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JK-自衛官-  作者: 村井麻
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中隊配属

後期教育の最期に総合訓練を終え、ついに正式配属先となる中隊が決定する。今回は残念ながら別の駐屯地にある他部隊への配属はなく、駐屯地内に存在する野戦特科部隊への配属となるそうだ。

こういう場合、多くの新隊員は班長の所属する中隊を希望する事が多いそうだが、私は諸般の事情により、班長の所属する中隊以外を希望し、無事に希望を叶える事ができた。とはいえ同じ駐屯地内に奴が居る事に変わりはなく、これで安心とは言い難いのだが。



私の入った中隊は“精強”という言葉が相応しい中隊だった。

部隊配置日、私達新隊員は、配属して早々荷物整理も終わらぬ内、駆足をしていた。歓迎会と称して広い駐屯地内を、何周も、何周も。

新隊員は体育服装に運動靴で走っていたが、中隊の先輩方は迷彩服に戦闘靴で走っていた。走りながら自己紹介を求められ、なんとか言葉を発するが、ペースが乱れ息が切れる。なぜ先輩方は通気性の悪い迷彩服を上下に身に着け、走りづらいブーツを履きながらベラベラおしゃべりを続けているのか、全くもって理解不能である。私は5キロ前後で早々にリタイアし、1番長く耐えた者でも、10数キロ走ったところでギブアップした。最後の一人が限界を迎えたことで新隊員歓迎会は終了した。


中隊での終礼後、新隊員は娯楽室に集められ、1つ上の代の先輩から中隊での業務の流れや、新隊員としての心構えについての説明があった。

簡潔にまとめると

“雑用を積極的に行なう事”

“できる事は全部やる事”

この2点だ。先輩が何かしていれば“代わります”と申し出る。比較的簡単な事である。とはいえ、初めは1つ上の代の先輩方が一緒になってやってくれるそうだ。何とも心強い。


翌日から、中隊の一番下っ端の隊員としてのスタートを切った。

朝は点呼後、食事を済ませて先輩方の誰よりも早く迷彩服と戦闘靴を身に着ける。迷彩服はしっかりとアイロンでシワを伸ばし、要所にアイロン線をつける。靴は鏡代わりにひげ剃りができるくらいピカピカに磨き上げる。鏡面磨きなんて呼ぶらしい。

アイロン掛けも、靴磨きも、誰にでも出来る事なのだから新隊員として先輩方よりも端正にする事は必須事項らしい。

そんなキレイな格好になって、何をするのかと言えばゴミ捨てである。自身の居室からゴミを集め、新隊員のいない部屋は、ドアの前に出されるゴミを集める。営内のゴミを集めたら、次は事務室。そうして中隊の全てのゴミを集め、駐屯地内のゴミステーションまで持ってゆく。

比較的、ゴミの分別は各自しっかりしてくれているが、中にはだらしない先輩もおり、可燃ごみの袋からから不燃物を取り出したりもする。多種多様なゴミの入った袋を開く瞬間は鬱屈とするものの、ゴミを分別する必要性等は理解できるため仕方ない。

ゴミ捨てから帰ったら部屋の中で暫し休息。ここまでの間に戦闘靴や迷彩服が汚れていたら、この時間にキレイにする。


時間になり、中隊の人員が集合すれば朝礼が始まる。中隊長から言葉を貰い、運用訓練係から1日の業務が示される。他に、各係から伝達事項があれば共有され、国旗掲揚を迎えて朝礼が終了。爾後は各自割り振られた業務へと掛かる。


中隊配属後初めて割り振られた業務は部隊の紹介だった。ガイダンスの様なものである。

事務所内の説明から始まり、駐屯地内に点在する、中隊保有の倉庫や、連隊で共用する倉庫、モータープール、他中隊の事務所や連隊本部など。下っ端はよく、使いっ走りを頼まれるので駐屯地内の何処に何があるのかを熟知していなければならないとの事だ。


ひと通り駐屯地内の施設を案内して貰ったところで、少し休憩しようと案内役の先輩が提案する。

特別疲れたりはしていないが、休憩をくれるのであれば否やはない。ちょうど喉が乾いてきたところでもある。

どうやら中隊ではジュージャンを行なっているようだ。日によって勝ち残り方式、負け残り方式かは別れるようだが、最後の一人となった者が全員分のジュース代を支払うらしい。無事回避に成功した私は110円のコーラをチョイスし有難くご馳走になる。自身の財布から110円払ってコーラを飲むのは少しばかり抵抗があるが、他人の財布から出るとなれば遠慮はない。久しぶりに飲んだコーラは、まだ暑さの残る9月末には最高である。


お昼休憩を挟んだ昼からは、簡単な業務へ実際に参加する事になった。内容としては、1週間後に控えた野外訓練に向けて、訓練資材を車両へ積載するとの事である。

教育訓練で使った物から使った事が無い物まで、様々な資材を説明を受けながら倉庫内から探し出し、車に載せていく。今後、どうようの訓練準備をする際は、“〇〇持ってこい”と言われれば、自分たちでパッと取ってくる事が出来るようにならなければいけないのだとか。こういった部分に関しては体育会系の部活動等でも見られる流れであろう。

そうして30分ばかり資材を運んだ所で、午後に入って1回目の小休憩である。まだ作業開始から1時間も経っていないのだが、9月も末とは言え、いまだ暑さもあるため熱中症予防に仕方なく休憩を挟むようだ。


