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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第三章「入学編」
19/96

入学試験1

アリサの学園編スタートでございます


なぜ学園物に手を出した、という意見は受け付けません・・・

魔法学校


そこは将来のエリートを育成する学校


そこでは学生であっても、一般人からすれば英雄のような存在である


冒険者であれば学校出身というだけで勧誘されるほどだし、政治に関わるものであれば学生のうちから味方につけるべき相手だ


騎士団に入れば将来の団長・副団長、才能があれば将軍クラスが約束されたような存在なのだ


当然そんな学校なので、入学の条件は異常に厳しい

入学したらしたで、ついてこれない人間を甘やかしたりしない


しかしそんな現実を知って尚、入学したがる人間は非常に多い


年齢制限がないとはいえ、毎年定員の十倍近い人が集まる

貴族王族はもちろん、有名な冒険者の子供や知り合いなども集まり、その付き添いで来る人間も多数いるために、試験の時期になるととんでもない人数が集まる


当然それを狙って商売魂を発揮する連中も集まるので、試験が近くなるとそのへんのお祭りよりよっぽど盛況な状態になる


そんな大量の人間がいるなかで、試験会場に向かって真っ直ぐ歩く二人組がいた


周りの人間はほとんどが気にも止めずに自分の用事を済ませようとしているが、時折何人かの人間は二人を見て「ソウケン」と呟く


本人達はそれに気づいてはいるが、気にすることなく真っ直ぐに歩いている


「すごい数の人、話には聞いてたけど見ると聞くとでは大違いね」


そう言ったのはアリサだ


めでたく16才を超え、入学の最低条件である年齢という課題をクリアした


見た目はほとんど変わっていないが、「可愛い」から「綺麗」と呼ばれるまでの変化の途中のような、この時期特有の美しい顔立ちをしている


薄い青の髪を肩まで伸ばし、目から覗く虹色の輝きは、彼女の美しさの引き立て役に思えるほどにしか存在を主張していない


「・・・もっと経験するさ」


そう言ったのはグラハルトだ

相変わらず黒に金の装飾が入った全身鎧と兜をつけており、表情がわからない


二人はその後特に会話をするでもなく、試験会場へと進んでいった



――――――――――



「・・・餞別をやる」


グラハルトは試験会場が見えてきたあたりで、唐突にそう言った


アリサはグラハルトから直接ものをもらったことなど数えるほどしかない

基本的に自分で倒した相手のものを売るなり、工房等で加工してもらう

さすがに食事や宿代などはグラハルトが用意するが、それ以外においては自分でやるのが基本であった


なのでグラハルトのこの発言はかなり珍しい


アリサは思わずクスッと笑みをこぼしてしまう


「フフッ、どうしたの急に?そんなに心配?」


グラハルトは相変わらず表情が見えないが、きっと兜の下は照れているのだろう

明後日の方向を向いてアリサを見ようとしない


「・・・これだ」


そう言ったグラハルトの両手には、いつの間にか一本づつ剣が握られていた


アリサはその剣をじっと見つめ、自分の剣と見比べる


アリサが持っている剣は、決して強力なものではない

そのへんの武器屋でも稀に出回るような、業物より若干劣るか?という程度のものだ

自分で集めた材料で、工房で自分専用に加工してもらった一品物ではあるが・・・


それと比べて、目の前の二振りの剣は明らかに業物だった


普通の長剣よりも短めの刀身は、細身でありながらも華奢には見えない

滑らかな表面は、油を塗っているかのように艶やかな輝きの鉄色をしている

両刃で何の飾り気も無い刀身の真ん中を、細長い小指ほどの太さの溝が走っており、その溝の中には英語で文字が書かれていた


「なんて書いてあるの?」


アリサは見たことの無い文字を指差しながら訪ねる


「・・・Growthグロウス、・・・成長という意味だ」


アリサは剣をじっと見つめて呟いた


「綺麗・・・」


「・・・剣の名前でもある、・・・俺の願い・・・でもある」


実はこの剣

グラハルトが持つ知識と技術と材料とコネクションを最大限使った、業物なんてレベルを遥かに超えた一品だった

武器としての強さはもちろん、秘められた特殊能力は一流の冒険者でさえ喉から手が出るほど魅力的な効果がある


アリサはそこまで理解しているわけではないが、自分の剣と比べて明らかにレベルの高い剣を見て、グラハルトがどれだけ心配しているかわかってしまう


「フフッ、お父さんありがとう」


「・・・」


グラハルトはやはり照れているようだ


顔が明後日の方向を向いたままである

むしろそのまま歩いていてつまづかないのか心配になってしまうが、結局つまづくことなく試験会場までそのままだった



――――――――――



試験会場は街ほどではないにせよ、人がごった返していた

明らかな冒険者風の者もいるし、魔導師と思われる者もいる、中にはどう見ても戦闘なんてできなさそうな金ぴかの服を着たヤツもいる


(金ぴかのヤツはあの豚と同類ね・・・)


などと内心呟きながらアリサは会場を見回していた


「・・・あっちだ」


グラハルトはそう言って歩き始めた

アリサは観察を止め、グラハルトについていく

その先にあったのはどうやら受付のようだ



――――――――――



「・・・頼む」


受付につくなりグラハルトはそう言うが、その単語だけで何を言いたいかわかる者は少ない

案の定受付の女性はきょとんとした顔をしているが、目の前の人物が蒼犬だと気づいたようで、驚いた表情になる


アリサはあわてて言い直した


「すいません、受験生は私です

おと・・・彼は付き添いです」


そう言ってアリサは受験願書と推薦書を渡す

受付の女性はすぐに復帰し、人の良さそうな顔で仕事を再開するが、推薦書の内容を見て再び驚いた顔になる


「・・・あの?大丈夫ですか?」


受付の女性はハッとなって復帰したが、その顔は上手く笑顔を作れていない

口角がヒクつき、悪役が嫌な笑いをしているようだ


その後受験票を渡され、指示があるまで周辺で待機となった



――――――――――



「僕を誰だと思っているんだ!」


無粋な声が響き、待機時間に緊張が走った


お疲れさまでした


しばらくは入学試験が続きます

蒼犬の出番はしばらくありません(笑)

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