第2話「ロータリーロケットの少女」
高時がFDに駆け寄ってドアを開けた。
「大丈夫か!」
「無理・・・しすぎちゃったかな・・・」
FDに乗っていたのは高時が昼に会った女性だった。
「お前・・・あの時の・・・。まぁそんな話は後だ。とりあえず麓まで降りないと・・・車、動かせるか?」
「うん・・・」
高時もS2000に乗りこみ、2台共麓のPAに行く事にした。
秦峠の麓PA
「飲みな」
高時は女性にミルクティを差し出した。
「ごめんね・・・迷惑かけちゃって・・・」
「気にすんな。事故らなかっただけ幸いだったんだからよ。」
「すごかったよ、あの走り。まるで手品でも見ているようだったな。ところで、あなたの名前、なんていうの?」
「俺か?俺は香坂 高時。お前は?」
「アタシは杉崎 恵。よろしくね」
「ああ、こっちこそよろしく頼むよ。しかし、どうして俺が走っている所をやってきたんだ?」
「アタシ、18で峠を走り始めてからずっと一人で走ってたんだ。高校の時は走る仲間が居なかった。香坂くんが今日ここを走るって聞いたから、一緒に走れたらいいなと思って。一緒に走ってて、楽しかったよ。」
「そうか。そう言ってくれると、走り甲斐がある。」
「また、一緒に走りに来てくれないかな?」
「いいぞ。いつでも来い。昼の暇な時はいっつも大学のガレージで遊んでるからよ。そっちに居るから、いつでも声かけろよ。」
翌日
高時は大学のメンテナンスガレージに居た。
何時ものようにS2000をいじっていた。
その横にはADVAN Neova AD08が1セット2輪ずつ積んであった。
手前に積んである方のタイヤは黒いRE30、奥のタイヤは銀のTE37が着いていた。
TE37に履いているNeovaの方が太く、タイヤの横の部分には『RL』や『17in』とチョークらしき物で書かれていた。
そこに恵がやってきた。
「退屈だったから来ちゃった。邪魔だったかなぁ?」
「見てるだけなら、邪魔でも何でもないさ。」
高時はS2000にタイヤをはめながら答えた。
「あれ?、ホイールの色が違うけど、これは?」
「これか、これは適当に選んだ。前後とも無理矢理同じ物にしようと言う気は更々ないからな。」
「そうなんだぁ。じゃあ、ホイールは2セットしかないの?」
「いや、これだけじゃないな。ツレの家がやってるショップにたくさんある。」
「そこでそのS2000を見てもらってるの?」
「勿論。偶にそこで俺が作業やるしな。」
「あっ、もうすぐ授業だ。今日も走りに行くの?」
「ああ、行くぞ。」
「じゃあアタシも行くから、授業終わったら一緒に行こっ。それじゃあまた後でここに来るね!。」
そう言って恵は急いで講義会場に向かった。
と、高時の携帯からバイブ音がした。
「もしもし」
<よう、香坂。今大丈夫か?>
「どうした藤城。今なら丁度ヒマだぞ。」
電話の相手は藤城 俊矢。香坂の幼馴染で香坂のS2000のチューンとメンテナンスを請け負っている人物だ。
<そう言えば今日、秦の下りでマシンセットやるっつてたよな?>
「ああ、で、どうした。」
<俺は現地で待ってるから、大学からそのまま行ってくれ>
「オッケー。後、客人が増えたんでそれだけは知っておいてくれ」
<わかった。それじゃあ切るぞ>
高時は携帯をしまうと作業に取り掛かった。
そして放課後
ガレージの前に黒いFDが止まる。
FDから、恵が降りてきた。
その頃高時はS2000のウイング角を調整していた。
「かなり待たせちゃったね。準備はできたの?。」
「とりあえず大丈夫だ。このままでも行けるぞ。」
「そう、それじゃあ行こっか。」
高時はうなずくと、S2000に乗りこんでガレージから出てきた。
「じゃ、行くぞ。」
恵もFDに乗りこむとS2000の後に付き、2台とも出発した。
恵も加わり、新たな物語が始まった。
第3話に続く