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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第四章「現在編」
38/96

死神の取引1

毎度お読みいただきありがとうございます


タイトルからわかるように連話となります


アリサ達はしばらくお休みですが、そっちはそっちで製作中ですので、アリサ達の学園編が楽しみな方々は暇つぶしにお読みください

どことも知れぬ場所に広がる荒野の真ん中


とっくの昔に栄光を失い、ただの瓦礫が散らばった場所


廃墟という呼び名が相応しいその場所を、一人の男が歩いていた


黒い鎧に金の模様があり、犬のような兜をつけた男・・・


「蒼犬」


世界最強と噂される彼が廃墟の中を歩いていた



「よう、追い付いたぜ蒼犬」


彼に後ろから声をかける人物がいた


赤い髪をオールバックにして、彫りの深い顔をしている男


何を隠そう悪魔、それも大悪魔と呼ばれる強力な存在であるアルドラだった


「・・・お前か」


「・・・やっとわかったぜ、お前さんのこと」


蒼犬は足を止めた


だが振り返らず、言葉だけを返す


「・・・どうやった」


周囲に冷気が漂い始める、恐怖という存在のあまりの強さから起こる錯覚だが、知っていてもそれを振り払うことはできない


「なに・・・、大悪魔ともなると死神と会うこともできるからな

ちょっと取引したのさ」


アルドラは言いながら自身の服の下を見せる


本来なら筋肉で引き締まった肉体に、迸る魔力を溢れさせる強靭な肉体があるはずだった

しかし今のアルドラの体は、かつてそんな肉体だったことも信じられないくらいに痩せ細っている


骨が見えるほどに痩せた体からは、魔力の欠片も感じられないし、病気かと疑うほどに肉という肉が無くなっている


「ひでぇもんだろ?魔力も肉体も向こう100年は使い物にならねぇ

今ならアリサどころか人間の駆け出し冒険者にだって勝てねぇ」


クックックッと笑うアルドラなのだが、その顔に後悔の感情は見られない


代償として得たものは、彼にとってそれだけの価値があったのかもしれない


「・・・何を知った」


グラハルトは余計なことを話さない

誤解されやすい一番の原因なのだが、もはや癖に近い話し方なので直そうなど微塵も考えていないようだ


「・・・お前さんが別の世界から来たってことと、お前さんがそれを話せない事実を知ったよ

そして・・・俺がそれを誰かに話しただけでもお前さんが死ぬ・・・って事実もな」


「・・・そうか、・・・俺は殺される側になったわけか」


アルドラの話が真実であるならば、アルドラは簡単にグラハルトを殺すことができるようになったわけである

何せ人に話せばいいだけなのだから、蒼犬に近寄る必要さえ無い、むしろ離れた場所から一方的に殺せるのだから、普通の感覚だったら命乞いでもしたくなるだろう


だがアルドラは意外な言葉を口にする


「ふん、わざわざ殺すためにこんな取引するかよ

俺が本当に知りてぇのはそんなことじゃねぇ、俺は・・・」


アルドラは近づきながら何かを取り出す


「てめぇの、その強さの理由を知りてぇんだ!」


そして取り出したアイテムをグラハルトに突きつける


「・・・これは?」


それは宝石だった


結晶と言ってもいい


空色の綺麗な青色をした結晶は、カッティングなど余計な細工が一切無い

だというのに、その美しさは一流の細工された装飾のように輝いている


「永遠の記録・・・記憶を記録にして保存する魔道具だ

この方法が、唯一の死なない方法だと死神は言ったよ」


グラハルトは黙って宝石を受け取る

永遠の記録をじっと見つめ、これによって起こる事態を予想する


「・・・一つだけ聞こう」


もはや恐怖という名の殺気は消え去り、ただ一人の「人間」がそこにいた


「・・・力を手に入れてどうする?」


人間の問いに「悪魔」は答える


「魔神になる、魔神にならないとできないことがある、俺の願いを叶えるために、俺は力が欲しい」


「・・・力でしか・・・叶わない願い・・・なのか?」


「力で叶えることが、一番可能性が高いんだ」


グラハルトははぁとため息を吐いた

その手に持っていた青色の宝石は光り輝き、数秒後にはすぐに収まる


