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Butterfly  作者: 姫
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知らないところで話は進む

「なんでここにも雑誌があるんだよ…」

テーブルの上にはLaLaの最新号が置かれていた。

絶対に見ない、そう思っていたのに気になって仕方がない。

「ちょっとだけ…見てみるか」

恐る恐るページを捲っていく。

すると比較的前のほうに、裕哉が載っているページがあった。

この春一押しの着こなし方という見出しがあり、

右に舞香、真ん中に沙織、そして左に裕哉が載っている。

まさに撮影した時と同じポジション。

写真の裕哉は笑顔でとても楽しそうだ。

普通にオシャレが好きな女の子にしか見えない。

何度見ても自分とは思えないくらいだった。

雑誌には着ている服のブランド名や値段なども書いてあるが、

そんなものはどうでもよかった。

見ているのはまるで別人の自分自身だ。

リップが塗ってあって、アイメイクもしている。

髪はゆるく巻いていて、黒髪なのに重たさを感じさせずとても似合っている。

着ている服も、この顔にピッタリだ。

そして次に舞香と見比べる。

本当によく似ている。

苗字も同じなので、誰がどう見ても一発で姉妹とわかるだろう。

「こんなの俺じゃない…」

そうつぶやいた直後に、本当にそうなのか?という言葉が自分自身に返ってきた。

これは紛れもなく裕哉本人だ。

俺が普段からこんな風に…いや、やっぱり違う!

「今の俺が本当の俺だ!」

そう無理矢理言い聞かせるのが精いっぱいだった。

それくらい、裕哉にとってこの写真は衝撃的なもので

自分自身がなんだかわからなくなるものだった。


舞香が大学に着くと、萌衣と聖菜がLaLaの最新号を持って駆け寄ってくる。

言いたいことは想像がついた。

「舞香、この君川裕香ってまさかこないだの妹??」

前に萌衣たちに会ったのは裕哉だった。

でも2人の記憶は裕哉ではなく、裕香になっている。

まあ、そうだろうな。と容易に想像がついた。

この世界に君川裕哉という人間は存在しない。

存在しているのは、君川裕香という女の子だ。

「そうだよ、見違えた?」

「見違えたどころじゃないよ!やっぱ舞香の妹だよねぇ」

こういう風に言われるのは嬉しい。

でも現実の裕香は2人が見たままだ。

そろそろ次の手を打たないとな。

舞香の頭の中はそのことでいっぱいだった。


翌日、大学へ行く裕哉は、今まで同じような格好で家を出た。

やはりこれが俺だ。

もちろん、矢沢たちがなんでオシャレしないの?と聞いてくる。

これを適当にあしらう。

こんな日々が続いていくうちに、LaLaに載ったことがウソだったように

平穏な日々に戻っていった。

ところが、裕哉の知らないところでは、話が大きく動き始めていた。

舞香が自分のSMSをチェックしていると、

裕香に対してのコメントが多く寄せられるようになっていた。

読者モデルをやっている子のほとんどはインスタなどのSNSをやっている。

日常の服装や、メイクなどの情報を読者の子たちが知りたがっているからだ。

おかげで、そこそこの反響はあるのだが、

裕哉が載ってからは「妹?」という書き込みが一気に跳ね上がった。

そのコメントのほとんどに「似ていてかわいい」と書かれていた。

コメントを裕香に見せたらどんな反応をするかな。

これを足掛かりにオシャレさせてみようかな。

そんなことを考えていたら、奈緒美に呼び出された。

出版社の会議室で待っていると、そこに奈緒美と担当者の紺野里依がやってきた。

「どうしたんですか、突然。明日の撮影のことですか?」

奈緒美がジッと見ているので、少し緊張が走る。

「その撮影なんだけどね、裕香も連れてきてほしいの」

「裕香を?」

「ハッキリ言うね。たった1ページだったのに裕香に対しての反響が多かったの。やっぱり舞香の妹っていうのが大きいみたいで、姉妹モデルとして打ち出していこうと考えてる」

「それってつまり…裕香も読者モデルってことですか?」

「そう、LaLa専属のね」

これって願ってもない事態だ。

裕香も読者モデルになれば、日常からオシャレをせざるを得なくなる。

ただ、問題は本人がそれを承諾するかどうか。

答えは間違いなくNOだよね。

どうやって説得してみるかな…

「舞香、どう?やってくれそうかな??」

奈緒美も不安みたいだった。

それもそうだろう、奈緒美自身も裕哉がオシャレに興味がない人間としっているからだ。

「とりあえず、説得してみます」

舞香はそう力強く宣言した。


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