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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第三章「入学編」
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入学試験5

二次試験はアレックスの活躍により、問題なく終わった


特定の属性以外には破壊できない案山子を、全員で破壊するという内容であったが、アレックスは全種類を使えるのですぐに終わった


(それにしても・・・)


グレイは不思議な感覚だった

自分でさえ知らなかったアレックスという存在を、まるで試験の内容を知っていたかのように的確に見つけ出したアリサ

否定しようとした自分を抑え込む発言といい、自分も含めた優秀な人材が引き寄せられるように集まる不思議といい、アリサにはただならぬ何かを感じる


じっと彼女を見つめ、やがて彼はアリサの目を見る


(・・・?)


何か普通と違う違和感がある

黒目は珍しいがいないわけじゃない

顔は綺麗だが顔だけの女なら他にもいる

一体何が違うのかと考えていると、アリサがこちらを見つめていることに気づいた


(・・・虹色・・・魔眼!?)


グレイはアリサの黒目の周囲に、虹色の輝きがあるのことに気づいた


(彼女は祝福された者!?万物の才能を持った存在!

・・・これは参った、・・・鳥を掴んだつもりでドラゴンを掴んでいたとは・・・)


万物の才能とはすなわちあらゆる存在に祝福された者のことだ

あらゆる者に祝福されるということは、あらゆる者が味方をするということ

動物も、植物も、精霊も、大気や大地、運でさえもが彼女の味方だ


それに気づいたグレイは驚きで動けなくなってしまう


それに気づいたレディが話しかけた


「気づきましたのね?

さっき私が言った意味もおわかりになりまして?」


「・・・ふふ、精々「敵」だと思われないように頑張りますよ」


グレイとレディはそのまま三次試験の会場まで黙って歩いていった



――――――――――



三次試験の会場は校舎の奥に広がる森の中らしく、エルフの教師が案内している


二次試験にて通過したのは結局二百名といったところだった

魔法の属性が揃わなかったパーティーはもちろんだが、単純に六人パーティーにならなかったグループも以外と多かったようだ


最初が千人以上いたことから考えれば、ずいぶんと減ったものだ


今年の定員が何人かはまだ公開されていないが、この中の半分程度しか合格しないだろうと誰もが予想していた


誰もが不安を抱えて歩く中で、三次試験会場である森の入口に到着した



――――――――――



「到着〜

じゃ〜、あとはお願いしま〜す」


「ご苦労様

ではちゃっちゃと三次試験に移ろうかね」


そう言った教師は獣人のようだった

姿形こそ人間だが、犬歯が鋭く尖り、体の所々に虎のような縞模様が見える

筋骨隆々の体のうえには、黒と黄色のメッシュになったボサボサの髪が載っている


「三次試験の内容を説明するぞ!

内容はこの森の中からあるアイテムを取ってくること!

二次試験で組んだパーティーごとに行動してもらう!

持ってくるアイテムは各パーティーによって違うから注意しろ!

制限時間は無し!ただし先着九十名15パーティーが合格した時点で終了、その九十名が今回の合格者になる!」


怒声に近い野太い声が、一気に説明をする

どうやらこの三次試験が最後で、今回の合格枠は九十名らしい


さらに細かい捕捉が説明されていく


「どのような場合であっても、合格するまでに死者を出したパーティーは失格だ!同じく殺した場合も全員失格!

逆にアイテムを提出した時点で死者がいなければ、誰か一人が提出した時点で全員合格!

提出後に死者が出た場合でも欠員の補充は行わない!

なお、このパーティーは入学後も暫定的に利用する!できるだけ全員生き残るほうが懸命だぞ!」


やたらと死者についての説明が多いが、そんなに危険な内容なのかと受験者は緊張する


だから「それ」を考えている者達以外は気づかなかった

本当に危険なのは試験内容では無いということに・・・


「ではそれぞれのパーティーはリーダーを決めてくれ!

