聖騎士の贈り物6
えー、グラハルトさんの無双、というヤツにチャレンジしてみました
厨っぽい
もっと勉強します
「ぬぅうううぁあああああああああ!!!」
グラハルトが目前にある黒い波に向かって突っ込んでいった
光が剣から迸り、それを波に向かって振り回す
たった一撃
それだけで波は消えていき、そこに何があったかさえわからないほどに、全てが消滅していく
その波は大量の魔物であって、一体を倒すのにも苦労するような強力な相手も混ざっている
だがグラハルトの前では、強さも大きさも、そもそも魔物であるかさえも関係ない
ただその光の範囲内にいた
それだけで何もかもが消滅してしまう
サリア率いる聖壁部隊は、目の前の光景をただ呆然と見詰めていた
「なにあれ・・・無茶苦茶すぎない?」
サリアの言葉も最もであろう
グラハルトは確かに世界最強だとは言われているし、事実そうであると思えるだけの話をよく聞く
だがこの魔物の大軍勢を前にして、彼一人でそれをどうにかできるとは思えなかった
万を遥かに超えるその大軍勢を、たった一人の人間が「攻めて」いるのだ
普通ではありえない、普通でなくてもありえない、異常という言葉ですら生ぬるい
神の裁きかと思いたくなるほどに、目の前の光景は異常だった
――――――――――
グラハルトの姿はすっかり変化していた
先ほどまでの剛健な姿に加え、覆われていなかった二の腕・太もも・腹・顎部分まで鎧に包まれている
色は白だが、ディバインナイトのような白というよりも、発光しているような白色だった
蒼い装甲が所々に見られ、それはデュエルナイトの鎧と共通している部分だと思える
マントはアビスナイトの装備している真っ黒でボロボロなものだが、そのマントが翼のようにはためき、悪魔のような印象を与える
片手で振るえるとは思えない、2メートル近い巨大な剣は、刃こそ真っ直ぐに伸びているが、描かれている模様や装飾部分は波打つように歪んでいる
形状だけなら魔や闇に属することがイメージできるその剣だが、白を基調とした金の模様が描かれていることで、神聖さを感じさせる
同じような見た目の盾は、やはり大きい
横幅こそ人間一人分だが、普通に構えているだけでグラハルトの身長と同じくらいの高さがある
どう見ても小回りが利かなそうで、動きの邪魔にしかならないと思えるほどの重装備
だがそれもある意味では当然だった
何故なら小回りを活かす必要が全く無いからだ
大振りな攻撃
ただの一振り
それだけで十分だった
それだけで魔物は消えてしまう
むしろより強く、より遠くまで届くように、力いっぱい振り抜く
黒い波は、ただそれだけで押し返されていく
触れることはおろか、近づくことさえ許されず、魔物達は次々と消えていった
「爆炎!エクスプロージョン!!」
グラハルトの魔法が発動する
エンシャント・ルーン言語による詠唱無く、いきなり発動させた
魔力によって描かれた紋章が出現し、紅く輝いたかと思えば、それは巨大な爆発となって敵を飲み込んだ
いつものそれより遥かに強い
まるで火山が噴火したような轟音を響かせる
急激に膨張した空気が、炎よりも先に衝撃波となって襲い掛かる
赤よりも高熱になっているために、青く燃える炎が全てを飲み込む
グラハルトの前方、扇状に広がっていくその炎は、途轍もない勢いで進んでいく
100メートルも進んだところでようやく炎は消え去った
「ぬぅうううぁあああああああああ!!!」
それでもグラハルトは攻撃を止めない
魔物の軍勢は100メートル先まで存在しない、彼の剣が放つ光では明らかに届かない
それでも彼は剣を天に向け、さらなる攻撃を繰り出した
「必ず殺す剣、我がこの一撃こそがそれであると知れ・・・」
ルーン・エンシャント言語ではなく、普通の詠唱が行われる
「汝避ける術は、死を持って逃げるのみであることを知れ・・・」
やがて剣から放たれていた光は収まり、グラハルトはただ突っ立っているだけになる
「無慈悲なる消滅の一撃・・・」
何の気配も感じない状態、まさに嵐の前の静けさだった
そして
嵐が訪れる
「必殺剣!フォースディストラクション!!」
瞬間
グラハルトの全身から黄金色の光が迸る
その光はドーム状に広がっていき、10メートルほどのところで止まった
やがて何かを押さえ込むように震えだし、グラハルトの真上あたりが膨らみはじめる
突然、爆発するようにして、黄金の光は空に昇っていく
柱のように巨大な光は、晴れ渡る空を背景に、神々しい輝きをしていた
「ぬぅうううぁあああああああああ!!!」
グラハルトは剣を振り下ろす
ゆっくり、ゆっくりと
スローモーションのようだが、少しずつ確実に、前へと振り下ろされていく
そして光の柱が、剣の動きに合わせるようにゆっくりと、前へと倒れていく
魔物達にもう少しまともな知能があったなら、その光景は「恐怖」以外の何者でもなかっただろう
何故ならその光は、先ほどまでグラハルトが振るっていた光と同じ色なのだから
わずか一振りで、何十もの魔物を消滅させた光なのだから
それがこれほど巨大な形で迫ってくる光景を、恐怖以外の何と言えるだろうか
