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Butterfly  作者: 姫
9/45

撮影前の準備

集合は午後の1時。

10時半に起きれば余裕だが今日は違う。

気合を入れて9時に起床。

「まだ寝てるのか、よし」

ドアを開けると、気持ちよさそうに寝ていたので布団を引っぺがした。

「起きろ~!」

「な、なんだよ…」

「早く顔洗ってきな。準備があるんだから」

時計を見るとまだ9時だ。

「まだ9時じゃん…1時からだろ、10分もあれば支度できるよ」

こいつは…昨日言ったことを自覚してないのか。

「今日から読モなんだよ!10分で支度なんてあり得ない!」

「だって行けば服は着替えるんだし、髪とかだって勝手にやってくれるだろ」

「そういう問題じゃないの!日ごろからオシャレを意識しないといけないし、ちゃんとしていくことで奈緒美さんとかにやる気をアピールしないと。ほら、早く」

「わかったよ」と裕哉は渋々立ち上がり、洗面所に向かっていった。

よし、なにを着させようかな。

舞香と今の裕哉の身長はほとんど一緒だった。

体系もさほど変わらないので、舞香の服はすべて裕哉も着ることができる。

顔を洗った裕哉が戻ってきた。

「で、なにを着ればいいんだ?」

なんでこんな上から目線なんだ。

最初はパンツ系にしてあげようと思ったけどやめた!

思いっきりかわいいやつ着させてやる。

あ、ちょうどいいのがあった!

「これ着て」

渡したのは、薄いピンクに花柄のワンピースだ。

フレアになっていて、切り替え用のベルトも付いているので

着れば女の子らしいシルエットになる。

「いやいやいや…もっと普通のあるだろ!」

「ダメ」

舞香が譲らないのを悟ったのか、あきらめ顔でワンピースを手に取る。

もう舞香の前で下着姿になるのは慣れていたので、

その場でジャージを脱いで下着姿になった。

それにしても下着もダサいよね…持ってるの全部無地だし。

ホントただ付けてるだけって感じ。

そもそもルームウェアとして着ているジャージもダサい。

まるで走っているおばさんが着ているようなジャージだ。

こういうところも変えていかないとダメだな。

そんなことを考えていたら、いつの間にか裕哉が着替え終わっていた。

「これ丈短いじゃないか、勘弁してくれよ」

膝より少し上の丈が嫌みたいだが、こういうのも当たり前になってもらわないと困る。

それにしても…やっぱりこういう服を着ただけで様になってるね。

一気に女の子っぽくなった。

「で、その次は?」

そういいながら裕哉はあぐらをかいて座りだした。

あー、ムカつく、この態度!

でも怒ったらダメ、怒ったらダメ…やっぱり無理!

昨日は決心させるために優しく諭してうまくいったけど、

もう決心したんだからいいよね。

「アンタ、なんでさっきからそうやって偉そうなの」

「なんだよ、俺は姉貴が言う通りにしてるだろ」

「やるって決めたのは自分でしょ!もっと自分から頑張ろうって態度見せなさいよ!それになに、その態度。あぐらなんてかかないで。あと金輪際俺って言わない、姉貴って呼ばない。裕香は女だし読モなんだから」

「はあ?急にそんなの無理に決まってるだろ」

「そんな男みたいな言い方しない!自分から意識して変えていこうと考えないの?アンタバカじゃない?」

「う、うるせ……うる…さいな」

今まで通りしゃべろうと思ったが、昨日裕香として生きると決めたので、

少しだけ言い方を変えてみた。


お、口調が少し変わった。

意識したみたいだね。

よしよし、もっと言わせてやろう。

「ねえ、自分の名前は?」

「君川…裕香…」

「わたしって裕香のなに?」

「姉…お、お姉ちゃん…」

「裕香はわたしのなに?」

「妹…」

ヤバい、面白い!