リーダーはここに集合!試験用アイテムを配布する!」


獣人の教師に言われて、各パーティーは話し始める


アリサ達のパーティーは迷うことなくアリサで決まったようだ


「・・・なぜ私?」


アリサ自身は不満なようだが・・・


「じゃあ適当にそこの箱を持ってくれ、中には腕輪が6個と番号の書いたメモが入ってる

番号は俺に言ってくれ、対象アイテムを教える」


そう言って教師が指差したほうを見ると、綺麗に箱が並んでいる

アリサはリーダー選定の速さから必然的に一番に選ぶことになった


(・・・これかな?)


適当に箱を一つ持ち、中身を確認する

真ん中に青い宝石が着いた腕輪が6個と7と書いてあるメモが入っていた


教師のもとに戻り、メモを渡す


「7か・・・、対象アイテムは・・・っと」


教師は資料を確認して、アイテム名を教える


「ふむ・・・、ついてるな

対象アイテムは初代学園長の墓石の欠片だ

近くに行けば腕輪の宝石が赤く変色していくからわかるはずだ

さっき言ったルール違反をすると砕けるから気を付けろ

他のパーティーが終わるまで待機していてくれ」


アリサは言われた通りに戻り、腕輪を配っていくついでに聞いた内容を話していく


「初代学園長の墓石?それだったら簡単ですわね」


話を聞いて最初に言ったのはレディだ


「レディ、どういう意味ですか?」


簡単と言ったレディに疑問をぶつけたのはグレイ


「いや、確かに簡単だぜ

初代の墓つったらあれだろ?なんつったか?」


バスカーまでもが簡単、と言うのはさすがに驚いたようだ


「もったいぶらずに教えてくれよ!頭使うのは苦手なんだ・・・」


それでいいのかとツッコミが必要なセリフはマキアだ、学生になろうという人物が言うセリフでは無い


「俺も聞いたことがありますよ、それ」


アレックスも控えめに答える、どうやらそこそこ有名な話のようだ


「・・・先生も「ついてるな」って言ってた

どういうこと?」


アリサも聞いた話を言ってみるが、全く検討がつかない


「だって初代の墓と言ったら・・・」


「シッ、始まるみたいですよ」


教師は最後のパーティーが腕輪を装着したのを見てから声を張り上げた


「全員準備はいいな!

そろそろ開始するぞ!」


緊張感が高まっていく中、不意にグレイは「それ」に気づいた


ごくりと生唾を飲み込み、仲間に危険を伝える


「みんな・・・開始と同時に全力で走るぞ・・・」


グレイのその言葉で全員が周りを確認する


そして全員が「それ」に気づいた


「そういうことか・・・、全員か?」


「ブハハ、思い付かなかったのは俺達だけみてぇだな」


マキアとバスカーが言うが、顔はあまり緊張していない

冒険者あがりの彼らにとってはよくあることなのだろう


空気を知ってか知らずか、教師は試験を開始するために口を開く


「それじゃあ始めるぞ

三次試験・・・開始だ!」


開始の宣言が言われるやいなや、アリサ達以外のパーティーが一斉に戦闘を開始した


魔物と、ではなく隣にいた「人間」のパーティーと・・・


当然、アリサ達にもパーティーは襲いかかるが


「走れ!」


アリサ達は全員が森の中へ向けて走り出していた


グレイの発言により、全員がこの事態を予想し、走る準備をしていたからこその迅速な行動だったが、気づかなければ誰かしらが被害に合っていたかもしれない


「ひゅ〜♪

危機一髪だったなこりゃ、危ねぇ危ねぇ」


「参りましたね・・・

これじゃあ試験中気を付けるのは、魔物ではなく人間ですね」


「とっとと合格すればいいさ!

簡単なんだろ?」


「そうですわね、早く課題を済ませるのが一番安全そうですわ」


「・・・どこを目指せばいいの?」


「初代の墓ですか、俺も見るのは初めてですが・・・

噂通りなら恐らくは・・・」


そう言って話を知っている三人は森の前方、何もない暗闇の先を見る


「「「真の闇の中だ」ですわ」らしいです」


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