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Butterfly  作者: 姫
34/45

相変わらずな2人

更新が止まってしまい、すみませんでした。


翌日、裕香と舞香はカフェでインタビューに答えている。

聞き手は秋葉という女性で、奈緒美も立ち会っている。

これもほとんど以前と同じシチュエーションだ。

「裕香ちゃん、いろいろ聞くけど嫌なことまで聞いちゃったらゴメンね」

どうもトランスジェンダーだとみんな質問に気を使うらしい。

確かに言い方によっては傷つく人もいるだろう。

しかし裕香はまったく気にしないので「大丈夫ですよ」と返事をした。

秋葉がボイスレコーダーをセットしてから早速質問に入る。

「えーと、まず裕香ちゃんの年齢は?

「19歳です。2月で20歳になります」

「それにしては大人っぽいよね」

大人っぽいと言われたことなどなかったので少しビックリ。

服装のせいかな?

今日の裕香は黒のワンピースの上にデニムジャケットを羽織っている。

それと背が高いのもあるのかもしれない。

裕香の身長は170cm、元男だったから女性になれば高い部類に入る。

すると横から舞香が言ってきた。

「中身は全然子供ですよ」

ムッとした裕香が思わず言い返す。

「は?何言ってるの。お姉ちゃんだって似たようなもんじゃん」

「どこが?裕香なんて19歳なのにお姉ちゃーんって甘えてくるくせに」

「裕香ぁって甘やかすのは誰?」

「そっちが甘えてくるからでしょ」

「お姉ちゃんが甘やかしてくるからじゃん」

2人の言い合いが始まり、秋葉は少しうろたえる。

「ちょっと落ち着いて」

秋葉の声を無視して言い合っていたら奈緒美の雷が落ちた。

「いい加減にしなさい!」

2人はビクッとなって黙り込む。

そこで裕香は思い出した。

前も同じように奈緒美さんに怒られた…まったく成長してないじゃん、わたしたち…

「まったく。ちゃんとインタビューに答えなさい」

「はい、ごめんなさい」

2人がシュンとなったところでインタビューは再開。

「じゃあ気を取り直して…裕香ちゃんはトランスジェンダー、つまり元々男性だったんだよね?」

「そうです、1年ちょっと前までは普通に男性でした」

「1年ちょっとでここまで変われるのってすごくない?見た目から話し方、仕草も女の子にしか見えないよ」

「今はもう女ですから。手術もしたし戸籍も変えてます」

「みたいだね。その辺は資料で確認している。ただ短期間すぎたのがビックリして」

そうかもしれない。

普通はカミングアウトして徐々に変化していくものだろう。

ただ、裕香の場合はもう裕香という女性の人格があるところからのスタートだ。

しかも1年以上本当の女性として生活しているので、

身体をいじること以外はもう出来上がっていた。

それに加えて元々舞香に似ている顔立ち、

そして女性ホルモンが裕香の身体にすぐ馴染んで反応してくれたおかげもある。

これらが組み合わされば短期間でも女性になることは可能だ。

「ちなみに裕香ちゃんはいつから女になりたかったの?」

「小さい頃からです。小さい頃からお姉ちゃん…姉に憧れてて、ずっと姉のようになりたいと思っていました。でも大きくなるとそんなこと言えなくて…」

「なるほど。でも今は女の子になったよね?どうして?」

「ずっと我慢していたんですけど、モデルをやっている姉を見て今まで以上に憧れが強くなりました。わたしも姉みたいになってモデルをやりたいって。そこで決心しました。それが1年ちょっと前です」

「うんうん」

ここで話を舞香に振る。

「舞香ちゃんは裕香ちゃんが女になるって言って驚いた?」

「驚いたも何も…裕香とは1年以上会ってなくて連絡も取ってなかったんです。今の裕香に会ったのは撮影のときが初めてだったから驚いたというよりパニックでしたよ」

「じゃあ女になりたかったのも知らなかった?」

「はい。でもこんなわたしに憧れてくれてたって言ってくれたときは嬉しくて泣きそうになりました。わたしなんてたいした女じゃないのに。実は私たち再会するまで仲が悪かったんです。小さい頃はすごく仲良しだったんですけど、思春期になると妹…当時は弟ですね、弟と仲良しなんて恥ずかしかったのであまり会話もしなかったんです。それが何年もずっと続いて…でも今の裕香と再会して、裕香の気持ちを知ってから、そういうわだかまりみたいのが一気になくなって、今では普通に仲がいいんですよ」

そういうふうに言ってくれる舞香の言葉が今の裕香にはとても嬉しい。

「弟から妹に変わったことにたいしてはどう?」

「弟だろうと妹だろうと変わりません。それが裕香の本当の姿なら、わたしは姉として裕香を大事にします」

「なるほど」とつぶやいてから再び裕香に質問をする。

「裕香ちゃんは女になって、憧れの読モにもなれて、今の心境は?」

「最初は夢じゃないかと思いました。でも最初の撮影で姉と一緒になったとき、ああ夢じゃないんだって実感して」

このあといくつか質問をして最後にと言ってきた。

「まず舞香ちゃん。妹が同じモデルになったけど、どう?」

「弟が妹になって現れたときは信じられなかったけど、撮影をしていてこの子はちゃんとできるって思いました。それはこの号に載っているのを見れば読者の皆さんにも伝わると思います。だから、これからは姉妹でみんなの見本になれるように頑張っていきたいです」

「じゃあ裕香ちゃん。これからの目標を」

「はい。わたしは元男ですけど、今は女になって憧れていた姉と同じモデルになれて…でもここがやっとスタートラインだと思っています。これからは読者のみんなに認められて…新人のくせにおこがましいかもしれないけど、みんなが憧れてくれるようなモデルになりたいです」

こうしてインタビューは終了した。

舞香と裕香がいなくなってから、奈緒美が秋葉に聞く。

「裕香、どう思った?」

「こういう子って今までいなかったから面白い存在になるんじゃないかと思った。それにあのルックスにスタイル、読者も結構受け入れてくれるんじゃない」

「わたしもそう思ってる。でも読者がすんなりと受け入れるかはわからない。だから3か月のプランで裕香は女だよっていうのを打ち出していこうと思ってるんだ」

「へー、ずいぶん特別扱いするんだ?」

「そうかも。なんかあの子を見てると応援したくなるんだよね」

それが裕香の魅力なのかもしれない。

それが読者にも伝われば、きっと裕香は人気モデルになれる。

奈緒美はそんなことをぼんやりと考えていた。


「お姉ちゃん」

「なに?」

「さっきの本心?」

「違うよ。インタビュー用の答え」

「なにそれ、ひどくない?じゃあお姉ちゃんの本心は?」

「内緒」

「ずるい!わたし本心をちゃんと答えたのに」

「そんなの裕香がいけないんじゃん。わたしには関係ないもん」

「ムカつく。お姉ちゃんのバカ!」

裕香が怒ると舞香は笑っていた。

「なんで怒ってるのに笑うの」

「相変わらず子供っぽいから」

「あーホントにムカつく!」

「だから子供っぽくて可愛い妹なんだよ」

「調子がいいこと言って」

「なんで?可愛い妹って褒めたんだよ」

「子供っぽいが余計!だいたいお姉ちゃんだって…」

くだらない言い合いをしていてもお互い本気では怒っていない。

2人は完全な仲良し姉妹だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さんが生きてて良かったです!(更新が長いこと止まってたから) これからの展開期待してます!
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