光の柱は大地へと迫り、接触した
消滅
何もかもを消し去り、黒い波は真っ二つに分かたれる
そこにはどんな存在であるかなど関係ない
血も肉も骨も、魔物であるかどうかさえ関係なく、光に触れたものは全て消滅していく
嵐という名の光は吹きすさび
嵐が通った後に残っているものは、何もなかった
光の中心にいたグラハルト以外には・・・
この攻撃によって、魔物の軍勢は4分の1ほどが消滅した
――――――――――
「・・・がっ・・・くそ、・・・時間切れか・・・」
グラハルトは唐突に力が抜け、地に膝をついた
視界がぼやけ、もはや意識を保つことさえ難しい状態だ
フォースドライブ
使用中はダメージ・体力・魔力など、あらゆるものが無尽蔵と思えるほどに、驚異的な回復力を見せる
能力もほぼ全てが上昇し、スキルは強化され、はっきり言ってほぼ無敵状態になる
ただしそんなスキルが簡単に使えるわけではない
10分
それが限界だった
そしてそれを過ぎると、グラハルトは何もできない状態になってしまう
ゲーム的な説明をするならば、HP1・MP0・自然回復停止・行動不能という状態になってしまう
この状態になっている時間は5分
今の攻撃で近くに魔物がいないとはいえ、一番近くの魔物までは数百メートル程度しか離れていない
5分もあればグラハルトに迫ることは難しくないだろう
絶大な能力を誇るが、10分以内に決着できなければ死を待つだけ
使い場所を間違えれば、復活の呪文など存在しないこの世界では、死ぬだけのスキルなのだ
だからこそ、グラハルトはサリアと打ち合わせをしていた
「グラハルト!無事か!?」
サリアだった
事前にこういう状態になることを説明していたため、サリア達は動けないグラハルトの回収を予定していた
今回の作戦はこういう内容だ
グラハルトが突っ込み、前線を押し返す
そしてサリア達がそれを回収しつつ、砦まで後退しながら、砦に設置された兵器を使いながら前線を維持
グラハルトが回復次第、再び前線に投入し、魔物の軍勢を押し返す
この一連の行動を繰り返していくという作戦だった
予想外だったのが、グラハルトの異常なまでの戦闘能力だ
これによって本国からの応援を待たずして、この砦だけで決着がつく可能性が出てきた
死に戦だと思っていた兵士達は、自然と士気があがり、驚異的な戦いをしてみせた
――――――――――
砦内の一室、医務室として使われている部屋に、グラハルトは運び込まれた
「・・・ぐぁ・・・」
すぐに医療担当がかけより、回復魔法やアイテムを使い始める
サリアも何か手伝えないかとうろうろしている
そんな彼女に向かって、グラハルトは厳しい声で話しかけた
「・・・何をしている・・・前線の指揮に行け・・・」
「お前を放ってなど・・・!」
「行け!」
サリアはぐっと体に力を込め、グラハルトを見つめた
だが、言葉を出すことはできない
グラハルトから伝わる威圧感が、彼女に口を開くことをさせない
「お前は何のために戦っているんだ!勝つためだろうが!
ここにいることが、勝つことに繋がるのか!?違うだろうが!!!」
間がなかった
いつも話す前に入る、独特の間が無い
それだけ彼が、必死だということが嫌でも伝わってくる
「・・・勝負は・・・俺じゃない・・・お前達が・・・時間を稼げるかどうか・・・なんだ」
グラハルトの言葉にサリアはハッとした
そうなのだ
この戦いは、グラハルトが敵を倒すことも当然鍵になってくる
だがそれ以上に、グラハルトが動けない間に、砦を守ることも同じくらい重要なのだ
そしてそれは、サリアの腕にかかっていると言っても過言ではない
改めて、自分の責任を認識したサリアは、出口へと体を向けた
「ふふ、そうだったな・・・
鉄壁の名にかけて、必ず守りきってみせるわ」
「・・・頼んだ」
出口へと歩いていく彼女は、振り返らなかった
背中に背負った巨大な盾、彼女のトレードマーク
その後姿は、信頼できるだけの力強さが感じられた
彼女が出て行ってからグラハルトは一人、呟く
「・・・フッ・・・誰かを頼ったのは・・・初めて・・・だな」
言ったあと、グラハルトは意識を手放した・・・
チャラと音がした
グラハルトの胸元、兜と鎧の隙間
そこには、サリアから受け取ったブローチがいつの間にかついていた
ブローチの中心
デフォルメされた犬のような紋章
その顔が、笑ったように見えた
補足を少々
グラハルトはゲーム的な部分を使ってスキルを使用しています
頭の中にスキルショートカットがあるような状態ですね
なので普段はショトカから使用>自動でルーン語詠唱>対象・範囲指定>スキル発動という流れで使っています
なので無詠唱でも魔法が使えることを知りませんし、そもそも魔法の使い方がよくわかっていません
もちろんルーン語なんて一文字も理解していません
ほぼ無詠唱で使えたのは、この状態だからという理由です
ショトカ起動>すぐに対象・範囲指定>発動という流れだったからできたというわけです
そもそも今まで詠唱のフレーズ入れてないから、非常にわかりにくいかと思いますがそういうことです・・・