「・・・参考にはならんと思うぞ」


ひょいっとアルドラに投げて返し、アルドラも子供とキャッチボールしているかのように軽く受け取る


「へっ、それを決めんのは俺様だ

・・・そんじゃあさっそく「見つけたぞ!」・・・あん?」


声のしたほうを二人が見ると、太陽を背にこちらを向いている連中がいた


五人、たった五人

その五人は人間も獣人もエルフもいるが、気になるべきはそんなところではない

一人を除いて全員が女であることでもない


唯一の男、何の不思議もない普通の男であるはずのその男からは、尋常ではないほどに惹き付けられる「何か」が感じられる

良くも悪くも干渉せずにはいられないような、それでいて決して近づいてはいけないような不思議な感覚


「覚悟しろ!蒼犬!大悪魔!」


彼の感覚は非常に説明しづらい

だがきっと、現代人ならぴったりの言葉を使うことができる

蒼犬に言わせるなら彼は・・・


「・・・主人公か」



――――――――――



時は遡り半年前


ある国である儀式が使われた




勇者召喚




勇者とは名ばかりで、異世界の存在を強制的に召喚し、自国にとって都合良く動くよう無理矢理契約する儀式だ


その自国というのも国民や世界平和のためではなく、主に王族や召喚した本人という一部の人間にとってという意味だ


もちろん使用には厳しい条件が両手では足りないほどあるし、全ての条件が揃うタイミングは一生に一度あるかないかというほどだ

なによりそれが必要になるタイミングでは何故か世界滅亡の危機がかならず存在するので、異常なまでに正当化されてしまう


最悪なのは召喚される対象が、召喚されたことに対して疑問に思うどころか嬉々として従うことだ

しかも例外なく強力な戦闘能力を持っているうえに、自分が正義だと思い込むような人物ばかりが召喚されるために手が終えない


そして今回召喚された彼もまた、例に漏れずして同じような人間だった


あとはまさにテンプレートのような異世界ライフ

強くなるために修行した、国内の色んな女性とフラグをたてた、伝説の装備を手に入れた、魔王を倒すために旅立った、旅先で精霊や色んな種族と仲良くなった


正にテンプレな人生を送ってきた彼の名は、あずま 光輝こうき


勇者として旅をしていた彼らは、今世界の脅威二人と対峙していた


「みんな!行くぞ!」



――――――――――



「やべぇ、今の俺じゃ相手になんねぇ

足手まといは勘弁だぜ!」


「・・・言ってるスキに逃げろ」


「確かに・・・な!」


アルドラはそう言って何かを空中に放り投げた

途端にアルドラは体が浮き上がり、今にも飛び立とうとしている


「逃げさせてもらうぜ

お前さんも気ぃつけろよ!そいつは勇者だ!」


どんっという音がしてアルドラは飛び上がる

その姿を目で追っているうちにみるみる小さくなっていき、今はもう黒い点があるなくらいにしかわからない


「逃がしたみたいですよ勇者様」


「ああ、いつか倒すさ

今は蒼犬に集中しよう、アイシャ」


アイシャと呼ばれた女性はたわわに実った母性が眩しい金髪の女性だった


顔はぜんぜん違うのだが、どこかレディを思い出すような雰囲気をしている


「・・・フッ」


蒼犬としては、勇者を前にしてずいぶん余裕がある自分に対して笑ったのだが、勇者一行には違う意味で伝わったようだった


「なっ!バカにしてますよ!あいつぶっ飛ばします!」


「落ち着きなさいリノン、挑発に乗っちゃダメよ」


「でもシェリル!」


なんというか良いパーティーなのだが、それぞれが勇者に自分をアピールしているように見えてしまう


発言するたびにいちいち勇者をチラ見しているし、勇者から見えるような立ち位置に行こうとしてジリジリと接近してきている


「・・・ノア、支援魔法を頼む

みんな、全力で行くぞ」


「うん、僕にまかせて!」


勇者一行が淡い光に包まれ、何かしらの魔法によって強化されたのがわかる

グラハルトも剣を構え、勇者を見据える


「・・・来い」




勇者と蒼犬の戦いが始まった


久しぶりにアルドラさん登場!


そしてグラハルトの真実がついに!・・・の前に勇者一向出現ですw


普通立場逆じゃね?なんで襲われてんの?って感じで楽しみください

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