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第十五話(四)
車に乗り込んで窓を開ける。皆が各々手を振っている。僕も少し窓から身を乗り出して手を振った。
「また来るから!」
ゆっくりと車が走り始める。さっきまで近くにいた皆が段々遠くなっていく。
夏の終わりを告げる風を感じながら、皆が見えなくなるまで、僕はずっとずっと手を振り続けた。
そっと視線を外して前を向く。徐に父さんが話しかけてきた。
「ばあちゃんの家はどうだった?」
「楽しかったよ、とても」
流れ行く景色を見つめながら僕は答えた。
目を閉じれば、先程まで一緒にいた皆の姿が瞼に浮かんだ。
*
夏休みに訪れた祖母の家には、奇怪なモノ――所謂妖怪がいた。
彼らの存在を受け入れつつ、彼らの言動に突っ込みつつ、振り回されてばかりの毎日。
それは僕にとって大変な日々で。でも、それと同時にとても楽しい日々でもあった。
今度あの家を訪れた時、僕はまた彼らが視えなくなっているかもしれない。声を聞くこともできなくなっているかもしれない。
でも、たとえそうなってしまったとしても、僕はまた訪れたい。
寂しい思い出や悲しい思い出だけではなく、楽しい思い出もたくさん詰まったあの場所へ――。




