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私はあなたを纏いたい! ~魔剣と始めるダンジョン攻略~  作者: 悦田半次


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私が1番

「好き、と言いますと?」

「羽衣璃、さっきも黒鎧の動画見てた」


 校門前でじっと見ていたのはそれが理由だったらしい。

 黒鎧が好きか――少々予想外の問いだが、つまるところ黒鎧とは自分なので好きも嫌いもない。普通だ。


 もっとも黒鎧は自分だけでは成り立たず、ディアの存在が必要不可欠となる。

 ディアを考慮するならば当然好きだが、迂闊に賞賛するというのはマズい。かと言ってあんなのクソですよと言うとディアの悪口を言うことになる。

 嘘ではなく、褒めすぎず貶さないギリギリの回答が必要だ。

 何故キル相手にこんな綱渡りめいた会話をしなくてはいけないのか。吸血鬼になってしまった一番の悲劇はそこかもしれない。


「まあ、強いなーとは思いますかねぇ。パーティー討伐が基本のモンスターも一人で倒しちゃいますし、戦い方も他の冒険者と違うこともあってついつい見ちゃうんですよね」


 ――これでどうだ……? 

 少し剣呑な雰囲気は薄れたが、代わりにキルの頬が微かに膨らんでいる。


「……羽衣璃には、私だけ応援してほしい」


 キルは拗ねていた。元々、他の冒険者に熱を上げているとやや不機嫌になることがある。

 羽衣璃も子供の頃(それこそダンジョンが出現する前の頃だ)、キルが他の誰かと遊んでいるのを見ると、「むむっ」となることがあったが、あれと似たようなものだろう。

 しかし割と色々なものに触手を伸ばすタイプである羽衣璃にとって、キルの要求を呑むのは困難だ。


「キルだけというのは難しい……っていうかほぼ無理ですけど、私が一番応援しているのはキルですよ。それは間違いありません」


 常日頃から思っていることなので、今度はさらりと口に出せた。

 応援している冒険者は両手に収まりきらないが、一番好きな冒険者は誰かと問われたら、それは我妻キル以外にあり得ない。


「私が、一番」


 キルの頬がほのかに赤くなり(かわいい)、身体が小さく左右に揺れた。

 これはキルが滅茶苦茶嬉しく思っていることの証左である。尻尾があったらブンブン振っていたに違いない。


「うん、分かった……」


 ぶっちゃけ何が分かったかは分からないが、キルが納得できたようで何よりである――


「黒鎧は、私が絶対に倒す」

「えっ」


 ちょっと待って欲しい。何故あの会話でその結論に辿り付いたのか。


「羽衣璃、安心して。もう少しでなんとかなるから」

「いや安心出来ませんが!? 一体何がどうなって――」


 その時、羽衣璃の脳内で警報が鳴った。

 それはダンジョンに放っていた使い魔達の一体が送ってきたもので、新たにダンジョンに迷い込んでしまった人間が現れたサインである。


「ごめん、キル。ちょっと用事を思い出しましたのでまた今度――!」  

「え? 待って羽衣璃」


 返事を聞かずに羽衣璃は走り出した。

 一人残されたキルは、寂しそうに鯛焼きを完食し、ぽつりと呟いた。


「ダンジョン行くか……」




 羽衣璃は残っていた鯛焼きを口に詰め込み、人目の少ない裏路地に入った。


「ディア!」

「お呼びかな?」


 陰から剣化したディアが姿を現し、羽衣璃の腰に巻き付く。


「緊急事態という訳だね。では、行こうか羽衣璃」

「はい! 変身!」


 走りながらも変身ポーズを決めた羽衣璃は鎧を装着し、生成したポータルの中へ飛び込んだ。





 この日、ダンジョンに迷い込んだのは年端もいかない少年だった。

 少年は脅えていた。

彼の眼前、巨大な爪を振り下ろさんとしているモンスターの名は爪熊。

 爪熊はヒグマ程のサイズだが、筋肉の密度がヒグマよりも大きく、力比べをすれば大人と赤子くらいの差が存在する。

 さらに爪熊の代名詞である巨大な爪は鉄の剣に匹敵する切れ味を持ち、これによって多くの新米冒険者がアバターを破壊され、蘇生エリア送りにされた。


 新米冒険者にとっての悪夢であり、新米を脱した者達からも油断ならぬ相手と警戒されるモンスター――それこそが爪熊である。

 では、そんな爪熊に一般人が邂逅したらどうなるのか?

 その答えは数秒後に明かされる――筈だった。


「おりゃああああああああああ!」


 羽衣璃の跳び蹴りが、爪熊の横面に炸裂し転倒させた。

 空中で一回転した羽衣璃は、爪熊と少年の間に割り込むように、鮮やかに着地。

 少年は生きている。間に合ったのだ


「大丈夫ですか?」


 人間の声だったこともあってか、最初は羽衣璃の姿に驚いていた少年は小さく頷いた。

 ひとまず第一関門は突破と見るべきか。

 それにしても先程までの流れはいかにもヒーローと言った感じでテンションが上がるが、ここで油断してはいけない。


『相手は爪熊だ。爪の攻撃が脅威だが、何より警戒すべきは突進だね』


 念話を通して伝わるディアの助言に、羽衣璃は頷いた。


「あー、突進で動けなくなったところに爪でバッサリってよく見ますもんね。了解です!」


 さあ、ここからが正念場だ。

 ヒーローと認識されるための第一歩。その戦いが、今、始ま――


「オォォォォォォォォ――!」


 その後、いつも通り闘争本能全開になった羽衣璃は、爪熊をズタズタにして殺した。


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