表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第二章「過去編」
16/96

災害級特別討伐対象5

「・・・っ!」

「きゃあぁ!」

「がぁぁぁああ!」


三人に強力な捕縛魔法が使われた

その魔法は大型の魔獣に対して使うもので、弱い魔獣や人間相手に使うと、拘束力が強すぎて相手を潰してしまう強力な魔法だ


複数人による使用で発動する魔法であるこれが使われたということは、周りには何人もの人間がいるということを示している

それも「敵意」を持った人間が、である


「・・・悪いが命令なんでな・・・」


騎士の男がそう話し、拘束されている三人を見る


(対大型魔獣用の拘束結界魔法だと!?

俺はともかく人間に使う魔法じゃねぇぞ!

やべぇ、抜け出すのに時間がかかる!)


アルドラは焦っていた

グラハルトとの戦いで消耗しているとはいえ、人間程度の魔法で死んだりすることはない

だがそれは彼が悪魔だからであって、生身の人間であるグラハルトとアリサにはかなりキツイハズだ


(・・・蒼犬は大丈夫みてぇだな)


見ればグラハルトは多少屈んではいるものの、明らかに抵抗している

自分と同じく時間をかければ突破できるだろう


問題はアリサだ


(ヤバい・・・

拘束系の魔法くらったのは初めてか・・・

クソッ!間に合うか?)


アリサのほうは明らかにキツイようだ

地面に押さえつけられているように座り込み、両手を使ってやっと上半身を起こしているような状態だ

その状態も全身を圧縮されるように押さえつけるこの魔法の中では、あまり長く耐えることはできないだろう


アルドラが焦って魔法の突破をしようとしている時に、新しい声が現れて意識を逸らされる


「ブヒャヒャヒャ!とうとう捕まえたぞ蒼犬!」


そこにいたのは豚だった


正確には太った豚に似ている人間なのだが、あまりに体型が丸く、あまりに顔が醜いため、豚が豪華な服を着て二足歩行しているようにしか見えない


「ブヒャヒャ!一年前からずっと探していたぞ!

ついに魔眼の娘が手にはいる日が来た!

ブヒャヒャヒャ!今日は笑いが止まらんわ!」


笑い方が豚の鳴き声に聞こえるのは気のせいではない、本当に歩く豚のような人間だった


「・・・貴様だな?」


グラハルトは豚に向かって問いかける


「ブヒャヒャ!あぁそうさ!話は騎士団長に持たせた魔道具で聞いている!

貴族の息子を殺したのも!魔眼の村を潰したのも!執事の陰謀に手を貸してやったのも全てワシじゃ!

ブヒャヒャヒャ!」


「なんっ!?・・・ですっ!?・・・って!?」


アリサは怒りに震え、拘束魔法に抵抗しはじめる

普通ならもはや全身の骨が折れていてもおかしくないほどの圧力の中で、である


「ブヒャヒャ!無駄無駄!おい!魔法部隊!」


豚が命令すると、圧力が強くなる


「うあぁっ!」


気づけば周りには大勢の人間がいる

騎士団とは違う鎧や、魔導師のような格好の人間もいる

おそらく豚の手下なのだろう


「ブヒャヒャ!やっと魔眼が手にはいるのぅ!

安心するがいい!お主の目はワシがしっかりと使ってやるからのう!」


目を使う、と聞いてアルドラは疑問を口にした


「目を使う?

意味がわかんねぇ、目なんか奪って何の意味があるんだ?」


豚は醜い声をさらに醜い音にして笑い始めた


「ブヒャヒャヒャ!お主悪魔のくせに知らんのか?

ブヒャヒャヒャ!

虹色の魔眼は文字通り魔眼じゃ!

目こそが力の源なのじゃ!目を奪えば魔眼持ちはただの人!

じゃあその目を他の誰かに埋め込んだらどうなるか・・・、簡単な話じゃ!」


アルドラは唖然とする

斬新なアイディアだからではなく、豚は頭の中身まで豚だったかと呆れて唖然としているのだ


魔眼は証明のようなものにすぎない

祝福を与えられた副作用と言ってもいい

魔眼があるから力があるのではなく、力があるから魔眼が表れるのだ


だが例えそれを言ったとしてもこの豚は信用などしないだろう


「ブヒャヒャヒャ!触れもしない悪魔どもでは思いつきもしなかったか?

ブヒャヒャヒャ!

