敬語おじさんと新幼女
「凛ちゃん、帰ろうよ!」
「おう! ちょっと待ってて梨花!」
帰りのHRを終え、この日の教室もいつも通り何事もなく終わるはずだった。しかしそれは1人の幼女の来訪により一変する。
「あの、凛ちゃん!!」
「うお!? びっくりした!!委員長どうしたんだ?」
話し掛けて来たのは同じクラスの学級委員長で木枯 千里という名の生徒だ。長い黒髪を緩くお下げにした真面目そうな見た目の儚げな女の子だった。
「あの……実は私ね、凛ちゃんの夏休みの自由研究読んだんだ。とっても素敵だったよ」
「そうなのか!ありがとう!!」
「委員長、アレ読んだの?中々やるわね。」
凛ちゃんの自由研究は学校内で展示されていた。タイトルと異様な別冊図解に圧倒されて見る人こそ少なかったが中々に好評だった。特に教師陣からの評判が良く、その話題は父母会にまで波及しかなりの波紋を呼んでいた。
「うん、それでね。良かったら……おじさんに会わせてくれないかな? 読んだら会ってみたいなって思って……」
「見かけによらず委員長ってチャレンジャーね。凛ちゃんどうするの?」
「いいぞ!!週末のお昼に公園集合だ!!」
「いや凛ちゃん、ちゃんと考えてから返事した??」
――おや、今日は1人違う子がいるようです。凛ちゃんや梨花ちゃんの様にはいかないでしょう。少し気を引き締めないとですね。
「おっちゃん!! この子は委員長の千里ちゃんだ!!」
「あの……木枯 千里です。今日は突然すみません。凛ちゃんの自由研究をみてどうしても直接お会いしたくて。」
「私は鈴木と申します。しかし、あの自由研究をみて会いたいと思うとは中々に感性の鋭い方のようだ。」
「むしろ鈍いんじゃない?? 千里ちゃん危機察知センサー機能してないでしょ。」
しかしこの子、何か様子がおかしいですね。体調が悪いのでしょうか? それともやはり実際に会ってみると、頭の中のイメージと私が違ったのかも知れませんね。
「凛ちゃん!! 梨花さん!!」
「うお!? なんだ??」
「うるさっ千里ちゃん、音量調整バグってるよ!」
「ワタシ空想のおじさんとは毎日してたけど、生リアル非血縁おじさんと会話したのは久しぶりなの!! この緩慢で無防備な動きも最高!! まさにTheおじさんって感じ!! すごい良いおじさんだね!!」
「テンション高っ!! そして真面目な委員長が空想のおじさんと会話している闇深い電波女だった衝撃的事実!! 」
これはまた変わり種を持ってきましたね。俗にいう枯れ専というやつでしょうか。しかし、この年齢で目覚めるのは早熟が過ぎますね。危ない目に合う前に諭さなくては。
「木枯さん。あなたは――」
「千里です!!千里って呼んでください!!」
「……千里さん、あなたは――」
「きゃあああ!! 私、生リアル非血縁おじさんに名前呼ばれちゃった!? うわあああ録音しておけば良かった!!」
なるほど、理性を感じませんね。この子に言葉は通じません。あまり使いたくはありませんでしたが最終手段を使いましょう。
「……梨花ちゃん、お願い出来ますか?」
「おじさん諦めないでっ!? 私にもコイツは荷が重いわ! そしてさっきからちょくちょく出る"生リアル非血縁おじさん"ってやつ気持ち悪いからやめて!!」
「あはは!!千里って面白いな!!気に入ったぞ!!」
「凛ちゃん、この子は新種の変態だよ!? おじさんと関わったら駄目なタイプの!!」
次回に続く……
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