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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第二章「過去編」
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災害級特別討伐対象3

戦いは唐突に始まった


甲高い金属音が連続で響き、大悪魔と名乗ったアルドラの姿がぶれる、そしてアルドラの周囲が一瞬で幾つもの傷が出来ていく


「ハハハッ!人間にしちゃなかなかはえぇけどな!

俺様には届かねぇ!」


アルドラはいまだに姿がぶれているが、それが高速で剣を避けていると気づけるものは恐らくそう多くはいない


「・・・一つ聞こう」


甲高い金属音を響かせながらグラハルトが話す


「あん?」


ぶれながらアルドラは答える


二人にとってこのくらいはまだ様子見なのだろう

会話する余裕があるどころか、アルドラにいたってはお手玉くらいやりだしそうだ


「・・・なぜこんなことをした?」


「なぜ?悪魔が人を騙すのに理由がいるのかよ?」


アルドラは三日月を顔に張り付けてそう言う

その顔は端から見ればまさに悪魔と言えるのだろうが、グラハルトとアリサは言い知れぬ何かを感じ取った


「・・・これほどの強さ・・・、・・・小細工の必要は無い」


グラハルトは何かが何かはわかっていないが、確かな違和感を感じとる


「・・・だとしても、話す必要はねぇよなぁ?

そうだろ蒼犬ぅぅう!」


瞬間アルドラが手を前に出し、一瞬手が光ったかと思うと次の瞬間に壁が吹き飛んだ


「チッ、かわしたか

てめぇも回避能力だけは高いみてぇだなぁ」


「・・・一緒にしないでもらおう」



――――――――――



「ご主人様、逃げますよ」

「ア・・・アリサ・・・、私は・・・一体何を・・・?」


もはやパニックになって何がなんだかわからなくなっているのは館の主人だ


アリサは早々に自分では役に立たないと判断し、周囲のフォローにまわっている


「説明はあとにしましょう、下手をすれば館ごと吹き飛びます」


そう言った瞬間、戦っている二人の間にあった壁が吹き飛んだ


「・・・ああなりたくなければ急いで」


主人は顔を痙攣させるしかなかった・・・



――――――――――



常人には見えないほどの速度で斬撃と恐らく魔法らしい攻撃が飛び交う


その攻撃は嵐のように周囲を破壊し、爆発のように全てを吹き飛ばしていく


「そろそろ飽きてきた、死ねよ蒼犬」


そう言ってアルドラは一度大きく引き下がる

移動した先で両手を前に突きだし、何かを呟いた


「消えろ!ダークウェイブ!!」


一瞬アルドラの周囲に魔方陣が展開され、その魔方陣の外側に黒い炎のような動きをする物質が発生する

すぐに燃え上がるかのごとく巨大になっていき、触れるものを粉々に削り取っていく


「ハハハッ!闇に物質で対抗する術は無い!

塵になっちまいな!」


全てを粉砕する闇

人に対抗できるとは思えない圧倒的な威圧感と質量を持ったその攻撃は、屋敷の半分を巻き込んでグラハルトを飲み込んだ


「ハッ!かの蒼犬も悪魔にゃかなわなかったみてぇだな・・・

興醒めだぜ」


アルドラが冷めた瞳でグラハルトがいた場所を見る

と言っても屋敷は文字通り半壊しており、いた場所というよりいたらしい場所、というのが正しいが


ガラッと屋敷だった残骸が崩れ、そこからグラハルトが立ち上がる


「・・・いい魔法だ、・・・相手の足場を崩す魔法か」


しれっと言ってのける

アルドラは青筋を浮かべているが、同時にありえないと驚愕している


彼の放った魔法は闇魔法の中では中クラスといったところだが、人間と違い悪魔が放つそれは人間レベルで抗う術は無いと言ってもいい

それこそ神が残した伝説級のアイテムや、魔法を極めた人間が持てる技術と魔力の全てを使ってやっと防げるようなレベルなのだ


それを彼は耐えただけでなく、本気で足場を崩す魔法だと思っているほどにしかダメージを負っていない


そんなことが可能なのはアルドラより上位の悪魔、魔王や魔神と呼ばれる存在しかありえない


「・・・今度はこちらの番だな」


グラハルトはそう言うと手を前に出し、何かを呟いた


その呟きにアルドラはさらに驚く


(バカな!エンシャント・ルーン言語だと!?人間達はとっくの昔に失伝したハズだぞ!?)


