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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第二章「過去編」
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災害級特別討伐対象4

グラハルトとアルドラの決着がつく少し前


具体的に言うならアルドラがダークウェイブという名の魔法で、屋敷を半壊させるあたり


屋敷に謎の二人が入って行ったという通報を受けた騎士団が屋敷の前に詰め寄っていた


だがそこから先に進もうとしない

いや、正確には進むことができない

なぜなら騎士団の先頭で、一人の少女が立ちふさがっていたから


「貴様!なぜ我らの邪魔をする!」


そう一人の騎士が言った瞬間、アルドラの魔法が屋敷の半分を吹き飛ばす


ほとんどの騎士は唖然とした顔で、何が起こったかわからないといった感じだ


「足手まといよ、あれをあなたたちは止められるの?

・・・少なくとも私を倒せないなら、行くだけ無駄」


アリサの回りには何人かの騎士が倒れている

アリサを倒して無理矢理通ろうとした結果だ

誰一人として死んでいないあたり、どれだけレベル差があるのかわかるというものだ

それがわかっているから騎士達も無理に進もうとはしない


「貴様こそわかっているのか!?

我々の邪魔をするということは国の邪魔をするということだ!

国家反逆罪で指名手配されても文句は言えんと言うことだぞ!」


言い切った瞬間、グラハルトを越えることができる凄まじい剣速でアリサが剣を振った


今しがた話していた騎士の男は何をしたのかわからないといった表情でアリサを見る、自分の鎧の繋ぎ目に使っている金具が斬られたと気づいたのは、その鎧が地に落ちてからだった


「・・・ッ!」


アリサは冷ややかな視線を送りながら、淡々と話す


「・・・あなた達がするべきなのは、ここに入ることじゃない

そこにいる屋敷の住人達を安全な場所に送ることよ」


アリサが視線をすぐ横に向ける

そこにはかつてアリサの後ろにあった屋敷の主人と、その家族と使用人が脅えるように座り込んでいた



――――――――――



グラハルトとアルドラの戦いが終わったようだ

グラハルトはいつの間にか白い鎧に変化しており、神々しい波動でアルドラを真っ二つに斬った


体が二つに分かれても生きているあたりさすが悪魔といったところだ


「終わったようだな」


そう話しかけてきたのは先ほどの騎士だ

どうやら彼は偉い立場らしい

屋敷の人間を部下にまかせて、彼は戦いをずっと見ていた


「・・・ありえない戦いだった・・・な」


そう聞いてアリサはフッと笑ってしまう


そして彼の言葉を否定する言葉を放つ


「普通よ、彼にとってはね」


そう言ってアリサは駆け出す

騎士の男はその言葉に目を見開き、何かを言おうとしたようだが間に合わなかった



――――――――――



「・・・ッ!」


アルドラは目を覚ました

切断されたはずの半身はつながっており、服だけが斬られた事実を証明している


「・・・なんで治療したんだ、蒼犬」


そう呼び掛けた先にいたのは、いまだに白く変化した鎧のままのグラハルトだった


「・・・それとも白犬とでも呼ぶか?」


「・・・好きにしろ」


クックックと笑うアルドラだが、グラハルトは別段気にした様子でもないようだ


殺気を放ちながらグラハルトはアルドラに言う


「・・・聞きたいことがある」


「・・・もう殺気は出さなくてもいい、俺はお前に勝てねぇ

逃げるつもりもねぇし、聞きたいことは話す

・・・今は、だけどな」


彼がそう言い終わるのと同時に、アリサが到着する


「・・・」


冷ややかな視線を送るアリサだが、彼女と目が合ったアルドラはおもむろに語り始める


「どっから話すか

まずは虹色の輝きの真実からか?」


アルドラはそう言って切り出した


「虹色の輝きが万物の才能・・・まぁ間違っちゃいねぇんだけどよ

分かりやすく言っちまうと進化の種ってとこだな

今いる魔王とか魔神ってのはみんな昔魔眼持ちを利用したヤツがほとんどだ

わかるか?

