敬語おじさんとお見舞い2
お見舞いってなんか緊張します。
梨花の父の賢也は久しぶりの休日を部屋でゴロゴロしながら満喫していた。するとドンドンとすごいスピードで階段上がる音が響き、思わず首を上げてドアを見ていると妻の綾が飛び込んできた。
「あなた!!ひ人質が凛ちゃんをお見舞いにしてむ娘を変なおじさんしに来たわ!!」
「ごめん、全然意味がわからない。」
初めて見る慌てた妻の姿に困惑しながら背中をさする。
「ふぅー。…変なおじさんが凛ちゃんを人質にして娘のお見舞いしに来たわ!」
「ごめん、聞き取れたけどやっぱり意味がわからない。」
「あなた!早くしないと凛ちゃんが危ないの!!」
「凛ちゃんってあれだろ?お前がこの前怒って泣かしちゃった梨花の友達の子。」
なんでも部屋の中で追いかけっこを始めてグラスを割ってしまいそれで妻が怒ったらしい。確かに妻は怒ると怖い。俺や梨花は慣れているが知らない子は泣いてしまってもおかしくない。
「泣かせてないわよ!!って今はそれどころじゃないの!あなたとにかく来て!!」
「わかったって!そのおじさんをやっつければいいんだろ?」
「そう!凛ちゃんを助けてあげて!おじさんに洗脳されてるみたい!」
「洗脳?それはまた凄いのが来たな。まあでも選んだ家が悪かったな」
梨花の父はspボディーガードの仕事をしている。そのため剣道、柔道、射撃など警察官の中でも指折りの猛者だ。丸腰の素人にタイマンで戦って負ける要素はひと欠けらも無い。
賢也が玄関に向かうと50代くらい男性と女の子が話していた。
「おっちゃんどうすんだよ!」
「困りましたね。おひとりではお見舞い出来ないんですよね?」
「無理だ!梨花のママ怖いんだぞ!」
「どうしましょうか。…おや誰か来ましたね」
さっきの話を聞く限り、特に問題を感じない。敵意や不審な挙動もなく至って普通の男性に見える。この女の子が凛ちゃんだろう
私が怖いのか男性の後ろに隠れている。
「私は梨花の父の三井賢也と言います。どちら様でしょうか?」
「はい、私は鈴木といいます。宜しければこちらを確認下さい。」
「名刺?どうも…それで鈴木さん何をしに来られたんですか?」
「はい、凛ちゃんが梨花さんのお見舞いをしたいと。でもどうやら梨花さんのお母様が怖いようでついてきて欲しいと頼まれたのです。」
「なるほど、それで貴方は娘達とどういう関係ですか?」
私は短期な性格で回りくどいやり取りが苦手だ。単刀直入に聞いて少しでも怪しいなら取り押さえればいいと考えた。
「それは…」
「おっちゃんはうちと梨花の友達だ!!」
友達?おじさんが?様子から脅されてもいない。つまり…
「洗脳か、あながち間違いではないか!貴様この子に何をした!!」
賢也の体が素早く凛ちゃんとおじさんの間に入り取り抑えようとしたが家からの大きな物音に思わず振り返った。
――その少し前、梨花はなかなか戻ってこない母を気にしながら、部屋で1人暇を持て余していた。するとにわかに外が騒がしい。何となく窓から玄関を見て梨花は声を上げる。
「凛ちゃんだ!!来てくれたんだ!あんなにママが怖いって来なかったのに私のために!」
そんな梨花目線をずらすと見たくない人物が凛ちゃんの隣で立っていた。
「なんでおじさんがいるわけ!?しかもお父さんと話してる!おじさん殺されちゃうじゃないの?それに…!」
そして次の瞬間、父がおじさんと凛ちゃんの間に体を入れ取り押さえる動作を見せた。
梨花にとっても不思議だったが、咄嗟に窓を開いて何か言わなければおじさんが殺されてしまうと思い、大声で思っている事を叫んだ。
「おじさぁぁん!いい年して手ぶらでお見舞い来てんじゃねぇぇぇ!!」
この日、ご近所全員にいい年したおじさんが手ぶらでお見舞いに来た事が知れ渡った。
次回に続く…
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