梨花とキャンプおじさん2
キャンプおじさんと出会ってから梨花はお昼会の日、早めに家を出ては出会った場所をうろつく生活をしていた。しかし、キャンプおじさんに出会う事はなく、少し寂しい気持ちを抱いていたそんなある日、今日で最後にしようと行ったあの場所に厳しい顔で小説を読むずっと探していたおじさんを見つけた。
「あの! ……覚えてますか? この前焼きマシュマロ貰ったんですけど。」
声を掛けるとおじさんはチラッと顔を見て、すぐに小説に目線を戻し良く通る低音で呟く。
「……覚えてるよ。……久しぶりだね。」
「はい、……お久しぶりです。」
淡白なそのリアクションに自分だけ盛り上がっているようで恥ずかしいやら悲しいやら色々な感情が梨花の心を締め付けているとおじさんが横に置いてあった大きなカバンから何かを取り出し組み立て始めた。
「……子供を、……立たせるのは、……良くないから。」
「ありがとうございます!」
そう言って折りたたみの小さな椅子を出した。それを見て嬉しくて今までの心のモヤモヤが嘘みたい消えて、梨花は満面の笑みで腰をかけた。それは小さくて真新しい子供用の可愛らしい椅子だった。
(もしかして、これ私が来るかもしれないから買ったの? 普通のおじさんにされたらちょっと気持ち悪いけど、このおじさんだと嬉しいかも。それにこんな顔でこの椅子を買ってるのは反則! なんかズレてて面白いんだよなこの人。)
椅子に座るとおじさんがバーナーで水を沸かせている事が分かった。
「お湯で何か飲むんですか?」
「……アニメ見て。……外でカップヌー〇ル食べたくて。」
鋭い殺し屋の様な眼光でフツフツ沸き始めたお湯を見つめながら語るおじさん。
(もうダメ!! このおじさん可愛いすぎる!! 見ていて全然飽きる気がしない!! そしてこの人アニメでしかキャンプ情報仕入れてないの??)
お湯が沸いたことを確認すると、先ほど椅子を取り出したカバンからミニサイズのカップヌー〇ルなどが5種類入っている子供のおやつ用タイプを出した。
(あれって子供用だよね。もしかして、来るかわからない私の為に買ってくれてたの?)
おじさんは鋭い目付きで顔でカレー味のミニカップ〇ードルを手に取ると蓋を開けながら少し俯いて話す。
「……お昼は、……少なめなんだ。」
(くそっ、この人いちいち面白いな! ていうかなんだ、私用ではなかったんだ。……でも少な過ぎない!? おじさん結構大きいけど大丈夫なのかな?)
「……君も、……食べるかい?」
「いえ、私は食べてきたので大丈夫です。」
「……じゃあ、……マシュマロ……焼いてみるかい?」
「え!? いいんですか! 焼いてみたいです!!」
おじさんがカップ〇ードルにお湯を注ぎ、鍋を下げると火はそのままにマシュマロを鉄串に刺して梨花に渡した。
「……結構、……難しいよ。」
「そうなんですか?おじさんは上手に出来てましたよね。」
「……あの後、……1回も成功してないよ」
「意外と不器用だったの!?」
梨花はマシュマロを焦がさないようにじっくり焼いていく。おじさんはそれを鋭い眼光でたまに確認しながら小説を読む。そして小説パタンと閉じると重々しく口を開いた。
「……知らない人に……気を許さない方がいい。……危ないから。」
「おじさんは大丈夫ですよ。」
「……変わった子だ。……君は」
「私の友達の方が変わってますよ!すぐにヤバそうなおじさんと友達になるんですから!実は――」
その後、梨花の凛ちゃんの話をおじさんは黙って聞いていた。そのせいでおじさんはカップ〇ードルを食べ損ね、伸びた麺を険しい顔で食べ始めた。
梨花はそんなおじさんを微笑ましく思いながら、少しだけ焦げたマシュマロをちびちびと齧って久しぶりの2人の時間はゆっくり流れていった。
読んで頂いてありがとうございます!
もしご感想があれば是非聞かせて下さい!