恥ずかしがってる。

「裕香、次はメイクなんだけど自分でできる?」

「で、できない…」

「そうだよねー、じゃあ誰が裕香にメイクしてあげるのかな?」

「お姉…ちゃん」

「やってもらうんだったら、普通お願いとかするよね」

お願いするかなぁ、それとも怒るかなぁ。

「お姉ちゃん…メイク…して。もういいだろ!」

ちゃんとお願いするんだ、なんか裕香がかわいく見える。

よし、からかうのはこれくらいにしておこう。

「いいよ、じゃあソファーに座って」

舞香は、ただメイクをするのではなく、一つひとつやり方や使い方なども説明しながら

裕哉にメイクをしてあげた。

だって一人でできるようになってもらわないと困るからね。

「あと裕香、股開いてる。女の子は服装に関係なくそんな風に股は開かないし、特にスカートやワンピのときは意識しないとダメだよ」

「わ、わかったよ…」

「髪は寝ぐせ直しで整える程度にしておくから。ホントは巻いたりしたいんだけどヘアメイクさんがストレートの状態が一番やりやすいからさ。だから撮影じゃない日にやり方とか教えるね」

「そこまで必要…?」

「なんか言った?」

「う、ううん!お願いします…」

ずいぶん素直になったな。

実際にこうやってオシャレしていくと余計に意識しちゃうのかな。

ま、いいか。

「あとはアクセサリーなんだけど…裕香、ピアスなんて開けてないもんね。あ、あれ使おう」

出してきたのはノンホールピアスだった。

「これ耳たぶに付けて。ピアスみたいに見えるの」

お、いいじゃん。

そして仕上げにネックレスをして…

「はい、完成!鏡見てみな」

裕哉は全身が映る鏡の前に立って驚いていた。

いい反応だ。

正直、わたしも嬉しい。

だってわたしの妹だもん、オシャレでかわいくないとね。

「あとでその上にカーデ羽織るからね」

って、聞こえてないか。

まあそうだよね、一気にイマドキの女の子になったんだもん。


正直、前の撮影ほどメイクや髪などをやっていないので

そこまで変わると思っていなかったが、現実は違った。

あれだけでこんなに変わるものなのか。

まるで大学で見かけるオシャレな女の子だ。

その女の子が俺…

いまだに信じられないと思っていたら、自分の支度をしていた舞香が呼んできた。

「そういえば裕香ってLaLaをちゃんと読んだ?」

「い、いや…読んでない…」

そう、見たのは自分が映っているページだけだ。

「ちょっと、裕香はそのLaLaの読モなんだよ。自分が出る雑誌がどんなのかちゃんと読まないとダメだよ。わたしが終わるまで読んでて」

舞香が言うことはもっともだ。

まあ、どうせ服のことしか書いてないんだろうけど。

そう思いながらページを捲っていくと思っていたのと全然違っていた。

もちろんファッション雑誌なので、服のことがメインだが、

それ以外に美容のことや恋愛のことなども書かれている。

また、舞香は裕哉と撮ったものだけでなく、何回もいろんな衣装で登場していた。

ファッション雑誌ってこういうものなんだ…。

「よし、わたしも終わった。まだ少し早いからスタジオの近くにあるカフェでランチして行こう」

カフェでランチ…まるで女子だな。

って、俺も女子だからいいのか。

カーディガンを羽織り、渡されたショルダーバッグを肩にかけて玄関に行く。

何も考えずにいつものスニーカーを履いたら怒られた。

「ちょっと、そんなの履くはずないでしょ!こっち」

出されたのはヒールのあるパンプスだった。

そうか、こういう服にはこういうのを履かないといけないのか。

なんか撮影のときよりも大変な気がするぞ…

本当に読者モデルをやるなんて言ってよかったのだろうか…

選択を間違えた気がする…

裕哉は不慣れなパンプスを履いて、舞香と一緒に家を出た。


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