学園生活一年目・自由時間
この話でアリサ達の日常編は一旦終了します
次回からはなんと久しぶりのあのキャラが!
あれ、この話って主人公誰だっけ
「お腹空いた」
「食堂楽しみですわ」
「学園の食堂はおいしいって評判ですよね」
アリサ・レディ・アレックスの三人は学園の廊下を食堂に向かって歩いていた
時間は日本時間で夜の7時といったところ
授業も終わり解散となり、腹ごしらえをしようと食堂に向かうことにしたのだ
学園の食堂は10時くらいまでやっているとのことなので、急ぐ必要もないのだが、腹が減っては戦はできぬとばかりに三人とも食堂に行くと言い出した
別に戦の予定は無いのだが
「おう、おめーらもメシか?」
声のしたほうを見るとバスカー・マキア・グレイがこちらに向かってきている
どうやら目的地は一緒のようだ
「ちょうどいい、みんなで食わないか」
「ふむ・・・、一人だけ両手に華というのは中々に許せませんね
是非ともそうしましょう」
マキアとグレイの誘い・・・グレイはちょっと違う気がするが、そう言うのであればとみんなで行くことになった
「しかしアレックスが二人を狙っていたとは・・・、これはある意味一番の危険人物でしたね」
「え?グレイさん一体なにを・・・」
「確かに!冒険者なんて女っ気がないからな!貴重な癒しを独り占めとは許せん!」
「は?マキアさんまで・・・」
「ブハハ!諦めな!所詮男なんてそんなもんよ!もちろん俺も含めてな!」
「バ・・・バスカーさん・・・?」
にこやかに話す三人なのだが、明らかに殺気を放ちながら会話する
三人とも中々の実力を持っているので、アレックスに「だけ」伝わるようにしているあたり本気だというのがわかる
「いや・・・えっと・・・ごめんなさい?」
「いやいや落ち着きたまえよアレックス君、なぜ謝る必要があるのかな?
まさか君に限って二人とも狙っているわけでは無いだろう?」
素晴らしくいい笑顔でグレイが問いかけてくるのだが、笑顔の後ろに鬼が見えるのはきっとアレックスだけだ
「HAHAHA、グレイ君やめたまえよ
アレックスに限ってそんなわけが無いだろう、そうだよなアレックスくんんん???」
マキアがこれまた爽やかなスマイルで青筋を浮かべながら話す
体が炎鬼化してきているのはきっと見間違えではない
「二人とももうYA☆ME☆RO
アレックス君はまだまだ若いんでごぜぇやがりますよ?
馬鹿なことを考える暇くらいありやがりますよねぇアレックス君」
バスカーがまるで聖人君子のごとく優しい笑顔と声を出しているのだが、語尾がおかしくなっていて逆に怖い
「「「で?」」」
「で?とは?」
汗をだらだら流しながら三人の問いに逆に問い返す
アレックスはこのとき本気でこう思っていた
(グラハルトさんより怖いんですけど!!!)
「「「どっちが本命だ?」」」
三人の重なった声は、なぜか先を歩いている話題の二人には聞こえなかった
――――――――――
一行は食堂に到着し、その光景に目を奪われていた
決して狭くは無いハズの食堂(一般的な学校の教室5つ分くらいの広さ)にはたくさんの人がひしめき、入学試験を思い出させるような状態になっている
「凄い人数ですね・・・、どうします?」
グレイはアリサを見ながら言うが、目の前の空間は座る場所を探すだけでも大変そうだ
諦めて学園の外でも構わないと言外に言っているのだが、アリサは気にせず奥の方へと進んでいく
「・・・ま、大丈夫でしょう」
レディがそれだけ言ってついていくので、一行は全員で歩き出した
――――――――――
「おい、あれって・・・」
「あれが噂の・・・」
「・・・期待の新人パーティーか」
アリサ達が歩いていると周囲の恐らく上級生らしい生徒達がひそひそ話を始める
どうやらアリサ達はかなり有名になっているようだ
歩く先は人が避け、進む道を示すように先へ先へと割れていく
やがて一つのテーブルの前で人はいなくなり、そのテーブルに座っていたグループはそそくさと席をたった
「・・・空いたよ?」
「空きましたわね」
「空いたな」
「空いたぜ」
「空いたぞ」
「限りなく不安な空き方ですが空きましたね、正直トラブルの予感しかしませんよ」
グレイの予感は的中する
できれば当たらないで欲しかったと思うのは仕方ないと思う
「よお!てめぇらが噂の一年生なんだってな!」
見るからに偉そうな態度の生徒がやってくる
これ見よがしに腕章を見せつけ、青い色(4年生)を強調している
「あ、ダメだ」
「何がだい?」
アリサが顔を見ただけでそう言うので、アレックスが何のことか聞いてみる
答えを返したのはアリサではなくレディだった、ただし言葉ではなく
