蜃気楼(しんきろう)
キーンコーンカーンコーン
朝の始まりのチャイムが鳴り響く。
「おい!聡史俺の掃除もしとけ!」
「・・・うん。」
この子は、川村聡史。
杉藁中学校の、一年生だ。
この子の父親は、家を出て行き慕っていた母も、家で首をつって自殺した。
お金もなくいじめられる日々が過ぎていった。
ゆういつの楽しみといえば、帰りの薄暗い坂道。
ココを通れば、蜃気楼のように死んだ母が見えるような気がした。
それは、日々濃くなって母の蜃気楼も近づいてきているような気がした。
最初は、ぼやけていたが数日後来てみると濃くはっきりとそれであって近づいてきていた。
聡史は、おかしいとも思わなかった。
なぜなら蜃気楼は、死んだお母さんのように見えたからだ。
コレを否定したらお母さん自体を否定するのと同じことだと思ったからだ。
何日か、たって久しぶりに友達から一緒に帰ろうといわれた。
坂道に差し掛かったとき耳鳴りがした。
目の前には・・・
「お、お母さん?」
と聞くと、コクリとうなづいた。
周りの友達は、何も見えないみたいにドンドン先へと進む。
(一緒に帰ろう・・・)
お母さんが、高い声で言うと、
体が勝手に動いた。
「!?」
(あなたも、道連れね・・・)
その後、聡史が家に帰ることはなかった。