入学試験4
さらに新キャラ追加です
どこかで見た名前の彼です
「一次試験終了じゃ!」
学園長はそう宣言した
開始から実に2時間と少し
証明書の最後の1枚が提出され、三百六十名の合格者が揃った
「合格できなかったもの達もよくがんばった!
実力不足・試験との相性、単純に運が悪かったものもいるじゃろう
合格しなかった理由は自分でわかっておるはずじゃ!
力をつけてまた来年挑戦してくることを楽しみに待っている!」
最後に通過した受験者は、教師に案内されて校内に入っていく
「では、この場にいるみなさんは解散となります
諦めない意思があるならまた来年会いましょう」
ぼっちゃんの相手をしていた女性教師がそう言って解散となった
――――――――――
「二次試験を〜始めますよ〜、静かに〜してくださ〜い」
そう言ったのは先程の校庭にはいなかった教師だ
間延びした声を出す穏やかそうな人物で、クリーム色の髪をポニーテールにした糸目の美男子だ
耳が尖っているのが特徴的だ、エルフなのだろう
「あ〜、二次試験の内容は属性の〜理解と〜応用力の〜試験で〜す
近くの人でも〜知り合い同士でもいいので〜、六人組になってくださ〜い」
ちなみに今いる場所は体育館のような場所だ
三百六十名が余裕を持って入れるどころか、半分に別れて模擬戦でもできそうなほどに広い
一般的な体育館の4つ分くらいだろうか
受験者は一次試験で活躍していた者達に、我先にと群がっていく
当然アリサとレディにも大量の受験者が群がる
「是非一緒に!」
「いや俺と!」
「俺なら確実に役に立つから俺と!」
だが二人はするすると人の波をかわし、目ぼしい人物を探していく
「レディ、誰かいい人知ってる?」
「そうですわね・・・
あそこの暑苦しい赤毛の人は炎鬼族のマキアと言って、かなり強いですわね
あっちの豪快に笑ってる槌使いは雷撃のバスカー、こっちもかなりの使い手ですわ
あ、あそこにいるのは・・・」
レディは次々と目ぼしい候補者を列挙していく
話を聞けばアリサも聞いたことのある名前がちらほら出てくる
しかしそういった人物はみな人に囲まれていて、近づくだけでも重労働だ
「お嬢さんがた」
不意に後ろから声をかけられ、二人は振り向く
そこにいたのは一次試験で教師から証明書を盗んで合格したグレイという男だった
「初めまして、グレイ・ティンカーと言います」
そこにいたのは胸当てのような鎧の上からフードつきのローブを纏い、顔を半分隠した男だった
黄緑色の髪がローブの端から出ている程度に長く、その髪に隠れて顔がよく見えない
「アリサ・・・です」
「初めまして「謀略」のグレイ殿、レイディアント・クラース・フォルナス、フォルナス家が長女にございますわ」
レディの返答にグレイが驚く
「これは驚いた、私をご存じでしたか
目立たないようにしていたつもりなんですが・・・、参りましたね」
レディは油断なくグレイを見つめ、ちらりとアリサに視線をやった
アリサはグレイをじっと見つめ、彼を見極めたように話しかける
「一緒に受けましょう、あなたもそのつもりだったんでしょ?」
あまりにも呆気なく言うので、あれこれと説得を考えていたグレイは硬直してしまう
レディはさも当然といった顔で、特に驚いてはいないようだ
「あなたが言うなら大丈夫なんでしょうね
よろしくお願いしますわ、グレイ様」
レディはそう言って、グレイに顔を近づける
美女の急な接近に戸惑うグレイだが、レディが彼の肝を冷やす言葉を耳元で呟いた
「・・・彼女を一方的に利用しようと思わないほうがいいですわよ?」
そしてレディはすっと離れ、冷や汗を流しているグレイに続けて言った
「私がいる限りそんなことはさせませんけど」
二人のやり取りを見ていたアリサは怪訝な表情だ
「何の話してるの?」
「フフ、何でもありませんわ」
グレイはレディとアリサを交互に見てから呟く
「一方的に・・・か
こちらから協力すれば大丈夫かな?
となるとさしあたってできることは・・・」
そう呟いたグレイは何人かを見る
「仲間の確保かな」
――――――――――
「マジで!わかった!すぐ行く!!」
そう言ったのは炎鬼族・マキア
願ってもない誘いにすぐさま頷く
――――――――――
「ブハハ!こっちとしても願ったり叶ったりだ!
