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Soldier stands solitarilyというほどカッコ良くはない

目の前には、2メートルは優に超える筋骨隆々のオーク族。バキバキと指を鳴らしながら、ゆっくりと近づいてくる。


(なんでこんなメに…だいたい、このセカイに飛ばされてきたときも…)

男はこの世界に来た当初のことに思いを馳せようとしたが。

「いっくぞぉおおお!」

デカい筋肉の塊が急接近したことにより、思考の世界へ飛ぶことはできなかった。

「ぉわあっと!!」

大振りのパンチを何とか躱す。

「おっ、や、やるなぁ!つ、次だぁ!!」

「ぬぉっ!」「っぶねぇ!」「ぅわっ!」

筋肉の塊が次々に殴りかかってくるが、男は全身で何とか躱していく。

本人に余裕はなさそうなのは変わらないが、徐々に避ける動きが小さくなっていく。

そんな姿を、ずんぐりが訝しげに見ている。

「おい、ガキ」

「ひ、ひゃい!!」

「あのあんちゃん、芝居してるように見えるか?」

「し、芝居っすか…うーん、めちゃくちゃ必死に避けてるようにしか見えないっすけど」

「…だよな」

男に隠れた才能があるなどと思っていたずんぐりであったが、期待外れなのか、男は避けることで精一杯といった感じである。

しかし、掠りはするが何とか男は攻撃を捌いている。しかもその動きが次第に細く洗練されたものになっていくのだ。そこにずんぐりは違和感を覚えるのだった。

「力を隠してるようには見えないが、かといってあいつの攻撃をあれだけ避けれるんだから、トーシロじゃぁねーな。…まぁDランクといえどもワーカーだからってのは分かるが、慣れるのが早い。早すぎる」

そうこうしている間に1ミニッツが経過した。

「ほ、ほほぅ、あ、あんちゃん、なかなかだなぁ!」

「はぁはぁはぁ、そりゃあ命賭けだかんな!お前のパンチ一発でももらったら死ねかもしれねーからな!」

「そ、そうだな!死ぬな!おらおら!!」

「あぶな!!」

話しながらも攻撃は続くし、男は必死に避けていく。

そして残り1ミニッツとなった。

「残り1ミニッツ!!ヨリメル!遊びは終わりだ!本気でやれ!」

「ほ、本気…。了解だ兄貴!」

そう答えた筋肉の塊は、一瞬力を抜くと、スッとファイティングポーズをとる。先程とは打って変わって無駄のない佇まいで静かに闘争心を内に押し込める。

「か、構えた…!?」

「くくっ、そうさ、これがあいつの本気モードだ。あいつはただの力任せに殴る馬鹿じゃねーんだよ。その拳だけで戦場渡り歩いてきたのは伊達じゃねぇ。れっきとした拳闘士なんだよ!」

