3
その娘がどこから現れたのか知りようはなかった。ただ王家の体面として行った慈善によって困窮する孤児院からある程度の年齢に達した子ども数名を召し抱えたことだけ伝え聞き、おそらくそのうちのひとりだったに違いない。
自分よりよほど美しいその金髪を見たとき、クリスティーナはやや縮れた自分の毛の端をつまんでため息したくらいで、特段その人物に興味を向けることはなかった。まさかその人が自分を追い落とすなど……。
やがて気の利く人物としてその娘が王宮の上役にまで知られるようになったころ、ようやくクリスティーナはあの美しい金髪の娘が話題のその人だと、名前も含めて知るようになった。
齢十五を迎えてたびたび王宮に上がるようになってから同い年の王宮小間使いとして顔を合わせるようになったサリアは髪だけでなく顔立ちも大変整って、それだけならクリスティーナも負けるものではなかったが、彼女には人の良さが、あふれた優しさがその表情に満ちていて、クリスティーナは彼我の生育環境の差を思い知った。片やなに不自由なく育ったはずの貴族の娘で相手はといえば親さえ知れぬ貧民のはずだった。けれども血のつながりのないところに育まれる愛情というものが確かにあるのだと、クリスティーナは自分の前にかしずいて茶菓子を用意するサリアの横顔を眺めながら思ったのだった。
そうして足繁く王宮に通い、時に王子と執政策について語り、時に王宮図書室で知識を身につけ、時折こころをときめかせながら王子とのささやかな休憩時間を持つ、そういう生活を数年送った。その間サリアが王子の周りをうろうろしても、小間使いが世話を焼くのは当然でしょうと元来王子以外の人間に興味がないこともあってなんの疑いも挟まずそれを許していた。