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第4話  暗殺貴族

 以前投稿した話を度々改稿することがあります。

 後見人探しのタイムリミットまであと五日。

俺とレイスは、後見人になってくれそうな貴族を見繕っていた。正確に言えば、レイスだけが真剣に後見人になる貴族の見極めをしていた。


「なぁレイス、後見人になってくれるなら誰でもいいんじゃないか?」


「そんな訳にはいきません、最低限の格が必要です。目に見えないものであるからこそ、こういうものは大きい。今後、エミル様が何かを為そうとしても格がなければ、人は動いてくれませんよ」


 フォーゲル帝国における貴族の位は主に四つ。上から公爵、伯爵、子爵、男爵となっている。他には、伯爵と同等以上の力を持つ辺境伯や特別な功を挙げたものに与えられる特爵がある。

 皇族の多くは公爵を後見人とし、末席に近づくほど辺境伯や伯爵がつくのが慣例となっている。


「大体、エミル様の後見人にはウォント辺境伯がなる予定だったはず、何をしたら後見人を辞退されるようなことになるんですか?」


 通例として皇族の後見人は皇子、皇女の意思に関係なく事前に決まっている。考えれば分かる話だが、皇族とはいえ幼子が自分の意思と言葉で後見人を探すというのは難しい。予め決めておき、皇族とその後見人になる貴族との相性がよろしくないと判断された場合のみ変更となる。つまり、後見人とは探すものではなく、与えられているものなのだ。


 その例に漏れず、俺も後見人が一時は決まっていた。それが、ウォント辺境伯だ。大商人の顔を持っていて他国との貿易を一手に担っている。格も実力も十分な相手だったのだが……


「初めて顔を合わせたときにな……」


――――――――


 二年前、俺が五歳になり、怠惰の才の片鱗を見せ始めていた頃。

 後見人になる予定だったウォント辺境伯との顔合わせがあった。ウォント辺境伯と名乗った男は、美しい金髪碧眼といった顔立ちだったのだが、ふくよかな体がその輝きを鈍らせていた記憶がある。

 

 後見人の話を進めていく中で、俺のサボり癖を聞いた辺境伯はそれを責めず、代わりに遊戯盤を使ったゲームで勝負をしようと提案してきた。何者かの記憶でそのゲームを知っていた俺は勝負を受けた。そして、惨敗したのだ。


 「エミル様は年齢の割には聡明でいらっしゃるご様子。しかし、何事にも上には上がいるものです。学ぶことをやめるには早すぎると愚考いたしますなぁ、ホホォホー」


 最終的には煽られ、日が暮れるまで挑んだものの全敗。口惜しさのあまり俺はこう言い放った。


「そう遠くないうちに、貴方に勝ちます。そして、その時に私の臣下になっていただく。それまで、この話はなかったことにします!」


―――――


「……ってことがあって、その後も勝負を挑んだものの、俺はまだ辺境伯に勝てていないって話だ」


「いつも思ってましたけど、エミル様ってその場の感情で動いて失敗してません?」


「仕方ないだろ、これが初めて負けを経験した時だったし、煽られた時だったし、何より後見人がこれほど大事だと思わなかったんだよ」


「まぁ、過ぎたことですしね。それより伯爵以上の貴族を後見人にしようとすると本格的に時間がないですよ、彼らは自身にどんな利があるか慎重に考えて答えを出しますからね」


「だから、この際男爵だろうと子爵だろうと構わないと言ってるだろー」


「だから、格が必要だって言ってるんですー」


 しばらく、押し問答を続けたが良い案は出てこない。


「エミル様が折れてウォント辺境伯に頼みの手紙を出すしかないんじゃないですか、少なくとも私が思いつくのはそれが限界です」


「いやだ」


「じゃあ、どうするんですかぁ」


 レイスが言った基準を満たし、俺の後見人になることを二つ返事で了承してくれる貴族。そんな都合のいい人物を探していると、不意に一つの貴族家のことが頭に浮かんできた。そして、どの皇族の派閥にも属していない、今後俺がしたいことにも彼らの力は必要になるはずだ。天から降ってきたような存在に口角が自然と上がっていく。


「レイス、いるじゃないか、条件にピッタリ合う貴族家が」


「へ?ホントですか、どこの家です」


 少しの間をあけて、宣言する。

「ネメルダリン家を俺の後見人にする!」


 ネメルダリン家、別名は暗殺貴族。帝国の闇を一手に担う立派な伯爵家である。

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