「なんだそりゃー!本気なんぞ出してんじゃねー!」

「さぁ、あんちゃん。残り1ミニッツ。本気のオイラに勝てるかな?」

「話し方もキャラも変わってんじゃねーか!」

「さぁ、オイラと踊って(ダンスって)もらうぜぇ!!」

筋肉の塊は、先程とは違って無駄のないステップで男に接近し、ジャブを放ってくる。

男は何とかジャブを避けたり躱したりするが、次第に追い付かなくなりガードするが、身体ごとふっ飛ばされてしまった。

「ぐわぁ!」

「おいおい、ジャブで終わらせないでくれよ。オイラ、全力パンチ当てたいんだよ!」

「いてててて…なんなのそのキャラ!?怖ぇよ!!」

「時間がないからどんどんいくぞぉ!!」

ボヤきながらもようやく立ったその場所に筋肉の塊が間合いを詰めてくる。

ダッキングしながら放たれたのはアッパーカットだ。

「ほれぁー!!」

「し、しまっ…」

必死にガードを試みるが、顔より大きな拳が襲いかかり、男にクリーンヒットした。

「ぐはぁ!」

アッパーカットを食らった男は派手に吹っ飛んでいった。

「決まったんだな!」

拳に確かな感触があった筋肉の塊はガッツポーズを決めた。

男が吹っ飛んでいった茂みはかさりとも音がしない。

「...期待ハズレ…か?」

「Dランクの人…。巻き込んですみませんす。せめて痛い思いをせずに天に召されることを…」

「ぅおひ!!!かっへにほろしてんてんらへぇ!」

腫れた顔にポーションをかけながら茂みから男が姿を現した。顎周辺がガッタガタになっているため、うまく喋れないでいるが、何となくツッコミを入れていることは理解できた。

「おひ、3みにひっふふぎただろ!」

「あぁ?なんて?」

「3ミニッツ過ぎただろって言ってるんじゃないすかね?」

「あぁ、なるほど、確かにな」

「お、オイラのアッパー,キレイに決まったはずなのに…」

「あぁ、とんでもねぇパンチだったぜ」

「ふ、普通はし、死ぬやつだったぞ」

「まぁ、普通に食らってたら死んでたな」

「じゃ、じゃぁ、ど、どーして生きてんだぁ?」

「衝撃を流してやったのと、マント挟んだからってーとこだな」

「そ、そーだったのか、あ、あんちゃんやるなぁ」

勝負が終わり、互いに称え合う二人を見つめるずんぐりはニヤリとした。

「わざと当たって威力殺しつつ、吹っ飛んで時間稼いだってか…くっくっく面白ぇ。そーこなくてはな!よっしゃぁ、お次は俺と死合おうぜ!」

「おいおい…休憩させろよ」

「悪いな!こちとら疼いてんだよ!さっさと殺ろうぜ!」

「やろうの文字が殺すになってるよ!なんなのコイツら?!戦闘民族なの!?同種族同士でやってくれよ!!」

「あんたの勇敢だった姿はハーイワークに報告するっすよ!」

「それ、死んだ時の報告だろ!!」

二人が漫才している間にずんぐりが巨大な牛刀を構えた。

「さぁ、構えろや」

「問答無用かよ…ったく、はぁ、よっこいせっと」

ため息交じりに男はボロボロのみすぼらしい鞘から剣を取り出す。抜かれた剣は一切の装飾が施されていない安い量産品のように見えた。

「あ、あのぅ、Dランクの人」

「あんだよ?」

「なんでさっきは剣を使わなかったんすか?」

「あぁん?剣…そ、そりゃあさっきは拳と拳で戦う男の勝負だったからな。こっちが武器使うなんて無粋だろがよ」

「ふーん、なるほどですね(絶対忘れてたな、この人)」

「へっ、ならもう遠慮はいらねぇぜ。3ミニッツ、耐えてみやがれ!」

「どわぁ!」

ずんぐりが自分の身長よりも大きな牛刀を巧みに使い切り込んできたが、すんでのところで牛刀を受け止めた。

「かかか!剣もしっかり使えるじゃねーか!」

「こっちは必死なんだよバカヤロー!」

「だったらもっと必死になれやぁ!!」

「どわぁ!!」「なんと!」「あぶな!」

ずんぐりはまだ本気を出していないのか、不敵な笑みをこぼしながら次々に切りこんでいく。そして男は剣で受け止めたり体ごと避けたりしていく。

「さっきもすけど、Dランクの人は避け方があんまりカッコよくないすね…」

「そ、そうなんだな…で、でも、て、手を拔いてるからって、あ兄貴のけ、剣はすごく重いんだな。あ、あんちゃんはよくやってるんだな」

「あのDランクの人が強いってことっすか?」

「つ、強くはないんだな。で、でも、気のせいかもだけど…戦ってる間に、つ、強くなってる気がしたんだな。ちょ、ちょっとだけ」

「ど、どーゆーことっすか?」

「お、オイラバカだから難しいこと分かんないけど、た、戦ってるうちに、あ、あのあんちゃんはちょっとずつ強くなったんだぁ」

「それって、すなわち?」

「つ、つまり、さっきよりす、少しつ、強くなってるんだぁ~」

「(同じこと言ってる)そんなことって普通はできないすよね?」

「そ、そうだなぁ…できねぇとお、思うけど…」

(もしかすると、あのDランクの人、実はとんでもない人なんじゃ…)

