プロローグ 闇の中
初投稿です。よろしくお願いします!
薄暗い部屋の中で、1人の男が蝋燭1本の灯りを頼りに1つの魔道具を作っていた。髪はボサボサ、無精髭が生え、服は酷く汚れていた。彼を見る人がいたならば、10人中8人ほどは目をひそめるのではないだろうか。
けれども、ただ1つ男の瞳だけは飢えた猛禽類のように爛々と輝いていた。男には時間がなかった。数刻後、作業の手が止まる。
「ハハハ、やった、ついにやったぞ!、これで完成だ、これで全てがうまくいく・・・そしてアイツを!」
男は、作った魔道具に何も欠陥はない、大丈夫だと何度も自身に言い聞かせる。固く握り締めた拳は歓喜に震えているようにも、不安で押し潰されているようにも見えた。
男は魔道具を起動させると、自身の持つ全てを注ぎ込み始めた。次第に意識が薄れていく中、蝋燭の灯りとは異なる桃色の光が魔道具の側に現れる。
「本当にこれでいいのかい?」
光から発された問いかけに男は、脂汗を垂らしながら乱暴に応えた。
「今更引き返すことなどできない、この方法にかけるしか手がないんだ。オレにしかこの狂わされた世界を変えることはできない!」
「分かったよ」
悲しげな声を発した光は魔道具の中に吸い込まれていった。男には、もはやどんな言葉も届かない。
男は残り全ての力を魔道具に注ぎ込み、糸が切れるように倒れた。
その直後、世界が歪んでいく。世界が廻る、廻る。
こうして、不器用に生きた男の一生が幕を閉じた。