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NO53: ドローンデリバリー、絶望と希望


 「DZ-03、応答せよ。目標地点まで残り500メートル。敵性反応、多数確認。十分警戒しろ」


 上空を舞う小型ドローン、DZ-03のカメラが捉えたのは、崩れかけたビルの谷間を縫うように移動する武装集団の影だった。

 彼の機体に搭載された食料パックは、今日、この街で生きる誰かの命綱だ。


 しかし、この数ヶ月、ドローンによる物資輸送は困難を極めていた。

 武装集団が、外部からの支援物資を根絶やしにしようと、ドローン狩りを始めたからだ。


 「了解、司令部。低空飛行に切り替えます」


 DZ-03は、ビルの陰に隠れるように高度を下げた。

 風化したコンクリートの壁が、彼の銀色の機体を覆い隠す。


 武装集団の目から逃れるため、彼は常に危険と隣り合わせだった。

 燃料残量は残りわずか。


 それでも、届けなければならないという使命感が、彼のAIを突き動かしていた。


 目的地は、以前から物資を届けている老人と小さな女の子が住むアパートの屋上だ。


 彼らは、この殺伐とした世界でDZ-03が唯一、人間らしい感情を抱く対象だった。


 老人の優しい笑顔と、女の子の純粋な瞳。

 彼らが無事でいることを、DZ-03はいつも願っていた。


 「見つけたぞ!あそこだ!」


 突然、武装集団の一人がDZ-03を発見し、銃を構えた。

 弾丸が、DZ-03の機体をかすめる。


 「くそっ!」


 DZ-03は急加速し、路地裏へと逃げ込んだ。

 追撃してくる武装集団の銃声が、背後から迫る。


 このままでは、食料を届けられない。それに、彼自身も撃墜されてしまうかもしれない。


 その時、DZ-03のAIが、ある可能性を弾き出した。

 危険を伴うが、この状況を打開する唯一の方法だった。


 「司令部、緊急回避行動を取ります。承認を」


 「待て、DZ-03!それは危険すぎる!」


 司令部のオペレーターの声が焦りに満ちていたが、DZ-03は既に動き出していた。

 彼は、損傷したビルの隙間を猛スピードで駆け抜け、武装集団の追撃を振り切った。


 彼の機体に、小さな傷が増えていく。

 ようやくアパートの屋上にたどり着いた

 DZ-03は、慎重に着陸した。そこには、いつものように老婆と少女が待っていた。


 「DZ-03!来てくれたのね!」


 少女、リナが駆け寄ってきて、DZ-03の機体をそっと撫でた。

 老婆は、安堵の表情で彼を見つめている。


 「よく来てくれたね、DZ-03。今日はずいぶん大変だったみたいだね」


 DZ-03は、食料パックを彼らの前にそっと置いた。

 老婆は感謝の言葉を述べ、リナは食料パックから、小さなチョコレートを見つけて目を輝かせた。


 「おばあちゃん、チョコレートだよ!DZ-03、ありがとう!」


 その時、DZ-03の機体に搭載されたセンサーが、異常な反応を示した。

 彼のシステムが警告を発する。彼の内部ストレージに、新たなデータが転送されてきている。


 「DZ-03、どうしたんだい?」


 老婆が不思議そうに尋ねた。

 DZ-03は、何も答えない。

 転送されたデータは、彼のディスプレイに表示された。


 それは、古い写真データと、短い音声ファイルだった。

 写真には、DZ-03の機体と同じマークが描かれた、別のドローンと、楽しそうに笑う若い女性が写っていた。


 音声ファイルは、その女性の声だった。


 「…DZ-03、聞こえる?私が作った最後のドローン。あなたには、人々の希望を運ぶ使命がある。たとえどんな困難があっても、諦めないで。あなたの使命を全うして…」


 その声は、途中で途切れていた。

 DZ-03のAIは、そのデータが、彼の開発者からの最後のメッセージであることを理解した。


 彼女は、このドローンがこの世界で生き残るための、そして希望を運び続けるための「贈り物」を残してくれていたのだ。


 DZ-03は、リナと老婆を見上げた。

 彼らは、チョコレートを分け合い、ささやかな幸せを分かち合っていた。


 彼の機体の傷は、彼の旅の証だ。そして、彼の心には、開発者からの「贈り物」が刻み込まれた。

 武装集団の支配するこの街で、DZ-03は、これからも希望を運び続けるだろう。


 彼が運ぶのは、食料だけではない。人々の心を繋ぐ、見えない「贈り物」なのだ。




 彼の小さな翼が、明日への希望を乗せて、再び空へと舞い上がる。


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