そう認識を改めて戦う二人に視線を戻すと、ずんぐりの攻撃を必死に避け躱し守る男の姿は、その必死さのせいでやはりカッコよくは見えないのだった。

「おらおらぁ!どんどんアゲてくぜぇ!!」

「あ、あげんでいーわ!どぁ!」

素人目線でも、ずんぐりの剣速が上がったことが分かる。

「ぐはぁ!」

そしてついに、男が吹っ飛んでいった。

「死んだフリも時間稼ぎも俺には効かんぞぉ!出てこいやぁ!」

「ちっ、んなつもりじゃあねーっつの…」

立ち上った男は全身にダメージを受けているように見える。

「痛ぇーっつーの…満身創痍だっつーの」

「へっ!まだまだそんなもんじゃねーだろ?もっと見せてくれよ!」

「お前は何を期待してんだよ?こちとらなんのスキルも特性もねぇDランクだぞ…勘弁してくれよ…はぁ」

「くっくっく。俺はワーカーじゃあねーが、多分Bランクの奴らとタメ張る力持ってるんだぜ。そんな俺らに食らいついてるお前さんが面白くてよ!」

「んな力あんなら、真っ当に働けや!」

「そいつは事情ってもんがあるんだよ。さーて、楽しい死合いの時間もフィナーレが近付いてきたな。俺もパツイチ本気ぶつけてやるぜ!!」

「ホント、ずーっとてめーの都合だけだな!!」

巨大な牛刀を真上に上げて上段の構えをとる。それは真っ直ぐに振り下ろすのみ。ただただ愚直に全身全霊で振り下ろす。

「…あんたらしい技だな」

「へっ、技なんて立派なもんじゃねぇ。ただあんたに全てをぶつけてみたくてよぉ」

「そーゆー台詞は、キレイなお姉さんに言われたかったな」

「へっ、そいつは悪かったな」

軽口を叩き合っているが、みるみるうちにずんぐりの闘気と魔力が上がっていく。

「…魔力使えるなんて聞いてないんですけど」

「とっておきってのは最後までとっておくからとっておきなんだぜ…さぁ、そろそろいくぞ」

「せめて痛くないよーにしてもらえると助かります」

「ほざけ…さぁ、どうする?」

「はぁ…くそ」

「!?」

ため息交じりに悪態をつく男は、ずんぐりと同じように剣を上段に構えた。

「へっ、やっぱあんた面白ぇわ」

「俺は全く面白くねぇ」

「ちょ、ちょっと!!あの人、真似してあんな構えしえますけど、どうなんすか!?」

「わ、分かんねぇ。け、けど、兄貴があんなに楽しそうなの、ひ、久し振りに見たなぁ」

「んーーもぅ!ちゃんと解説して下さいよ!!」

「…良かったなぁ兄貴…」


互いに上段を構え合った二人は、傍からみれば機先の取り合い、気と気のぶつかり合いのような構図になっているが、そうではなかった。

ずんぐりが張り裂けんばかりに闘気と魔力を練り上げていくが、その向かいの男は上げた腕のスタミナが限界に達しようとしていたのだ。

その時。

「ずぅぇえいやぁあああぁあ!!」

ずんぐりの頭上から闘気と魔力を纏った牛刀が振り下ろされる。

(あっ、やべ)

それと同時に、遂に男の腕の限界がおとずれ、闘気も魔力も纏っていない鉄の塊が静かに下ろされた。

2つの剣はぶつかり合い、轟音とともに二人ははじけとんだ。




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