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驚いた。獲ってこいとは言ったが、できて猪くらいなものだと思っていた。四半時も待ってすっかり日も暮れ、さすがに心配になっていたところに戻ってきた男は熊を背負っていた。なかなか出会わない中ようやく見つけた獲物に盲目に殴りかかったらしい。それでも一撃目の岩の振りおろしがそれなりの致命傷になっていたようで、死に物狂いでなんとか確保したようだった。アホが過ぎるとは言え、さすがに感心した。
「あなた、やるじゃない。でもこれを毎回は無理でしょう。継続できてこそ、仕事なんだから。とりあえず、これ召し上がりなさいな」
焼いていたどんぐりのパンを押しつける。
「なんだあ、これ、パンか? どっから持って来たんだ?」
「焼いたに決まってるでしょう。言っておきますけれど、私、パン屋じゃないから味の保証はできませんよ」
聞き終わらぬ間に男はパンを貪りはじめる。それを見て、私は小刀を取りだし、熊の首元や腹を割いてみる。上出来だ。白い脂肪がそれなりに蓄えられている。
「お兄さま、さすがですわ。ご覧になって。ほら油が」
「おう、おお、すげえなあ」
「まあ、これは私が明日採取しておきましょう。お兄さまはお疲れでしょう? お休みになって」
言われて男は立ち上がりかけ、「でも……」と口淀んだ。
「俺、言われても良くわかんねえんだ。これで儲かるんだよなあ?」
騙されているような気になっているのだろうか。確かに騙すことはできるだろう。しかし、私にもメリットは充分ある。
「お兄さん。油は私なら採れますし、他にもアイデアはありますわ。獣はお兄さんが獲れますし、お兄さんなら財産を守ることもできますわ。ある程度量を採って、人の集まるところへ売りに行きましょう?」
「おお、おお!」
男はようやく納得した様子であった。