ガキの目ではワシに入らんからなぁ、成長するまで待っていてやったが頃合いじゃ!

蒼犬にも一年前の恨みをきっちり晴らす必要もあるしのう!」


アリサはその言葉を聞いて唐突に思い出す

こいつは屋敷を抜け出した日に、大通りでブッ飛ばされたあの豚だ

なぜか思い出した途端、安心してしまう


その安心は恐らく、近くでわずかに屈んでいるだけのグラハルトがいるからだろう


一年前と同じように、ブッ飛ばされるシーンしか想像できない


「・・・十分だ」


その期待に答えるように、グラハルトは動いた


彼の鎧は発光し、盾も剣も淡い光を出し始める


何かの呪文のような言葉を唱えると、三人の周囲に白い光で描かれた魔方陣が表れる


「解呪!オールディスペル!!」


魔法のキーワードを言った瞬間、彼を中心にして淡い光が一気に弾ける


風のように優しくふわりと周囲に広がっていく


そして唐突に、バキバキとガラスを砕くような音が聞こえだす


パキーンと完全に割れた音が響いたとき、音がした場所にたっていたのは、何もなかったように立っている拘束されていたハズの三人だった


「・・・アリサ、・・・お前が殺れ」


アリサは次の瞬間に飛び出していた

一番近くにいる騎士団長の彼に近より、彼の剣を奪おうとする


彼は咄嗟に構え、剣を抜きやすいように少しだけ鞘から指で押しだした


だが


彼はもう片方の手を「動かさなかった」・・・


「やれ」


短く聞こえたその言葉は、アリサにだけはっきりと聞こえた



――――――――――



騎士団長から剣を奪い、彼が疑われることが無いように肩からタックルを入れて突き飛ばす


妙に軽い衝撃を感じながら、アリサの体格ではありえないほど騎士団長は吹き飛んだ


「ブヒャッ!?ま、魔法部隊!」


豚が叫びに応じて、魔導師たちが動こうとする


「させるかよ!」


後ろからアルドラが援護する

闇が彼の周囲に集まり、いくつもの球体になっていく


「貫け!ダークアロー!!」


闇魔法の初級だが、詠唱がほとんど必要なく、使い手の能力に応じて何本も矢を発生させられる魔法を放つ


当然悪魔であるアルドラが放つそれは、一発一発がとんでもない破壊力を持っている

しかも数が人間ではありえないほど大量に出現する、その数は実に20本


普通の魔導師が同じ威力の矢を打つなら1本で全ての魔力を使いきると言えばどれだけ凄まじいかわかるだろう


当然その矢は防御など無関係に魔導師達を貫き、アリサの進む道を開いていく


だが一人だけ、矢を逸らして完全に回避した人物がいた


「貫け!ファイヤアロー!!」


アルドラの半分ほどの威力の矢が2本生み出され、アリサに向かって放たれる


「バカ!避けろ!」


アルドラはそう叫んだ

なにせアリサは矢が見えていないかのように走り続けている

走るアリサの側面から、魔法の矢が襲いかかる


「聖剣!ディバインウェイブ!!」


突如、神々しい緋色の光の帯がアリサと矢の間に入り込む

矢は帯にぶつかり、消滅した


「蒼犬か!」


魔導師の男はそう言ってグラハルトのいた場所を見る

「いた」場所を見たのが間違いだった

彼はすでにその場所を離れ、上空高く飛び上がり、次の攻撃を準備していた


「閃光剣!フラッシュブラスター!!」


彼は本来両手で扱うのだろうその剣を天高く掲げ、魔法のキーワードを唱える


彼の剣が眩く輝き、一瞬あとには大量の光の矢が飛び出す

一つ一つは大した威力ではないが、数が大量で、今もまだまだ発生している

光の矢は周囲を破壊し、誰もが自分を守るだけで精一杯だ


「チッ!さすがだな

まぁいい、あの豚野郎だけでも・・・ッ!?」


光の矢から身を守っていた魔導師は、自分の後ろを見て驚愕した


空中で魔法を打ち続けているハズのグラハルトが目の前にいたからだ


彼の手には、見たことがない美しい煌めきをした、刀身が少し短めの剣を持っている


「・・・邪魔だ」


(ダメだ、速すぎる・・・!)


魔導師はアルドラと同じように斬られ、同じように体が二つにわかれた



――――――――――



「ブ・・・ブヒャ!ブヒャアアアァァァ!!」


そのすぐあと、豚の鳴き声が聞こえた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