「俺様は4年生のハボッブギャァっ!」
「殴ってもいい相手ってことですわ」
肉体言語という方法だった
彼が可哀想なので一応補足しておくが、彼の名前は間違ってもハボップギャァなどという残念な名前ではない
後半はレディに顔面パンチをくらったせいで出てしまった鳴き声だ
きっと彼は二度と登場しないのでこれ以上は説明しないでおこう、アリサを脅して無理矢理手下にしようと声をかけたことだけは説明しておく
「うん、殴っても大丈夫な相手だね
それよりお腹空いた、早く並ぼう」
食堂はセルフサービス式のようで、何人もの生徒が列を作って並んでいる場所がある
グレイはその列を見てから提案してみた
「時間がかかりそうですね、私とアレックスは留守番をしていましょう
その間に行ってきてください、私達は誰か戻ったら行きますよ」
「え、なんで俺?」
「HAHAHA、そりゃあOHANASIが終わってないからに決まってるじゃないですかアレックス君」
「え、ちょ、なん「よし、じゃあ行こう!」えぇ〜」
さっさと歩き出す一行の背中を見ながらアレックスは呟く
「どうしてこうなった」
――――――――――
「・・・なるほど、つまりアリサ狙いと言うわけですか」
「・・・はい」
グレイが顔を真っ赤にしたアレックスをニヤニヤしながら眺めている
アレックスはグラハルトの告白の部分を隠して先日のことを話したようだ
話したのか話さざるを得なかったのかはわからないが、相手が「謀略」と呼ばれる相手なのだから恐らく後者なのだろう
「つまりアリサ狙いで近づいて行くと必ずレディがいると、そういうわけですね」
「そういうわけです、もう勘弁してください」
「えぇ、肉体言語でお話しをせずに済んでよかったですよ」
にっこりと微笑むグレイ
いまだに鬼が見えているアレックスはそれを笑顔と認識することができないので、恐怖を煽っているだけなのだが、恐らく狙ってやっているのだろう
「まあ、みんな戻ってきたようだし
俺からはこの話は終わっておこう、二人には俺から誤解の無いように伝えておくから安心するといい」
「前から思ってましたけど、グレイさんって男と女に話すときで態度違いますよね?」
「む、やはり出てましたか
まあ女性には優しくしろと教えられましたからね、態度が変わってしまうのもそのへんからだろう」
微妙に言葉使いが安定していないのは動揺しているからなのだろう
先程から目を合わせようとしないグレイに、反撃をしようとアレックスが口を開く
「それって「悪い!待たせたな!」・・・OTZ」
見ると全員が戻ってきたようだが、食事が載っているトレイの数が人数より多い
どうやらグレイとアレックスの分も持ってきてくれたようだ
「さぁ食べよう」
アリサの掛け声で全員が食べる姿勢になり、グレイまでもが今にも食べそうな雰囲気だ
アレックスは今聞く必要も無いかと考え、今は食事に集中しようと思ったようだ
・・・ちなみに集中しなくてはならない理由として、隣に座っているマキアが明らかにアレックスのオカズを狙っている気配がしたからだ
「じゃあいただきます」
「「「いただきます」」」
「いただきどぅーあーっしゃー!!!」
「させるくぅあぁあ!!!」
マキアとアレックスの壮絶な戦いは今、幕を開けた
テーブルは笑いに包まれ、周りの生徒もその光景を微笑ましく見つめる
楽しい雰囲気も大勢での食事も、こんな馬鹿みたいなやり取りも、アリサにとっては初めての経験だった
「あはは」
「男って・・・」
「ブハハ!いいぞ、もっとやれ!」
「馬鹿ですね、ええ馬鹿です」
アレックスとマキアの戦いはいまだ続いている
「ほあちゃーーー!」
「きぃえぇーーー!」
アレックスは馬鹿をやりながらも、それに気づいていた
アリサの顔がかつて見た笑顔だったことに
その顔を見れるなら、馬鹿でもなんでもやろう
「その時」が来るまで泣かなくて済むのなら、道化でかまわない
「その時」が来たらきっと彼女は一生分泣くはずだから・・・
そしてもう一つ気づいていた
アリサを見て、不適に笑っている生徒がいることに
その笑みはアレックスにとって、不安以外を感じさせることは無かった
「隙有り!」
「しまった!」
それを今のアレックスから理解できたものはいないだろう・・・
お疲れ様でした
ここまで読んでいただきありがとうございます
次回からはまた別の場所で唐突に、そして急激に話が進んでいくような気がすると見せかけて実はそんなに進まない話が続きます
設定の回収が意外と多かったので長くなると思いますが、お付き合いいただければ幸いでございます
今後ともソウケンをよろしくお願いいたします