よろこんで付き合うぜ!」
そう言ったのは雷撃のバスカー
彼としてもそれを願っていたようだ
――――――――――
「あと一人か・・・」
グレイはそう言って会場を歩き回っている
アリサ達とは別行動をとり、仲間をスカウトしているのだ
炎鬼族のマキア、雷撃のバスカーを速攻でスカウトできたあたり、「謀略」と言われるだけの実力はあるようだ
あと一人はどうするかと悩んでいると、アリサ達が誰かに声をかけているのが目に入る
近寄ってどんな人物か見てみる
「あら、グレイ様
もう終わったんですの?」
「ああ、二人は確保できましたよ
その人は?」
そう言って二人の視線が目の前の人物に移る
茶色の髪を短めで、ワイルド系にセットされている
意思の強そうな目は青く、澄んだ色をしている
身長は高くもなく低くもなく、グレイと同じくらいだ
身に付けているのは軽鎧だが、追加装甲が多く付いていて頑丈そうだ
何より大きな盾と、それに似つかわしくない短剣を持っているのが特徴的だ
「ど、どうも・・・
アレックスと言います」
彼自身はまさかのアリサから話しかけられたことで、かなり緊張しているようだった
第一印象は悪くない好青年なのだが、グレイは彼のことをまったく知らない
見た目は冒険者のようだが、マキアやバスカーのように名が知れた冒険者ではないようだ
多少なりとも活躍していれば自分が知らないはずは無いという自信もある
少なくともグレイは彼に関する情報を何一つ持っていない
「レイディアント殿、彼はどんな人物なんですか?」
「レディで結構ですわ、私もグレイと呼ばせていただきますので
彼については・・・、何も知りませんわ
ついでに言えばアリサも初対面ですわ」
初対面ということは適当に選んだということだろうか
だったら彼より強そうな人物を何人か知っている
彼は断って別の人に声をかけたほうが良い
グレイはそう考え、早速実行しようとする
「彼がいい、彼じゃないと多分ダメ」
アリサがそう言った
グレイを真っ直ぐに見てそう言った
まるで心を読んだかのようなタイミングで言われてしまい、グレイは結局何も言えなくなってしまう
すると豪快な笑い声が聞こえてきた
「ブハハ!炎鬼族の兄ちゃんと一緒なら楽そうだ!」
「ハッハッハッ!俺も雷撃が一緒なら心強いよ!」
バスカーとマキアが近づいてくる
「・・・確保した二人が来ましたよ
これで六人ですね」
「この二人を確保とは・・・さすがですわね、グレイ」
アリサは二人をジーっと見ているが、問題なかったようだ
短くよろしく、と言って挨拶をする
そのまま教師にパーティーメンバー表を出して待機になった
――――――――――
「は〜い、時間切れ〜」
エルフの教師が宣言し、パーティーごとに集まっているのを見て頷く
「みなさんなかなか頑張りましたね〜
さっそく試験内容を〜説明しま〜す」
受験者は生唾を飲み込む
パーティー前提の内容であるはずの試験なのだから、当然それなりに厳しい内容であるはずと予想できる
だが教師が話した内容は、全く違うものだった
「内容は簡単〜
パ〜ティ〜メンバ〜全員合わせて〜基本属性の〜魔法の矢が〜全て使えるパ〜ティ〜を組めた人達が〜合格で〜す
あ〜、虚偽報告が無いように〜、簡単なテストは〜しますからね〜」
つまりこれもまた、仲間を見極めるテストだった
焦ったのはとにかく頭数だけ揃えたパーティーと、実力だけで集まったパーティーだ
魔法が使えないのはアリサだけではない、生粋の前衛として生きてきた者達も受験している
そういうメンバーが多いパーティーは、この内容に愕然とした
アリサ達は・・・
「おいおい・・・俺は雷意外は風しか使えねぇぞ」
「いいじゃないか、俺は火以外はまるでダメだ」
「私は火・風・闇は使えますが、それ以外は初歩も使えないですね」
「私は水・雷・光の魔法の矢なら使えますわ
・・・となると地属性が足りないですわね」
上からバスカー・マキア・グレイ・レディである
レディはアリサをちらっと見てみた
「・・・私は全部使えないわよ?」
「ですわよね・・・
となると・・・」
全員の視線が茶髪の彼、アレックスに向いていく
「えっと・・・、魔法の矢なら一応全種類使えます」
・・・アレックスが仲間で良かったと心底安心するパーティーメンバーであった
というわけでアレックス登場です
彼と蒼犬との話もそのうちに・・・