出会い
雪が降っている・・・
雪自体は特に珍しいものでは無いだろう。
地球という世界、その中の日本という国に住んでいた「彼」にとっても、それは特に気になることではなかった。
・・・身も凍るような寒さは別としての話だが。
その寒い雪の中に一人の少女がいた。
まるで隠れるように路地裏の角で、座り込んで目立たないようにしている。
雑多なものが散らばり、樽や荷物を入れる大きな木箱が無秩序に置かれているその場所で、「彼」は少女をじっと見ていた・・・
彼女も同様に、「彼」を見ている。
・・・どのくらい二人がそうしていたのか。
一瞬、一秒、一分、一時間・・・
そのどれもが彼等は感じられ、その全てが彼等の感じたものとは違うのだろう。
先に動いたのは「彼」だった。
「彼」は裾が擦りきれボロボロになったような黒いマントを羽織い、そのマントの上からでもはっきりと輪郭がわかるほどの重厚な鎧、恐らくは全身鎧を着けているのだろう。
兜はマントと同じ黒い色で、狼とも犬とも言えるような形をしている。
目の周りや、牙のような模様の部分に金色のラインが複雑に模様を描きながら走っている。
「彼」は黒いマントから、兜と同じように黒く、金色の複雑な模様が入ったガントレットを装着した手を出し、その手のひらを少女に向けて言葉を放った。
「・・・来るか?」
短い言葉。
放つ直前に大きく息を吸ってから放ったあたり、「彼」も緊張したのかもしれない。
残念ながら、「彼」の兜はフルフェイス型であり、表情を読み取れないために真相は「彼」にしかわからない。
放たれた言葉は、手に落ちた雪が溶けて消えるように儚く終わり、少女に聞こえたかどうかすらわからない。
二人の間に再び沈黙が訪れる。
「・・・うん」
手のひらに落ちた雪は溶けて消えてしまう。
だが溶けた雪が水になって残るように、彼女の言葉ははっきりと、しかし今にもこぼれ落ちるかのように危なげに、「彼」の耳に届いた。
「彼」は少女に近づき、マントを少し広げて少女が入るスペースを作る。
少女は隠れるようにそこに入り、「彼」の黒く金色の模様が入った鎧を掴む。
寄り添うように続く足跡が二つ、雪の上に存在を主張しては新たな雪に埋もれていった・・・