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ソウケンと呼ばれた親子  作者: タリ
第二章「過去編」
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災害級特別討伐対象1

毎度読んでいただきありがとうございます

気がつけば累計PVも四桁を超え、お気に入り登録までしていただいた方もいらっしゃって感動でございます

この場を借りてお礼を言わせていただきます


ありがとうございます!


さてタイトルからわかるかもしれませんが、ここからしばらく連話となります


ただでさえ説明が少ない話ですので、読者の皆様には申し訳ありませんがわかりづらいかと思います

しかしそれでも読んでいただける方々に更なる感謝を、そして貴重なお時間を私の話に割いていただいた分だけ精進していこうと思っております


今後とも「ソウケン」をよろしくお願いいたします

特別討伐対象というリストが冒険者ギルドには存在している


ギルドの中でもベテラン以上にしか閲覧できず、一般人や普通の冒険者には情報を渡すことさえ犯罪になるほどの極秘事項だ


内容は簡単


人間・亜人間・魔物・精霊あらゆる存在を問わず、存在そのものが危険であると判断される存在のリストだ


そのリストに乗っているのは例えば山のように巨大なドラゴンであったり、殺した相手を取り込んで巨大化していくゾンビが巨大化しすぎたものであったり、無差別に周囲を破壊する暴走した雷の精霊であったり


