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JK-自衛官-  作者: 村井麻
3/7

射撃訓練

前話から時間が空いてしまいました。

用語の校正に時間がかかりました。

なお、誤字が多数ある模様。

新隊員教育の中で1番かそれに準ずる人気を誇るだろう課目が、実弾射撃訓練である。

この射撃訓練は、射撃検定を兼ねている。

検定であるからには、何らかの制限がある物だが射撃検定に置いては弾数が制限される。教育訓練の課程で行なう多種多様な訓練と比較すると、訓練と呼べるほど弾を撃つことはできないのが実情である。


実弾は日本国内では、特別に許可された場所でのみ撃てる。当然、街中でぶっぱなすわけにはいかない。空包という音を出すだけの物であればその限りではないが、空包では実弾と違い射撃結果を見る事は叶わない。

空包とは弾の先端にある、弾頭が存在しない弾の事であり、大雑把に言えば火薬しかない。本来であれば弾頭を押し出す際に火薬の爆発で生み出されるガス圧が、内部の機構を作動させ、次弾の装填が行なわれる様になっている。しかし空包は弾頭が存在しないため、火薬のガス圧が銃の先から逃げ、動作不良を引き起こしてしまう。そこで、空包発射補助具なる物を銃の先端に取り付け、ガス圧が銃の先から逃げないように塞ぐのだ。先端を塞ぐので、当然何も発射されない。

対して実弾は、しっかり弾頭が発射されるので、的に当たれば痕が残る。また、小銃の先端や的にセンサーをセットし弾頭を観測する事で、機械を使った計測をする事もできる。

弾頭の存在しない空包では、計測システムの存在するデジタル式の射場、人力で弾痕を確認するアナログ式の射場、ともに結果が残らないのである。したがって、射撃検定は実弾を用いて行なわれるのだ。


一般的に、射撃訓練ある日の朝は早いのだが、運良く駐屯地の近くに射場がある為、普段の起床時刻とそう変わらない朝を迎えた。

朝が早い場合、どの程度早いのかと言うと、射場へ到着し、諸々の準備を終えて訓練が開始するのが9時前後。駐屯地から出発するまでに1時間。駐屯地から射場まで車で30分。射場についてから準備に1時間。

駐屯地から射場への距離に応じて、車での移動時間が長くなり、その分起床時間が早くなるそうだ。

“これでもゆっくりな方だ”とは教官殿の言。


実弾を用いた訓練とあって、教官殿らの空気も幾分かピリピリとしている。待望の射撃だなんだとニコニコしていては要らぬお説教を貰ってしまうだろう。意識しなければニヤけてしまう顔面筋に力を入れなくては…。


射撃訓練では、自身の振り分けられた射群と的を覚えておかなくてはいけない。現在射撃を行なっているのが何射群なのか、自分が使用する的は何的なのか。

どうやら、私の3個射群前の班員が自身の使用する的を間違えて隣の的に射撃していたらしい。当然、彼の得点は0点である。25点が合格最低ラインなので必然、不合格だ。何ともバカバカしい話に、思わず声を出して笑ってしまった。同期達の笑い声を怒鳴り声がかき消した。一体誰だろうかと周りを見渡せば声の主はすぐに見つかった。隊付と呼ばれる、教官殿たちの中でも特に厳しい方である。皆の笑いがスッと消え静寂が訪れる。隊付と、目と目が合う。

“もしかして、私、何かやっちゃいました?”なんて言葉が、喉まで登ってきたところで気が付いた。私の射群に集合がかかっていたのを聞き逃していたようで、何時までも集合しない私を捕まえに来たのだろう。ここは素直に謝るしかない。


一先ず待機線まで移動し装備の点検等を受け、待機する。隊付殿の雷を何とか地面へ受け流していると、私の属する射群へ移動の号令がかかる。

全体の流れを止めるわけには行かない為、隊付の雷注意報の発令地域から離れていく。どうにか隊付殿の怒りをやり過ごすことができた。もちろん訓練が終わった後に絞られるだろうが、それはその時の私が何とかしてくれる筈だ。今を生きる者として、その瞬間瞬間をどうにかやり過ごす事が重要なのである。


射座に銃を置き、弾薬交付地点で曳光弾3発と通常弾弾26発を発声しながら指で差しつつ数え、受領する。数の確認が済んだならば、刑務所の囚人よろしく、名前を記入したボードを持ち、受け取った弾が映るようにして写真を撮ってもらう。決してア○顔Wピースなどしてはいけない。

自衛隊では、弾薬を何発受け渡しをしたか等、きっちりと記録する必要がある。日本という国の特性上、銃や弾丸を訓練以外の用途で保有する事はできない。使用前の弾丸だけでなく、撃った際に出る撃ち殻や薬莢等と呼ばれるゴミすらも最初に受けった弾と同じ数きっちりと返納しなければならない為、何発撃ち、何発撃ち残したのかを明確に記録するための写真撮影なのである。

