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JK-自衛官-  作者: 村井麻
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FH70

用語のような物がだんだんと増えてきましたが“何となくこんな意味かな?”で、流して読み進めて貰えればと思います。

現在はそのような部隊は少ないと思いますが、実際に入隊した後、用語の解説のないままに説明を受け、疑問を解消できないままに何となくの理解で業務を進めなくてはならない事もあります。

その後分からないままに業務を進めた結果、怒られる所までがセットです。

陸上自衛隊、野戦特科での主力装備は99HSP、FH70、120迫、MLRSとあるらしいが私達がまず勉強する物はFH70という火砲(大砲)との事だ。後期教育修了後については、適正に応じて配属先が変わるらしい。部隊によってはFH70を用いない部隊もあるとの事で教育が無駄になってしまう可能性もごく僅かにあるという、そんな無体な。


さて、FH70の運用を学ぶ事になった訳だが早速触ってみましょうとはならない、先ずは座学である。

自衛隊という組織は非常に不思議な所で、座学を行なうにあたり、教官を務める方から経歴を含めた自己紹介が行なわれる。西暦何年に入隊〜から始まり 現在まで、教官殿によっては非常に細かい経歴までもご教授下さる。

推察するに、いきなり専門的な座学を始めても居眠りをしてしまう者が多く、仕方なしに始まった伝統なのではないか。とはいえ、あまりに冗長な自己紹介の場合、座学に入る前に居眠りを始めてしまう不届き者がいるので本末転倒ではないかと思うが。


そういう訳で、初日は教官殿の自己紹介から始まり、次に新隊員同士での自己紹介、私たちの後期教育を担任する部隊についての説明が行なわれ、いくつかの新たな知識を得た。課業が8時間ある事を考慮すると、どう考えても1日で得た情報量としては少ないのだが、仕方あるまい。偉そうにしていたものの、私も不届き者だったというだけの話だ。

因みにジッと座っていると眠ってしまうからと、スクワットをしながら座学へ参加する事を希望した同期がいたのだが、彼は見事に立ちながら眠っていた。

教官殿は、笑いながら注意をするだけで怒りはしなかった。なんでも訓練が始まり歩哨に立つようになれば、立ちながら眠ることも必要なスキルなのだとの事。“1回目は許すが2回目は埋めるからなー”なんて冗談を交えて注意をする教官殿と前期教育の教官殿を比べて、当たりを引いたようだと同期たちと喜び合った。



2日目になり、実際に火砲へ触れてみようと言う話になり、戦闘訓練場へと移動する。

後期教育訓練で目指す物を欲しいとの事で、教官殿達が砲班動作の展示をして下さるそうだ。

砲班動作とは大きく分けて射撃準備、射撃動作、撤去離脱の3つに分かれるらしい。今回展示して頂くのは陣地侵入で、簡単に言えば、火砲を射撃可能な状態にする事らしい。

“これがFH70だ”と紹介されたが入隊するまで自衛隊の事など何も知らなかった人間からすると“ああ、そうなんですね”としか思わない。

これの何処が大砲なのかと疑っていると、近くの同期が教えてくれたのだが変形するそうだ。変形とくればワクワクしてしまうのは漢の性だ。なんせ義務教育に含まれている。


戦闘訓練場で自由隊形になり、見学実習が始まると同時、私たちは当たりの中でも当たりの、とんでもない大当たりの教育隊を引き当ててしまったのだと理解した。


『キヲツケェ‼ バンゴッ‼ 』

『ショジュシュッ‼ 』

『イッ‼』

『ニ‼』

『サン‼』

『シ‼』

『ゴ‼』

『ロッ‼』

『テイツケ‼』

『『テイツケ‼』』


?!何て?


『シャゲキヨオ‼』

『『シャゲキヨオ‼』』

『ロクバッウンテッハジメ‼ニーゴバッダンパマッドガッキャッコテブロッ‼』

『ウンテッハジメ!!』

『『ダンパマッドガッキャッコテブロッ‼』』


そこから始まったのは、早口過ぎてなんて言っているのかまるで分からない呪文、もとい号令をとんでもない声量で飛ばす砲班長役の教官殿。そして砲班長に負けない声量で号令に従いながら復唱する砲班員役の助教陣の姿である。


『ソウコリンッキュジュウド』

『『ソウコリンッキュジュウド‼』』

『カイキャクジュンビ‼』

『『カイキャクジュンビ』』

『カイキャク!!』

『カイキャク!!』

ーーあ、開脚か。


漸く聴き取れた単語から、異国語出ないことに安堵してる間も、班長の指示で7人はキビキビと動き続ける。

Iの字の状態のFH70が数分としない間にY字になっていた。途中の細かい動作に目はついていけないが項目で見れば非常に多くの動作をこなしているのは分かる。


一連の動作の中で狂気を感じたのは、FH70が脚を開いた後の事だ。

当初向いていた方向から、火砲の向きが変わったかと思えば、先程脚があった位置を何やら掘り出すではないか。

獣の様な声をしながら凄まじい速さで円匙を突き刺し地面に大穴を掘ってゆく。途中、岩でもあったのか円匙が通らないとなれば十字に持ち替えて振り下ろす。ヤンキー漫画でしか見たことないような唸り声をしながらひたすらに穴を掘るのである。


10分程度経った頃、漸く穴を掘り終わったかと思えば、また火砲の向きを変える。なるほど、火砲の脚部分についているブルドーザーのバケットのような物を地面に埋めるための穴だったようだ。恐らくはこれを地面に埋めることで衝撃を抑える事ができるのだろう。因みにバケットの大きさは大柄の男性が両手を大きく広げたくらいである。それを埋める為の穴は人が2人〜3人は入りそうな程である。10分でそれだけの穴2つを6人で掘ってしまうとは何とも恐ろしい事だ。

ふと、解説要員として私達の近くに居る教官殿に目が行った。この人 昨日、“埋めるからな”とか言ってなかったか?

教官殿と目が合う。昨日は、笑っているように見えたがよくよく見ると目が笑っていない。元々にこやかな印象だったが、それは間違いだと漸く気が付いた。


穴掘りの後はそこまで目立った動きはなかったように思うが、穴掘りと昨日の“埋めるぞ”発言のインパクトで全て吹き飛んでしまいろくに思い出せない。


射撃準備が終わってみれば、これは確かに大砲であり、見事な変形である。

特に、発射するための機構である部分のガチャガチャした感じが堪らない。レバーやボタンが沢山あってとりあえず触ってみたくなる。


教官殿が説明してる最中も私の目は発射機構に釘付けであった。発射機構部分の事は装填トレイ部と呼ぶらしい。そこは聴き取れた。

ちょっと装填トレイ部を触ってみようと指を伸ばしたところで肩を叩かれる。振り返ると、展示を見せてくれた助教の方。眉間にシワを作りながら一言、“お前、話聴いてる?”

あ、埋められるーー。

この駐屯地の戦闘訓練場の地面は何度も掘り返されているので比較的柔らかい方です。

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