表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Butterfly  作者: 姫
31/45

取り戻していく裕香の日々

春休み、裕哉はついに手術を受けた。

麻酔が切れて目が覚める。

全身がぼんやりした気分だ。

いろんな点滴をしていて股間には痛みがずっとある。

それと同時に喪失感もあった。

わたし…女になったんだ、本当の裕香になったんだ。

嬉しさで涙がこみ上げてきた。

そこからはリハビリの日々だった。

思った以上に辛くて大変だったが、辛いことだけでもなかった。

尿をするときの感覚が裕香だった頃と同じ感覚だったからだ。

これだけでもう女というのを再確認できる喜びがあった。

やっとシャワーを浴びれる日がきたときも感動だった。

流れるシャワーがまっ平らな股間を流れる感覚、これも優香の頃と同じ感覚だ。

とにかく裕哉は無事に女の身体になることができた。


無事退院すると、ここからやるべきことを一つずつやっていく。

まずはニューハーフクラブだ。

「短い間でしたけどお世話になりました」

「もったいないなぁ。裕香ちゃんならもっと稼げるのに。それとも手術終わったからヘルスで働くの?」

「違います!わたしには目標があるんです」

「うん、知ってるよ。だからそっちで活躍するの楽しみにしてる。けどたまには遊びに来なさいよ」

「はーい」

ママに挨拶をしてお店を後にした。

次は役所だ。

手術をした裕哉は戸籍を変えることができる。

診断書と手術証明書を提出し、無事に戸籍を女に変えることができた。

そのとき名前も裕哉から裕香に変更し、これで名実ともに裕香になった。

これで裕哉とは完全にサヨナラだね。

今までありがとね、裕哉。

そしてただいま、裕香。

裕哉、いや裕香は心の中でそうつぶやいた。


今日は久しぶりに美沙と会う。

手術してからは初めてだ。

「裕香!」

「美沙」

「手術どうだった?」

「辛かったけど喜びのほうが大きかったかな」

「そかそか、もう見た目も中身もわたしと同じ女だもんね」

「うん、ホント最高の気分だよ」

今まで触れていなかったが、裕香はボイストレーニングを家でしていたので

声も女性の声になっている。

もう今の裕香が男だったと思うものはいないだろう。


春休みが終わり、大学が始まった。

手術をし、戸籍が変わり、名前も変わった。

やっとここまでたどり着いた。

これなら応募できる。

履歴書を書き、ほかに必要なことを書き加える。

身長、よく買い物するショップ、行きつけのヘアサロン、SNSのURLなど。

SNSは女性の格好をして大学に通うようになった頃から始め、

インスタグラムはフォロワーが500人いる。

特別多くもないが少なくもないといったところか。

トランスジェンダーとも言ってるし戸籍を変えたこともプロフィールには書いてあるが、

内容は前の裕香の頃にやっていたのと同じような内容だ。

ファッションがメインでたまにカフェだったり、

美沙たちと一緒に撮ったものなどをアップしている。

そして、最後に意気込みだ。


まず最初に言っておきます。

私はトランスジェンダーです。

といっても手術をして戸籍も変えているので今は完全な女性として生きています。

そんな私には、小さい頃から憧れていた姉がいます。

その姉に一歩でも近づきたい、そう思って今まで生きてきました。

こうして女性になれた今、やっと憧れの姉に並ぶことができたと思っています。

そんな姉はファッションなどのオシャレが大好きで、

私も同様に大好きで暇さえあればファッション雑誌を眺めたり

ショッピングに行ったりしています。

トランスジェンダーの私でもモデルになって、

私が姉に憧れたように読者の人が私に憧れるような、

生意気かもしれませんが、そんな存在になるのが今の夢です。

よろしくお願いします。


あとは写真だ。

美沙に撮ってもらった顔のアップ。

自然と笑みが溢れている。

改めて見ると舞香に似ているなと思った。

やっぱり姉弟…ううん、姉妹なんだな。

もう1枚は全身だ。

季節が春なのでシースルーのワンピにライダースジャケットを羽織った写真。

大人っぽい甘辛コーデにしてみた。

日ごろからダイエットをしていたので太ってはいない。

胸も今はCカップまで成長した。

特別大きいわけじゃないが、スタイルは悪くないはずだ。


これらを同封して投函した。

多分奈緒美さんならこれでわかってくれるはず、

そして面接までたどり着けるはず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