相手の規模や想定される被害によって、災害級や国家級等の名称が着く


なぜそんな話をしているかと聞かれるならば、この日がその災害級特別討伐対象がリストに追加される切っ掛けの日だからだと答えることができる


その切っ掛けとは・・・



――――――――――



「・・・何もない」


そこは廃村だった

廃村となってまだそんなに経っていないのかもしれない

家々は焼けてはいるものの、まだ家としての形を残していて雨を凌ぐくらいはできそうだ


田畑はたくさんの人間に踏み荒らされたのかも知れない

動物よけの柵がところどころ残っていて、かろうじてそこに畑があったらしいことがわかる


草は生え放題だし、人がいる感じもしない


ほんの数年前までここに村があり、人が住んでいたと言われてもすぐに信じることはできない


住んでいた本人以外には・・・


「・・・なんにも・・・無くなっちゃった・・・」


アリサの顔は今にも泣き出しそうだ

冒険者としての美しく凛々しい顔はなりを潜め、まるで大切なぬいぐるみが無くした少女のような顔をしている


そんな彼女に声をかける人がいた


「おーい、あんたらこんなとこで何しとる」


そう言って近づく男はアリサを見て驚く

正確にはアリサの目を見て、なのだが


「ア・・・アリサか!?」

「もしかして・・・アラドさん?」


アラドと呼ばれた男はシワの刻まれた顔をくしゃくしゃにして、涙を流し始める


「アリサっ!無事で良かった!俺はもう心配で心配で・・・」


涙をぼろぼろ流しながら話す男は情けない顔をしている

普通にしてればちょいワルオヤジ風のいい男なのだが・・・、パンツェッタ○・ジローラ○そっくりな見た目であることを追記しておく


「おじさん・・・」


「そいつは誰だ?」


いきなりギロッという音が聞こえそうなほどの鋭い目付きでグラハルトを睨む

今にも噛みつきそうな顔をしているが、グラハルトは別段何もしない


「・・・」


「おじさん、彼は私を助けてくれた人よ

今日までずっと守ってくれたの」


それを聞いたアラドは姿勢をピンと正して綺麗な90度の礼をする


「あざーーーっしたーーー!!!」


「・・・」


グラハルトはふいっと明後日の方向を向いてしまう

アリサはそれが照れているという事に気づいた


しかしそんなことを楽しんでいる場合でもない、何故村が無くなったのか、彼にしか聞けないのだろうから


「おじさん、一体何があったの?」


アラドは苦虫を噛み潰したような表情をして、絞り出すように声を出した


「・・・とりあえず向こうに行こう」


そう言って村の奥を指差して歩き始めた



――――――――――



そこは墓場だった


墓といっても簡素なもので、盛り上がった土の上に様々な品物が置いてある

おそらくは生前の本人達のものであろうそれらは、剣もあれば指輪もある


それを見るアラドの目は涙で滲んでいる


「アリサが出発したあとにな・・・」


アラドは何があったかを話し始める、顔は苦しそうに歪んでいる

それだけで何があったか想像できそうだ


アリサもグラハルトも黙って聞くことにしたようだ


「ありゃアリサが出発してから一週間ぐらいたったころだったな

迎えに来た神官どもがまた来たんだ、アリサが拐われたってな

・・・色々あったがそんときは別に何もしないで帰ったさ

こんなんなっちまったのは・・・一年前くれぇだなぁ」


一年前と聞いてアリサはまさかと思う、グラハルトに連れられて逃げ出したのはちょうど一年前だ


「・・・アリサがある貴族の命を狙ったって話で騎士団が派遣されてきたんだ

生まれ故郷のここに隠れてるんだろってな

意味がわからねぇ、こっちはやっとアリサの誘拐から立ち直ってきたころだってのによ」


そこまで聞いてグラハルトは地面に何かを描き出す

話を邪魔するつもりは無いようだが、話を聞いているとは思えない態度だ


「・・・グラハルト?」


「・・・それだけ聞けば十分だ」


アリサが問いかけるが、グラハルトはそれだけ言って黙々と作業を再開する


「・・・続けるぞ?

つってもそっから先は見ての通りだ、奴らはこっちの言い分なんか聞きやしなかった

話せば嘘を言うなと殺され、黙れば隠すなと殺される、逃げれば王に逆らう反逆者として殺される・・・

・・・・・・最後にはみんな殺されちまったよ・・・」


話をしている間アラドはずっと拳を握っていた、力を込めすぎて血が出ている


「酷い・・・」


アリサは口を両手で抑え、目に涙をいっぱいに浮かべている


「・・・ごめん、ごめんねアラドさん

私が逃げたりしなければ・・・、私があのまま死んでれば・・・っ!?」


突如として周囲に眩い光が溢れる、その光は地面から出ているようだった


気づけばグラハルトが目の前にいた

彼は口を開く


「・・・その先を口にしたらブッ飛ばす」


いつになく真剣な雰囲気で彼はそう言う


「・・・行くぞ」


「・・・うん」


どこに、とは聞かない

聞く必要がない

グラハルトに対する思いはあの日から変わっていないのだから


彼は「なんでも出来る」のだから・・・


そして彼ならきっと、行く場所は「あの場所」のはずだから


「待て!頼む!行く前に教えてくれ!

アリサ!お前は・・・っ!」


アラドが叫ぶが、最後まで言い切ることは出来なかった

なぜなら聞こうとして見たアリサの顔が、見たことが無いほどに美しい笑顔だったから


その笑顔を見ただけでアラドは彼女を信じられる


例え本当に誰かの命を狙ったとしても、命をかけて彼女を守ると誓う


「行ってきます!」


アリサがそう言った瞬間、光は一層輝きを増す


グラハルトが魔法の発動キーを言う


「転移!ワープゲート!!!」


アリサは迷いを吹っ切った、彼のためにも吹っ切る必要があった


自分が死んでいればよかったと言うのなら、自分を助けたグラハルトを侮辱することになってしまう

命を救ってもらい、戦いを教えてもらい、生きる術を教えてもらい、教えてもらってばかりであるというのに、このうえ彼を侮辱することなどできはしない


例え自分のせいで誰かが死んだとしても、今生きている自分を否定してはいけない


簡単に吹っ切れるわけではないが、少なくともその事実を背負って生きていかなくてはならない


弱い自分の心に渇を入れ、アリサは目を開く



――――――――――



そこはあの日と同じように雪が降っていた


見覚えのある道の向こうには、見覚えのある建物がある


昔と同じ景色、同じ空気、恐らく屋敷のなかには昔と同じ人が昔と同じように生活しているのだろう




アリサは一歩踏み出す




昔と違うこともある

アリサは強くなった




さらに一歩踏み出す




アリサには頼れる仲間ができた




さらに一歩、もう一歩、だんだん早歩きになってゆく




アリサには自ら戦う理由ができた




早歩きは加速し、ほとんど駆け出している




これは自分を守る戦いではなく、相手を殺すための戦いだ




さらに加速し、全力で疾走する




「私は今日、復讐する!」


どうだったでしょうか?

この一連の話において、アリサとグラハルトの関係・二人が特別討伐対象となった理由・意外なあの人との関係が明らかになっていきます


相変わらず設定の説明等や女の子成分・そもそも名前付きのキャラがほとんどありませんが、お付き合いいただければ感謝でございます

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