さて、弾の受領が完了したならば、次は弾を弾倉に込める作業に取り掛からなくてはならない。ここでも1発ずつ声を出しながら数え弾倉に弾込めをする。全29発を5つの弾倉に分けるのだが、内訳はこうだ。

5発入弾倉×4

9発入弾倉×1(内 曳光弾3発) 曳 通 通 曳 通 通 曳 通 通

9発弾倉に曳光弾を3発入れるのだが、1、4、7発目に曳光弾が来るように込めなければならない。つまり、込める順番は3 6 9番目だ。ややこしいことこの上ない。なぜこんな込め方をするのかと言うと、これは射撃検定の流れが関係している。


上記5個弾倉を作り終えた後、実際に射撃を開始する訳なのだが、照準を合わせて撃った時に、いきなり狙いの位置に飛んでいくことは稀である。殆どの場合は多少なりとも修正を要する。

修正には照門と呼ばれる覗き穴と、照星と呼ばれる照準を合わせる突起の位置関係を調整する。照門は左右に、照星を上下に動かす事で同じ狙いの付け方をしたままに弾道を変える事ができるのだ。

この弾道の修正を、先ほど作成した9発入弾倉で行なう。3発ずつ試射をし、3発毎に修正を行なう。これにより狙いの位置に飛ばす事が可能になり、検定射撃が始まるのだ。

ただし、生まれて初めて実弾を撃つ人間がそんな簡単に修正ができたりはしない。初めての射撃であれば、そもそも的に届かせる事も難しい。しかし、的に当たらなければ修正を行なう事は困難である。そのため、弾道が光って見える曳光弾を用い、修正を行なう際の助けとするのだ。


実際、私の修正射(9発入弾倉分の射撃の事)は最初の3発中1発のみ的に命中し、他は何処か別のところへ当たったようである。1発目の軌道を見るに、銃身が若干下を向いており、的の下部へ飛ばしてしまった様である。安全確認と補助の為に隣で付き添う教官殿から“脇を締めて腕を持ち上げるようにして撃つと良いのではないか”とアドバイスを頂き、残りの6発を集中して引き金を引く。2回目の修正を経て最後の3発は全て的内に当たり、更に2発は高得点の位置に当たった。3発の中心が概ね的の中央に来ているので修正はできていると言って良いだろう。


9発入弾倉を全弾射耗したところで一度薬莢の回収を行なう。薬莢受けを付けていないため、散らばってしまうのだが、補助の教官殿がこっそり集めてくれていたらしい。同じ射群の同期たちが薬莢を集めている間、少しばかり時間の猶予を得た私は深呼吸を行ない精神を落ち着ける。よし、いざ検定だ。



結論から言えば、検定は合格する事ができた。合格する事はできたのだが、若干悔しい結果になった。

修正射の後、練成射と呼ばれる、検定と同じ流れで伏せ撃ち(寝撃ち)5発、膝打ち5発を撃った。

10発中、5点6発、4点2発。他は外してしまったが38点でまずまずの得点だ。(なお、的の得点エリアは0点3点4点5点である、)

問題は、最後の検定射10発だった。伏せ撃ちは5点を3発、3点を1発当て、25点中18点とそれなりに良かったのだが、膝打ちで全弾的外。0点を取ってしまったのである。原因は定かではないが、同じ照準の付け方をしたつもりだが、実際には違う物になっていたのだと思う。練成射で上手くいってしまった為に少しばかり調子に乗っていたのも否めない。

幸い、練成射、検定射とは言うものの、どちらか高い方の得点が採用されるために合格する事はできたのだが、少し後味の悪い結果になってしまった。

射撃後の砂遊びの時間も、しょぼんとしたままに円匙を動かす。小銃とは違う弾頭等を見つけテンションを上げる班員とは対象的に気分は晴れなかった。

もっとも、駐屯地に着き、武器を格納する頃にはそんな事はすっかり頭から抜けてしまっていた。

気分が晴れた訳ではなく、雷警報が発令されたのである。ジメっとした空気は雷で吹き飛ばされる物なのだと初めて知った。勉強になる。

写真を撮る部隊と撮らない部隊があります。

もし写真を撮る場合、○へ顔Wピースは絶対に止めましょう。


曳光弾→えいこうだん。某SF映画の宇宙戦争で飛ぶレーザー光線みたいに見える。キレイ。

砂遊び→廃弾回収の事。円匙で着弾点の砂を掬い、篩を使って一定量の金属片(弾頭)を集める。

円匙→えんぴ。スコップやシャベルの事。

射撃訓練→夜間に行なわれる特殊な射撃訓練もあります。こちらは男性隊舎でのみ行なわれ、狙撃兵よろしく隠密行動が必須だとか。。。

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