さて、ジュージャンの前に、今更だが、野戦特科について少しだけ補足をしなければならない。野戦特科とは、簡単に言えば大砲を扱う部隊である。非常に大雑把に、野戦特科部隊の編成とは

1個連隊に2~3個大隊

1個大隊に2~4個中隊

1個中隊に3~5個砲班

1個砲班に5~10人が所属している。勿論、充足率等もあるため、実際には全然違った編成になったりもする。

そして、私達の中隊では、今回の訓練、3個砲班 計21名が編成されている。当然、特別な事情がない場合は、21人全員で準備に取り掛かる方が効率的である。

そう。21人も、今、この場にいるのである。負けられない戦いが始まろうとしていた。

砲班で作業時のジュージャンは2パターンあるそうだ。各班の代表者がジャンケンをし、負けた砲班内で決勝戦を行なうパターンと、砲班内で負けた者同士で決勝戦を行なうパターン。どちらのパターンにせよ、負けたらその場で、今回で言えば21人分のジュースを支払う事になるのである。全員が1番安い80円の飲み物を選んだとしても1680円である。当然、午前中の私の様に、80円以上の飲み物を希望する者も居るだろう。1番高い飲み物は180円のエナジードリンクである。私達新隊員は、この時ジュージャンの真の恐ろしさを知ったのであった。


何とか負けを回避する事は出来たが、どうやらジュージャン時、新隊員は大忙しとなる様だ。簡単に言えば先輩方の希望を聴き取り、使いっ走りをしなくてはならない。自分たちを覗いても10数人は居る先輩たちからそれぞれの希望をメモにとり、敗れた先輩から金を預かってそそくさと自動販売機へ向かう。

自動販売機には他の中隊へ配属された同期達がいた。彼らも同様に飲み物を買いに来たようである。別れてから1日しか経っていないがやはり知り合いが居るというのは良いものである。お互いにジュースを抱えながら激励し合い、別れた。

何とか指定のジュースを持ち帰り、それぞれ誰が指定しか物なのかを確認しつつ渡していく。私が聴き取りをした分は、間違いなく受け渡す事ができた。ひと仕事を終え、良く冷えた缶コーヒーで額を冷やす。周囲を伺ってみると、私含め新隊員組は、最安値である80円の物を選んだのだが、殆どの先輩方は、エナジードリンクを頼んだようである。どうやら遠慮などしていては、いつか負ける事を考えると元を取れないらしい。負けを取り返そうという思考がギャンブル好きのソレだと思っていたら、やはり、パチンコも好きだと言う。はたして、収支はどうなのか気になるが、そこは聞かないのがマナーである。


全員に飲み物が行き渡り、各々がジャンケンの敗者へ“頂きます”と声をかける。プルタブを引く音と喫煙者がタバコに火つける音がスタートの合図となって、和気あいあいとした雑談タイムが始まる。入ったばかりの新隊員は、当然話題の中心となる。

見た目の怖い先輩方から声がかかるも、回答につまるような質問はなく、無難に受け答えをする。思ったよりも砕けた雰囲気に安堵する事ができた。


雑談がおおいに盛り上がり、30分程休んだところで作業を再開する。くだらない話で盛り上がった事もあり、先程よりも声音が柔らかくなった様に感じる。やはり、仕事はコミュニケーションが大事なようである。


国旗降下の30分程前になれば、資材倉庫での作業を切り上げて事務所へと戻る。新隊員は、この時に倉庫の鍵や車両の鍵など、使った資材の片付けなどを手伝うと良いらしい。この辺りはイメージ通りであるので素直を返事をし、片付けに取り掛かる。片付けに参加せず事務所に戻る先輩方の中には、事務所で書類仕事などが残っている人も居るようで、特に不満に感じたりはしなかった。


中隊での終礼、班終礼が終わり食事に向かう。教育中と違い、入浴などは自身の好きなタイミングで取れるのだが、食事ばかりは時間が指定されている。とはいえ毎日身体をよく動かすためか、腹は常にペコペコだ。仮に自由な時間に食事をする事が出来ても、ゆっくり食べに行く事はないだろうが。


食事を終えたらこれから新たな日課となる雑用の数々を、教わりながらこなしていく。

事務室の簡単な整頓、コーヒーマシンの手入れや使用されたコップの洗浄に、中隊長の靴磨きとアイロン。警衛上番者への差入れ等。

こなすべき雑用は、沢山あるようだ。それでも、それぞれの登板を決めて一定期間で交代するようにすれば、各人の自由時間は、教育中よりもうんと長く取れる。大変ではあるが、できない事はない。いくつか質問をしつつメモを取り、1つ上の先輩から新隊員の雑用を引き継いだ。

次の更新は仕事が多忙の為未定です。


ゴミ捨てはジャー戦可の所もあります。

また、朝の清掃は全員でする所もあります。

この辺りは各部隊、中隊毎に違いますね。


課業中の喫煙は禁止で、作中の喫煙シーンは倉庫入り口に鍵をかけて隠れて吸ってます。

私の知ってる範囲でのジュージャンの最高記録は、中隊規模で行なった80~90人という記録があります。“自販機で買うと時間がかかり他の使用者に迷惑がかかる”という理由で売店まで行き、若干割高な価格で購入。という事もありました。1回のジャンケンで1.3~1.4万くらいなくなりました。ジュージャンは通算で負け越してます。




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