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JK-自衛官-  作者: 村井麻
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別れと出会い

作中時間は2015~2020年くらいなので最新の制度とは異なります。

入隊希望(予定)の方は、安心して入隊してくださいネ。

細かな訓練はまだ残っているが、教育の集大成とも言える総合訓練を修了し、一般に前期教育と呼ばれる訓練期間は終わりを迎えた。

私を含め新隊員全員が前期教育修了に伴い気にする事が、配属先である。前期教育を終えた後は、後期教育が始まるのだが、後期教育からは実地研修のような形で訓練が始まる。職種によって扱うものが違うため、ここで振り分けられた職種が今後の自衛隊生活を左右すると言っても過言ではない、らしい。


私は野戦特科とやらに決まった、野戦特化ではない。

野戦特科なる職種がどういう所なのかは教官殿が苦笑いをした事から察するに、“そういう所”なのだろう。同じく野戦特科に選ばれた同期達と肩を抱き合い慰め合う。


荷物を纏め、後期教育を実施する駐屯地からの迎えを待つ間。他の職種へと進路が別れた数多くの同期達と土砂降りの雨を振らせながら別れ、同時に新たな同期との出会いを迎えた。

私達にはない襟元の桜は金色に輝いている。彼等は所謂、バッヂ付、一般曹候補生である。

自衛官候補生という採用区分の私達と、一般曹候補生という採用区分の彼等とで、然程、何かが違う事はない。大まかな訓練課程は同じであるし、昇進スピードが早いと言っても陸士長までは半年〜1年程度、そこから先は個人差である。

唯一違いがあるとすれば給与面だろうか。彼らは満額ではないが賞与も出るし毎月の給料は2桁、退職金も少しはある。私達自候生はと言えば、月の給与は1桁、賞与無、3ヶ月勤めれば一時金が出る物の、それすら入隊から数えて2年未満であれば返還しなければならない。退職金を貰うどころか逆に支払う有様である。どこぞの政治家様がお決めになったそうだが、ふざけた制度だ。


さて、給与面では差異があるものの、入った時期は数日しか変わらない彼等と同期として挨拶をしていると迎えの車が来た様だ。

迎えに来て下さった後期教育の教官殿に元気よく挨拶し荷物を車に載せる。さて我々はどこに乗るのかと思えば、荷物と同じ荷台に乗ってくれと言うではないか。

なるほど、確かに高速道路等で、トラックの荷台に整列して乗る自衛官を見た事がある。言われてみればその通りだ。だが実際に自身が乗るとなると話は別だ。椅子とは名ばかりの木のベンチがついているだけなのだ。

果たして、高速道路で数時間分も離れた所まで私達のケツは持つのだろうかと心配していると、バッヂ付きの同期の1人はおもむろにクッションを敷いて座ったのだ。

一瞬、抜け駆けかと拳を握り締めたのだが、振り上げる前に気が付いた。そのクッションには穴が空いているのだ。“いつか自分もお世話になるかもしれない。”そう思うと握りしめた拳から力も抜けてしまった。


後期教育の舞台となる駐屯地に着く頃には、日が落ち、もう暗くなっていた。荷物を下ろし、部屋割を確認して運びこむ。班長となる教官殿に挨拶をし、食堂や浴場の説明を受け、すぐさま行動に移る。食堂の閉まる時間まで10分もないらしい。半日食事抜きなのに追加で翌朝まで抜く事になるとなれば普段はダラダラとした駆け足もキビキビした動きになるというものだ。


食事と入浴を終え、部屋に戻ったら身辺整理の時間だ。荷物を片付け、ネームを縫い付ける。

縫い物は、入隊から何度も繰り返して行われる為、皆それなりに手慣れたものだが、我々自候生は階級章の付け替えもしなくてはならない。明日の朝から2等陸士に昇進となるのだ。

ただし、日付が変わるまでは自候生の階級章が付いたものを着用しなければならないため、1着は翌日以降に縫い付ける事になる。縫い物が苦手な同期は助かるだろうが、比較的得意な私は、一度に済ませられれば楽なのにと思う。


就寝までの僅かな時間、移動日という事もあり、点呼前の清掃は免除して頂いた。その分、荷物の整理をキチンと行わなければならない。新たな班員達と交流をしながら荷物の整理を続けていると、隣の班から前期で班員だった同期が慌てた様子で飛び込んできた。“俺の制帽知らない?!” うん、知らない。


制帽とは分かりやすく説明するなら、お巡りさんの被っているあの帽子である。自衛隊では一般的にイメージされる迷彩服の他に、制服が存在する。主に式典等で着用し、新入隊員の例で言えば入隊式や前期教育修了式などで身に着けた。こちらも階級章が付くため、縫い物の対象だ。

どうやら縫い物をしようと思ったが荷物の中に無かったので元班員だった私の所に来たらしい。当然、私の荷物の中にある筈もなく、彼は重い足取りで自身の班長の元へ報告へ向かっていった。警察へ自首する人間はこのような背中をしているのだろうかと思う程、重い足取りだった。


本来、官品の紛失となると、見つかるまで捜索しなければならないのだが、班長の迅速な行動により、別の後期教育先へと別れた元班員の所にある事が判明し事なきを得た。彼は管理不足で消灯後もタップリ怒られた様で翌朝目元を赤くしていた。

詳しく話を聞けば、夜に到着した為に、半日となかった初日のうちから問題を起こした彼を、教官殿はたいそう感心した様で、縫い物の手伝いをしながら怒られたらしい。一体全体、厳しいのか優しいのかさっぱり分からない。あるいはこれが俗に言う“飴と鞭”という奴なのだろうか。悪い人ではないのだろうが。

バッヂ付のケツ同期はお尻から血が出る病を抱えています。彼の場合は入隊前からの持病ですが、自衛官は程度の差はあれこの病に掛かる人間が多く、教官陣はクッション使用に関して非常に寛容でした。

制服紛失同期はその後、郵送してもらって何とかなりました。良い子の皆、異動の際は、官品の管理はちゃんとしようね。

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