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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第四章「現在編」
55/96

対話1

毎度お読みいただきありがとうございます


新たな連話です


この話の根本的な部分に触れる話となっています


いつもと違ってタイトル通り、会話がメインになっております


書いていて違和感が(笑)


本編をどうぞ

「・・・ここは・・・」


真っ暗な闇の中で、グラハルトは目を覚ました


周囲は何もない


闇が広がっている、というよりも、何もない空間が広がっているというのがしっくり来るような不思議な空間だった


宙に浮かぶようにして寝ていたグラハルトは、地面さえも無いはずの場所に両足を着いた


「久しぶりだね」


そう声をかけてくる人物がいた


だが彼の姿は見ることができない


そこに「いる」ということしかわからない


人のような何かがそこにいて、それが話しかけているということしかわからなかった


声からして男だろうな、という程度しかわからない


「・・・誰だ?」


「誰だはひどいな、ずっと一緒だったじゃないか」


肩をすくめて呆れたという風なジェスチャーをしたような気がした


「・・・知らないな」


「じゃあ思いだそうか、答え会わせと行こう」


そこにいる誰かがそう言うと、何もなかった場所が別の場所の風景を写し出した


「・・・ここは・・・」


「最初の地、君が今の君になった場所だよ」


周囲の景色は山の麓らしい景色に変わっていた


ゴツゴツとした岩が転がっており、辺りには森が広がっている

いや、広がっていた、というのが正しい


『SHAAA!!!』


背後から耳に響く嫌な高音で叫ぶ声が聞こえた


「ダークサーペント、君が最初に倒した魔物だね」


蛇に翼が生えたような体に、目玉が左右4対、合計8個もある気味の悪い顔をしたドラゴンがそこにいた

赤黒い体の大きさは、人間など簡単に飲み込めそうなほど太く、20メートルはありそうな長さをしている


「・・・このときは焦ったな」


「あはは、最初は殴って倒そうとしたんだよね」


二人が話していると、竜に向かって何かが飛び込んでいった


「・・・俺か」


「そう、君だ

わかってると思うけど、これは過去の映像だよ」


飛び込んでいった物体は、過去のグラハルトだった


「いくらレベルが高いっていっても、殴るのは無謀だったと思うなぁ」


「・・・アイテムとスキルに気づいただけマシだろう」


次の瞬間には、過去のグラハルトは手に二振りの刀が握り、蒼い鎧に変化した姿になっていた


そしてすぐさま竜を切り刻み、戦いを終わらせる


「・・・これはきつかったな、・・・正直吐きそうだった」


「そうだねぇ、変なプライドでやせ我慢してたもんねぇ」


すぐに森の中から、たくさんの人間が現れた


「これは傑作だったな、直球すぎる質問だよ」


「・・・吐きそうだったんだ、それを言うのが限界だった」


『・・・ここは何処だ?』


過去のグラハルトがそう言った瞬間、景色がまた変わった


「そして初めての街に到着と、どうだった?」


「・・・本物の猫耳は衝撃だったな」


「アハハハハ!うはは!ね、猫耳って!ププ・・・ブハハハハ!」


さらに景色は入れ替わり城の中らしい場所を写し出す


「・・・笑いすぎだ」


「ハハハ・・・はぁ、悪い悪い

まさか王女様の誘いを断ったのってそれが理由?」


周りの風景では、色んな人間がいる

その中でも一段高い場所に座る国王らしき人物

その隣で、頬を赤く染めた、熱っぽい視線をグラハルトに向けている女性がいた


「一目惚れっぽかったのに、勿体無い」


「・・・好みじゃない、・・・大体王族との関係なんぞ、面倒になるに決まってる」


「そんな理由でフッたのかい?」


「・・・よく見ろ」


すっと一人の人間を指差す、過去のグラハルトも同じタイミングで同じ人間を見ていた


「ああ、本気の人がいたのね」


その方向を見れば王女の紅潮した顔を見たのか、明らかに敵意を向けている男性がいた


「・・・まあ、これだけわかりやすければ・・・馬鹿でもひくだろう」


「ふ〜ん、意外と考えてるのね」


「・・・意外とな」


またしても風景が切り替わる


次は冒険者ギルドの建物内だった


