、彼が口を開く
「アリサが・・・ライアンの計画の対象になる可能性を聞いたよ」
「・・・結果は?」
「99%・・・と言われたよ」
え~、まぁここまで読んでいただいている読者様でしたら、もう話の展開が読めるかもしれませんが、こんな内容です
次で対話編は終了としますので、この会話形式の話も読みづらいかと思いますが、それまでお付き合いくださいましたら感謝でございます
今後ともソウケンをよろしくお願いします