自分が教えたことを即座に理解してそれ以上のものを作り出すんだ

・・・戦いに限った話じゃねぇ、道具・戦略・芸術なんでもだ

上手く使えば一段高みへ登れる、いや一段なんてレベルじゃねぇ、ただの下級悪魔から魔神まで登り詰めたヤツだっているからな

・・・俺は虹色の輝きが欲しかったんだ・・・」


一気に話しはじめるアルドラ

時折アリサを見るが、その顔はまるで宝物を見るようであり、眩しくて直視できないとばかりにすぐに目を逸らす


それが気になりながらもグラハルトは気になっていたことを尋ねる


「・・・さっきの質問だ

・・・なぜこんな小細工をした?」


屋敷を吹き飛ばし、最後に放った魔法は本当に国を滅ぼせそうなほどの力を持っているアルドラが、たかが人間の女一人に手をかけすぎている

力づくでどうとでもできるはずのアルドラがわざわざこんな遠回りをしているのが腑に落ちていなかった


「虹色の輝きは世界に祝福される、世界に嫌われてる俺達悪魔は直接干渉できないのさ

動物も植物も運でさえも味方だからな、敵に廻っちまうとあらゆる方面から妨害が来て近づくことさえできねぇ

こうやって目の前にいるだけでも奇跡みてぇなもんなんだぜ?

・・・唯一人間だけが干渉できる存在なんだ」


「・・・そんな理由で・・・村のみんなをっ!」


アリサは怒りに身をまかせ、剣をアルドラに向かって降り下ろした


剣がアルドラに触れたとき、ガキンッと生身に当たったとは思えない音を出し、逆に振った剣のほうが折れてしまう


「・・・た・・・助かった?」


驚いていたのはアルドラのほうだ

何せ世界に祝福された存在と嫌われた存在だ

何かしらの祝福が働いて殺されると、少なくとも刃が通ると思っていただけに、「普通」の状況に戸惑ってしまったのだ


しかしすぐに冷静に戻り、話の続きを始める


「・・・言っとくがな、全部を俺が仕組んだわけじゃねぇぞ?

悪魔ったって運命まで操ることはできねぇ

俺がやったのはアリサがこの屋敷に来るようにデマを話したのと、アリサの村に騎士団を派遣させるように屋敷の主人に話しただけだ」


グラハルトはまたしても何か違和感を感じる

アルドラが嘘を吐いている、という感じではない

アルドラが黒幕ではないような、アルドラでさえも何かに利用されたような、アルドラの影に隠れた何者かの存在を嗅ぎとる


「・・・貴族の息子については何か知っているか?」

「あぁ、あいつか

死因とかって聞かれてもわかんねぇぞ?

悪魔はんなことに興味ねぇからな

ただあいつはなかなか良いタイミングで死んでくれたよな

こっちとしちゃあアリサに直接近づくことなく、しかし俺の意思である程度干渉できる距離を確保できたんだ」


違和感はますます大きくなった

アリサも怒りが鎮まって来たのだろう

同じ違和感を感じたようで、怪訝な表情でアルドラを見つめている


「・・・なぜ村のみんなを殺したの?」


話しかけられたアルドラはビクッと体を震わせる

悪魔にとって虹色の輝きとはそれほどまでに恐ろしいものなのかと思ってしまうほどに恐れている


「・・・さっき言った通り、騎士団を派遣するようには言ったし、話が進みやすいように小細工はした

だが・・・俺は殺せとは言ってない

そもそも今まで執事のフリしてたんだ、たかが執事にそこまで命令できねぇ

誰が命令したかわからねぇが、お陰様で上手く利用させてもらえたよ

村人が殺された時点で主人に全部擦り付けて、アリサに救いの手を・・・って予定だったんだ」


第三者がアルドラさえ利用して計画を建てたと確信するには、グラハルトにとって十分すぎた


誰かが後ろにいる


「もともと一年前だって俺はアリサを助ける予定だったんだぜ?

あんときゃ俺がアリサを嵌めた形になっちまったからな、助けに行こうとしても邪魔がはいっちまう

もうなりふり構ってるヒマはねぇかと思えばお偉いさんが町に来る

そっちを執事として相手してればアリサはもう逃げ出しちまってた」


「・・・助ける?」


「何度も言ってんだろ、悪魔は虹色の輝きに干渉できねぇ

言い換えるなら、悪魔から何かすることはできないが、虹色の輝きからなら一方的に干渉できるんだ

逆に言うなら、虹色の輝きに仲間だと認められればその後は自由だ

虹色の輝きが仲間だと思ってる限りいくらでも干渉できる

敵として会えば死を、味方として会えば確実な進歩を与える

俺はアリサに味方と認識される必要があったんだよ・・・」


アルドラはふぅ、と息を吐いた

この状況ではもう味方と認識されるのは絶望的、次の魔眼が生まれるまで大人しくしていようと諦めたようだ


「なるほどな」


不意にそう言って近づいてきたのは、先程アリサと話していた騎士だった




「三人とも死んでもらう」




そう言った瞬間、三人を囲むように巨大な魔方陣が5つ重なりあって出現する


強力な捕縛魔法が発動し、三人に襲いかかった


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