グラハルトの手には魔方陣が浮かび上がる、そして彼の前方に蜃気楼が見えるほどの熱気が発生した


「爆炎!エクスプロージョン!!」


魔方陣が一際赤く輝き、空間が突然大爆発を起こす

炎の雪崩があらゆるものを焼きながら吹き飛ばしていく


「こっのっおおぉ!!」


アルドラは闇を体の前に集め、それを盾にしている

だがその盾も端から霞に変わり、どんどん小さくなっていく


炎が過ぎ去ったあとで残っていたのは、服が所々焦げたアルドラだけだった

建物自体は言うまでもなく全壊、残っているのは瓦礫だけである


(馬鹿な!なんで人間がエンシャント・スペルを使えるんだ!?)


アルドラの頭は理解が追い付かない


「なん・・・っで!」


アルドラは全身から魔力を解き放ち、彼が使える最強の魔法を使う


「なんで!この俺様が!」

彼の周囲が闇色の透明なドームに包まれ、その中心にいる彼の手に圧縮されていく


「人間!なんかに!」


圧縮された闇は握りこぶし大にまで小さくなり、見るだけで恐怖という言葉を思い浮かべるような気配を放っている


「ビビんなきゃならねぇんだあああああぁぁぁ!!」


彼はそれを前に押し出すようにして、最強最悪の一撃を放つキーワードを唱えた


「消滅!インフィニット・アビス!!」


圧縮された闇が解き放たれる

元のサイズに戻るように拡がっていくそれは、触れるものを粉砕し、塵にまで分解していく

まるでブラックホールのような闇がどんどん巨大化していく様子は、まさしく恐怖

人間には立ち向かうことはおろか、その理を知ることさえ許されない絶対の死


だがその絶対の死を前にあってグラハルトは、脅えるでも諦めるでもなく、淡々と対抗手段をとった


「形態変化!ディバインナイト!!」


そう言った瞬間、彼を包み込むように魔方陣が幾つも展開される

複雑に絡み合った魔方陣は立体感を持ち、球形の一つの魔方陣として完成する


魔方陣が完成すると次は彼自身が変化を始める

黒かった鎧は白く、ボロボロだったマントは新品のように綺麗になり、白い生地に金色のラインが犬を象ったような紋章を描く


そして立体型魔方陣がその形を変化させ、逆三角形を描いたかと思うと目映い光を放つ


次の瞬間には逆三角形の巨大な盾が出現した

中心には背中と同じ犬の紋章があり、その周囲を複雑な模様をした金色のラインが走っている


その巨大さは、屈んだグラハルトの全身を隠しきるほどに大きい


グラハルトはその盾を目の前に構えて半身になり、肩を盾に押し付けている


そして対抗手段のキーワードを言った


「絶対防御!ディバイドシールド!!」


瞬間


グラハルトの前に薄い膜が展開される

その膜は境界線のように横に拡がり、高さはゆうに10メートルを越える


闇が拡がり、膜とぶつかった


「この国ごと!消えちまええぇぇ!」


アルドラは自分の放った闇が視界を塞いでいるため、グラハルトに起こった変化がわかっていない


だからこそ彼は気づけなかった


グラハルトが展開した膜は防御魔法ではないということに


彼が使っているのは「切断」の魔法だ

それも「空間の切断」なのだ

切り離された空間は完全に干渉できない別空間とほぼ同じ


闇は膜にぶつかった場所から先に進むことはなかった


そしてグラハルトは、次の一手を放つ


「聖剣!ディバインウェイブ!!」


盾と反対側の手に持っている剣も彼と同様に変化していた

片手でも両手でも使えるバスタードソードは、以前は刀身の先端は両刃で、真ん中ほどから半分無くなったような形状で片刃だった


今は全て両刃で刀身は幅広型になっており、中心は透き通ったクリスタルのような物質でできていて、重量を感じさせる

本来なら両手剣であろうその剣を片手で振り下ろし、キーワードを唱えた


空間が切られたかのように空中に白い軌跡が出現し、前方に向かって光が溢れている


何かが爆発する直前のようなそれは、少ししてから突然その力を解き放った


神聖さを表現するような半透明で緋色の光の帯が、斬られた空間から爆発するような速度で飛び出す


干渉できないはずの膜を貫通し、闇を切り裂きまっすぐにアルドラへ向かっていく


切り裂かれた闇から突然光の攻撃が飛んできたため、魔法の制御に集中していたアルドラはもろに食らってしまう


「がっ・・・っ!」


そして闇の向こうに無傷で立っている「蒼犬」だったはずの白い騎士を見て、彼は絶望に近いものを感じる


(ディバインナイトだと・・・、なんてこった・・・

あいつルーンナイトだったのかよ・・・)


「・・・クソが・・・」




アルドラは体を肩から斜めに切断され、人間なら即死する状態にあってまだ生きていた


だがそれだけだ


捨て台詞を言う暇もなく、アルドラは意識を失った・・・


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