10人以上の男達が過去のグラハルトに武器を向けている


「・・・こんなこともあったな」


「少し飛ばしながら行こうか、主に作者的な都合だけど」


「・・・何を言っているんだ?」


「いや、こっちの話」



――――――――――



それから一つ一つを確認していった


ギルドの連中が、新人らしい青年の成果を横取りしようとしていたのをブッ飛ばした


ゲーム上で数が必要だった鉱石の採掘に行ったところ、たまたま貴族の子供を誘拐していた盗賊達に会った、もちろんブッ飛ばした


街でその鉱石を売ったところ、金を異空間にしまう前に盗まれたこともあった

それを追いかけて、やたらと頭に来る顔ばかりの集団に会ったこともある

こいつらがスリをやらせているんだと判断し、ブッ飛ばした


その国の王城で、いきなり魔物達が出現したこともあった

原因はよくわからなかったが、とりあえず全部ブッ飛ばした

やらないと宿屋の美味い晩飯が食えないから、という理由だったが・・・


「・・・あそこのメシは美味かった」


国境近くの街では、もっと美味い料理があると聞いて向かった

街に着くまでに有名らしい盗賊団と、有名らしい巨大な猪の魔物を倒したが、興味がなかったので放置

懸賞金がもらえると知ったのは他の奴らが手柄を持っていった後だった


街に着いても、戦争中という理由で全ての店は閉まっていた

運よく防衛隊の食事係と合うことができたため、食事を分けてもらえることにはなった

だがそれも都市が落とされ不可能になってしまい、グラハルトは邪魔くさい奴らをブッ飛ばしながら食事係を探して、何故か娼婦の館に入ったこともある

食事は娼婦が作ってくれたので満足したが


「・・・あそこのメシも美味かった」


その後も色々だ


学園長と知り合ったりゲイルとケンカしたり戦争に参加してみたり

伝説のアイテムや秘境を発見してみたり軍隊より強い魔物と戦ってみたりお偉いさんをブッ飛ばしてみたり



――――――――――



「・・・5年は長いな」


「アリサに会うまでは、だろ?」


周囲は雪が降っていた


見覚えのある景色、人生が変わったあの日の風景


「・・・やはり、お前が導いていたのか?」


「まぁ・・・ね、わかっていたのかい?」


「・・・俺は寒いのが嫌いなんだ、・・・わざわざこの国に来る理由は無かった」


「だが、来た

そして導かれるように、あのおっさんに目をつけた」


「・・・考えればその時点でおかしかったんだ、・・・俺はあいつを殺せない、殺せないとわかっていても殴りかかった

・・・一人の死を隠蔽したくらいで、わざわざ殴る理由にはならないはずだ」


「ま、実際には他にも色々やってたけどね

個人的に許せなかった・・・ってのが正直なとこだけども」


「・・・アリサに会わせたのも・・・そうだな?」


「いつからわかってたんだい?」


「・・・アリサに会った時・・・いや、アリサの笑顔を見た時だな」


「あぁなるほど、確かにあれは嬉しかったなぁ」


気がつけば周りの風景は、グラハルトが城門を吹き飛ばすシーンに変わっていた


走り出す二人がいる


「笑顔」のアリサがそこにいる


現在のグラハルトは、不思議な感覚がした


このシーンを見ていて、懐かしさは感じる




だが、それだけだ




「笑顔」のアリサを見ても、感じないのだ


普段のように、守りたいとも思わない


体の奥がざわつくような感覚もない


恋人を見るかのような、優しい気持ちも




何も感じない




「・・・お前の感情だったんだな」


「うん、君には悪かったと思ってるよ」


「・・・いいさ、・・・それなりに楽しめた」


「そう言ってもらえると嬉しいよ」


再び景色は変わる


そこでは、アリサがグラハルトを相手に剣を振っているところだった


「・・・これで・・・よかったのか?」


「ああ、よかったよ

むしろよくやってくれたとさえ思う、必ず必要になるはずだからね」


そして再び、雪の振る町へと景色が変わる


「・・・アルドラか」


「そう、悪魔アルドラ

でも残念ながら、切っ掛けはこいつじゃない」


見ればアルドラが問いただされているシーンだった


その後、豚と手下どもが周りを囲んだ


「そしてさらに残念なことに、このおっさんも直接の切っ掛けじゃあない」


そしてさらに景色は変わる




入学試験の日だった

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