その勇者パーティー、異常につき
──バサリ、と音を立てて刃真が納刀した。
その瞬間、世界がふたたび動き出す。
風が吹き、鳥が鳴き、誰かが小さく息をついた。
「……すっご……」
フェリスがポツリとつぶやいた。
「……うん。あれはもう、うん。すごいしかない」
私も、なんかもうすごすぎて“語彙が出てこない現象”に陥ってた。
誰も怪我してない。敵もいない。
終わったんだ、って思って──
全員が、ほぼ同時に座り込んだ。
ドサドサッ。
「いや、無理。あんなの見せられたら立ってらんないって」
「うん……うん。立ってるのに精神が座ってた」
フェリスとベルドが、地面にへたり込んで頭を抱える。
その横で、私はしばらく無言の刃真を見つめた。
相変わらず無口だけど、ほんの少し──なんか、誇らしそうに見えた。
「刃真さん……すごく、かっこよかったです」
ユノが穏やかな声でそう言った。
それを聞いて、私はなんとか自分の思考を立て直す。
「……いやいやいや、ちょっと待て、落ち着け」
「どうした勇者」
「うちのパーティー、戦力のバランスおかしくない?」
「いまさら?」
「いやだって、普通さ! 勇者が“よし、行くぞ!”って先陣切って、仲間が後ろからサポートして、“仲間って最高!”みたいなやつじゃないの!?」
「それ、フィクションだと思う」
「これもフィクションですけど!」
私は頭を抱えながら地面に寝転がる。
「つーかさ! 私、今回一太刀も振ってないんだけど!?」
「俺も盾、一回も上げてないな……」
「魔法詠唱の“ま”の字も言ってない」
「私は祈ったよ……!」
「ユノ、それ唯一の実績みたいに言わないで!」
そのとき、刃真がふと口を開いた。
「……次は、出番があるといいな」
全員が、ビクリとした。
絶妙に慰めにならないその言葉に、全員の表情がひきつる。
「せめて一撃前にそろそろ撃つよーとか言って……?」
「だめです。構えた瞬間から集中が始まるので、話せません」
「ユノがなんで代弁する!?」
そうしてわいわいしてると、ようやく足元の力が戻ってきた気がした。
フェリスが手をパン、と叩いて立ち上がる。
「よし、そろそろ行こうか。次はちゃんと戦うぞ。構える前に!」
「無理だと思うぞ?」
「うるせぇ! 決意くらいさせろ!」
笑いながら、再び歩き出す。
なんかこう、私たち──勇者パーティーっぽくなってきたんじゃない?
……いや、やっぱりバランスはおかしいけど。