敬語おじさんとマラソン
応援してます。
「おっちゃん、感動ってなんだ?」
「何その質問? 凛ちゃんは魂を持った自立型ロボットなの??」
難しい質問ですね。読んで字のごとく何かによって感情が動く事を指しますが、一般的に喜びや悲しみで泣きたくなる気持ちを感動と呼んでいますね。しかし、そこをさらに深掘りすると迷宮に迷い込みますね。泣きたくなる理由は、感情とは、心とは、考える程に非常に難解で哲学的です。何かわかり易い例があればいいのですが。
「凛ちゃん、感動といえばマラソンよ!!」
「あっ先生だ!!」
「出たよ花島。感動と対局の存在が。」
マラソンですか。なるほど確かにこの時期に感動といえばマラソンが思い浮かびますね。
「マラソンさえ走らせておけば、この感動ゼロのギャグ作品にも新しい風が吹き込めるわ!! 距離と時間は長ければ長い方がいいわね!! そしてラストにあの歌を合唱すれば完璧よ!!愛はち――」
「言わせるか!ソレは弄っていいタイプじゃないだろーが!!」
「でも誰が走るんだ?うちか??」
「凛ちゃんは走ったらダメよ!! 熱中症になったらどうするの!? 苦しむ汗だくの凛ちゃんなんて先生っ…………ぐふふ、んっとは言ったけどやりたいなら先生と一緒ならいいわよ!直ぐにpr〇meで高性能ビデオカメラ買わなきゃ!うーん、ナイスですねぇ(?)!!」
「凛ちゃん、絶対走っちゃダメだよ!!こいつ正気じゃない!!」
エアカメラを構え凛ちゃんの周りを動き出す花島は完全にモラルが喪失した精神全裸状態で有名な監督を彷彿とさせた。
「しかし子供にこの炎天下を走らせるのは良くないでしょう。バナママさんから預かっている以上先生には悪いですが私も反対ですね。それに感動したい凛ちゃんが走るのは本末転倒ですよ。」
「ちっ……まあ冗談なんですけどね!という訳で凛ちゃんはマラソン禁止よ!めっ!」
「花島マジキチ」
「じゃあ、誰が走るんだ??」
「ん、おや今日は賑やかですね!」
そんな時、タイミングを見計らったかのようにピチピチのウェアを着た汗だくのおじさんが現れた。
「ジョギオだ!!」
「えっ?はい。」
「なるほど、ジョギオなら問題ないか」
「そうね、先生も残念だけど、ジョギオで我慢しましょう」
「適役ですね。ジョギオさん頼みます。」
「はあ?なんの事ですか??」
凛ちゃんに感動を教えるためにはこれしかないですね。身近な友達の頑張りはきっと感動を与えてくれます。
「じゃあ、先生がスタートコールするわ!……遅いわよ!!ジョギオは早く位置について!!」
「えっなんで私怒られてるの??」
「ジョギオ、うちを感動させてくれ!!」
「感動? ……ちょっと凛さん押さないでっ!」
「あんたの休日は現時刻をもって終了したわ。ジョギオ、凛ちゃんが感動するまで死ぬ気で走れ!! 」
「私今から走るの?? えっ何……痛っ! なんで叩くんですか師匠!!」
中身は真面目で気の弱いジョギオは無理やりスタートポジションに立たされた。
「えっと、走って感動させられたら何か貰えるんですか?正直、モチベーション保てそうにないんですが。」
「はあ?ジョギオ、それ本気で言ってるの? 感動舐めてる?」
「ジョギオさん、無償だから感動するのよ。あなたの倫理観おかしいわ。子供に悪影響だから近寄らないで。」
「ジョギオさん、それだけは言ってはいけません。マラソンは善意の象徴ですよ。がっかりです。」
「……きょう私ははっきりとわかりました。あなた達は狂ってる!! クソっやればいいんだろ!やれば!」
すると凛ちゃんがジョギオにニッコリ笑いかけた。天使の微笑みは彼のやさぐれた心を癒すようだった。
「凛さ――」
「よし、ジョギオ準備はいいな!! 位置について……よーい、ドン!!」
「クソがあ!!!」
ジョギオはこの日約30キロを走りきった。凛ちゃんは汗だくのジョギオを曖昧な笑顔で迎えた。特に感動はなかった。
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まあ色々言いましたが何より続きを見てくれれば嬉しいです!次回もお楽しみに!!