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それから滅多なことでは襲われなくなった。あとで聞いた話によると、お兄さんが商売の際に私の話をしているらしく、仕込み杖で大立ち回りをして木々を切り伏せ岩を跳ね飛ばし、四人の男をまとめて串刺しにしたことになっていた。まあ安全に代わるなら、そういうことにしておいていいのかも知れない。
獣の皮に取った油はそれなりによく売れた。お兄さんは勝手に私の舎弟を名乗っているが、それも良かろう。荷をまとめた熊皮は明らかにお兄さんが仕留めたもので、安易な気持ちでこの男に挑みかかるものはいないだろう。このままこのお兄に一儲けさせてやるのも自分のためになるかも知れない。
油の行商に出ているとそれなりにこの島のことがうかがい知れる。ヤクザじみた人間が徒党を組んで、それに対抗するためにある程度の秩序が生まれだしたらしい。本国の連中がまともに手を入れず、掃きだめにしてしまったこの島にもこの島なりの社会があるのだった。
島の広さは、地形は、気候は……罪人としてやって来たこの島にも、クリスティーナはだんだん興味が出てきた。せめてこの島を良くすることで自分の役割を果たせたら……そういった希望を含んだ、興味が。